![]() | おじさんはなぜ時代小説が好きか (ことばのために) |
関川 夏央 | |
岩波書店 |
教えてもらうこと、気付きが多い書物。知的刺激に満ちてます。
山本周五郎にはじまり、吉川英治、、、、、7章で構成されます。
宮本武蔵についての洞察も面白いし、司馬遼太郎の坂の上の雲についての考察も興味津々。
司馬さんの小説には私小説への反発があったんだと分析します。
日露戦争は官民一体でことにあたり、大正時代は官僚と大企業が圧倒的勝者となり、昭和の戦前はそれに軍が加わった。
それが敗戦で、実力主義へ戻った。その戦後が大好きな司馬さんではなかったかと言っています。
1964年の東京オリンピック以降は、血統主義二代目優遇風潮で、あなたまかせの平和と安定だけ。
これを嫌って、安保反対など政治運動盛んなとき、あえて勇気を持って反動的とも批判されかねない日露戦争時代、明治のキラキラした輝きを描きたかったと分析します。
日本での韓国人の履歴は、日本風に変換してますが、実は「昌寧成民の高麗中戸長、成仁舗を始祖とし、桑谷派牛渓派分派の子孫で、忠清南道洪城那西部面上黄里82番地に成賀慶公と密陽朴氏の間、四男五女の二男として、禮山郡禮山巴禮小里34010番地に生まれた」と、連綿となるそうです。
驚き!!!
日本のよに00高校、00大学卒業して、00省に00課に勤務などと違う。
韓国で大切なのは延々と続く血筋、自分が26世宗孫としてそこにつらなっていること自体が誇りとなり。
父の名前はしっかりと何代も連書いてあるのに、女性の名前は母一人。
人間は血筋をつたえるメディアにすぎないという、大陸 中華文明のあり方を説明してくれます。
「個性」も「内面」も、あまり問題にならない、相当にラクな「私」を持っているとも教えてくれます。
そこで、心くつろげるのだと、、、、。
このような文化が、父と対決して家を離れることが出発点となる志賀直哉の「暗夜行路」などを生み出すことは決して無いと分析もしてくれます。
とにかく知的好奇心をくすぐられ、多くの収穫を得ることができました。
関川夏央さん万歳!!!