万葉集を少し読んだところで「巻頭の歌」を考えておきたい。
雄略天皇の御製歌(おほみうた)
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この岳に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそば 告らめ 家をも名をも
この歌はいったい何を言いたいのか‥これはチョッカイともイチャモンともとれる呼びかけだろ? 現代も初めての女の子と出会ったら値踏みする男どもだろ? 女の子の持物で値踏みし・家柄で値踏みし・己との力関係を計り・女の子の気持ちを量り・組み敷く意図の元・どう出ようかと計って仕掛ける。
この歌では女の子の名前を尋ねているから雄略天皇のお気に召した女の子だった訳で、つまり求婚の意味を持つチョッカイを仕掛けたのです。結婚しようと申し出て、素直に承諾したらシメシメだけれど、時と場合によっては威したりイチャモン付けたりして己の女にしようとする。当時は通い婚だからセックスだけの夫婦も有り得る。
「センス良いね」とか、「それブランドのバッグじゃない!」とか‥持物を褒めたのは古代も現代も変らないってこと。恐いモノなしの雄略天皇だけど力で押えつける無粋はしなかった、けど己の力を抜け目なく示してみせる。「ここは私の土地なんだよ。勝手に入ったの? いやいやあなたなら構わないから、好きなだけ採っていきなさい」な風に言われたら女の子は・アナタもだけど恐縮したり恐がったりホッとしたりする。
強い強い後ろ盾ができたら弱い女の子でも安心できるでしょ? 美人のお姐さんを舐めて近づいたところが後ろから恐いお兄さんが出てくるだろ? 強い雄略天皇が後ろ盾になってくれてこの娘さんはもう恐いもの無しだ。だけどいくら強くても鬼や天狗や七尾狐じゃイヤだね。やさしさを併せ持つ雄略天皇であってこそあなたも好きってなる計算だ。
すなわち、知勇兼備の雄略天皇を万葉集の巻頭に置いたことで「権威」が備わった。