チャレンジ

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WBCで王JAPANが優勝できた理由

2006-03-24 23:24:30 | 覚えておきたい考え
 諏訪湖から東京に戻って来ました。

 やっぱり東京は刺激的ですね。
見るもの聞くものそこらじゅうに刺激があります。普段電車に乗ることがあまりないこともあり、地下鉄も刺激的です。多くの乗客、その人たちのファッション、持ち物、会話の内容、そして電車の中吊など、いろいろな刺激があって、私は地下鉄の中できゃろきょろきょろきょろと挙動不審者のようです。

 ところで、地下鉄の中でも、TVのニュース番組でも今一番ホットなのが、WBC王JAPANの世界一ですね。
いろいろな話を聞くうちに、何かの切り口で、その理由を考えてみると面白いなと思い、私なりに考えてみました。

 切り口は「すばらしい組織の条件」です。

 野球はチームで戦うものなので、最終的には王JAPANが素晴らしい組織だったから勝てたと考えます。そして素晴らしい組織の条件は『共通の目標』『貢献意欲』『コミュニケーション』3点で、王JAPANがこれらの点について優れていたと考えるのです。

 1点目は『共通の目標』です。TVのニュース番組で王JAPANの主力打者ダイエー松中が「王JAPANできた最初のころのチームの雰囲気は、オールスターゲームのチームのようだった」と話していたそうです。オールスターゲームは、年1回行われるパリーグ、セリーグそれぞれからファン投票や監督推薦で選ばれたスター選手が集まって戦うものです。お祭的な雰囲気で、勝ち負けよりはむしろ選手自身が楽しみ、お客さんを楽しませるイベントです。

 お客さんを楽しませることが目的なので、極端なことを言えば、ホームランバッターはとにかくホームランを狙います。速球の早いピッチャーはとにかく剛速球で三振を狙いにいきます。速球投手が変化球で三振をとるようなシーンはお客さんも期待していないので、ピッチャーもそうはしません。

 選手はオールスターゲームに出場できることを満足に思い、そこで楽しむことが大切で、勝ち負けは二の次です。
王JAPANもひょっとしたら最初はこのような雰囲気だったのではないかと思います。「世界一になろう、なりたい」と思っていたのはイチローや一部のメンバーだけで、多くの選手は「WBCの日本選抜メンバーの一員となった」ことに満足し、そこに意味を見出していたのではないかと思います。それが、韓国戦に負け、審判のミスジャッジもあり、そんな課程を経ながら次第に「勝ちたい、勝たないと意味がない、勝つことが目的だ」というように選手一人一人の意識が変わっていき、「勝つ、世界一になる」ことが、チーム全体の『共通の目標』になったのだと思います。

 2点目は『貢献意欲』です。私が見たWBCの印象に残っているシーンとして、これも松中選手なのですが、確か韓国戦で、ワンアウトランナーがいない場面にライト線にヒットを打ちました。松中選手は2塁にヘッドスライディングを成功させ二塁打となったのですが、その直後にくやしそうに2塁ベースを拳で何度もたたいていました。

 この理由を松中選手のコメントとて聞いたわけではありませんが、前の回にイチローが塁にいた絶好のチャンスに登場した松中選手は凡退に終り、得点のチャンスを逃しています。このことから「なぜあの時に打てなかったのか」という悔しさがよみがえり、二塁打を売ったのに、ベースを拳で何度もたたくことにつながったのだと思います。チームの4番としての役割を果たせず、チームに対して貢献できなかったことをとても悔しく思ったのだと思います。

 一戦一戦重ねるごとに、王JAPANの選手のプレーには、例えば送りバントで失敗した選手が、その直後の選手の送りバント成功に助けられ、次の打席で見事にヒットを放つなどの活躍をした例が多く見られました。

 チームのために、自分自身の役割、責任を確実に果たすという意識。それだけでなくチームのメンバーが失敗をした時には、他の選手がその失敗を帳消しにするべく努力し、結果として、失敗した選手は次の機会に必ずチームに貢献する。そのような『貢献意欲』があったと思います。

 3点目は『コミュニケーション』です。電車の中吊りに「イチロー「自腹」ロス焼肉店決起集会」という週間文春の広告がありました。イチローがロサンゼルスで王JAPANのメンバーを焼肉屋に連れて行き、いろいろな話をしたという内容のようです。
 このような直接のコミュニケーションだけでなく、イチローは間接的にチームメンバーにはっきりとしたメッセージを送り続けていたように思います。マスコミの前であまり発言をしないイチローが、このWBCでは頻繁にマスコミに登場し、彼の発言はマスコミに大々的に取り上げられ、それはチームのメンバーにも確実に届いたであろうと思います。
 マスコミの前の発言だけでなく、グラウンドでも、少なくとも試合中だけでも、例えば韓国戦でのファールフライをとれなかった時の言動や、韓国戦で負けたときにベンチで大声をあげたシーンなど、過激なまでのメッセージを発信しつづけていたように思います。「勝ちたいという強い想い」を継続的にメンバーに発信しつづけていました。そしてチームリーダーのイチローの発言はチーム内での『コミュニケーション』につながっていったと思います。


 これら『共通の目標』『貢献意欲』『コミュニケーション』3点が揃ったことで、王JAPANが素晴らしい組織となり、世界一につながったのだと思います。

 因みに、この『共通の目標』『貢献意欲』『コミュニケーション』の3点は経営学者のハーズバーグの言う『組織成立の3要件』でした。野球チームだけでなく、いろいろな組織に適用できますね。