(引用文)
昔、ロンドン塔でライオンを飼っていた。 十四世紀ごろの記録によると、ライオンの一日の食料その他の費用が六ペンスであった。 そうして囚人一人前の費用はというと、その六分の一の一ペニーであったそうである。 今の上野動物園のライオンと、深川の細民との比較がどうなっているか知りたいものである。 (大正十年十月、渋柿)
(大正十年十月号掲載文を読んで)
初物を常食にした寅彦の食費と深川の貧民の食費を比較したい。
初物を食べ・旬の物を食べ・高級素材を食べた寅彦に違いない。
尤も、土地の物を食べるのが健康的に優れているに違いないが。
遥か地球の裏側から運ばれてきた珍味を食べる意味があるのか?
そう考えるならば、寅彦の食生活は貧しかったのに間違いない。
世界中の珍味を求めて海外旅行する日本人のなんと多いことか。
それがステータス・シンボルの如く、勘違いしている人は多い。
彼らが己の足元を疎かにしているのでなければ、結構な事です。
要は、肉欲に奔るか、心を鍛えるべく生きようとするかだろう。
(話を元に戻そう)
寅彦の年収と貧民の年収の差は比較的に求めやすいではないか。
東大教授クラスで、二~三千万円、貧民で百万円。三十倍です。
それが何か、しましたか?
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