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【#山田健太】新型コロナ特措法「緊急事態宣言」に向け急加速、発令までの流れはこうだ

2020-03-29 03:41:06 | コラム
 3月28日夜、3回目の記者会見に臨んだ首相は、「最悪の事態」という言い方で、緊急事態宣言を前提とした対策をとっていることを明言した。「いまは緊急事態宣言を出す時ではない」とは言うものの、まさに宣言発令の直前にあるということだ。

★法的準備が整った戒厳令発令
 3月26日、政府は改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナウイルス特措法)に基づき、「政府対策本部」 を設置した(特措法15条)。これにより、各都道府県においても「都道府県対策本部」を直ちに設置されることになった。同本部は、専門家会議 からの報告を受け、25日に持ち回り閣議によって設置を決定したものだ。

 同26日開催の新型コロナウイルス感染症対策本部 において首相は、「専門家会議にも諮った上で、新型コロナ特措法に基づき、新型コロナウイルス感染症の蔓延の恐れが高い旨の報告が行われました」と発言している(首相官邸ウエブサイトから)。なお、これまでの対策本部と、新しく設置された法に基づく対策本部は、一本化されることになった。

 この2つ、すなわち本部の設置と蔓延の確認の意味するところは、法が定める「緊急事態宣言」発令の条件がほぼそろい、あとは政治判断の段階に入ったということである。そして発令に向けての次の具体的ステップである「基本的対処方針」についても、翌27日に法に基づく「諮問委員会」が開催され、政府原案をもとに議論がなされ、28日に直ちに策定された。これによって、法律上の手続きがすべて整うことになった。

 なお、発生当初の「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」と、その下での「新型インフルエンザ等対策有識者会議」 は、対策本部とそのもとでの専門家会議によって代替されている。

 ここまでの流れと今後の展開予想を、特措法の規定に沿ってまとめると、以下のようになる。なお、「基本的対処方針」の策定は、同特措法が制定された2009年においても同年10月1日に決定・公表されている 。また、同法の制定に至る議論の経緯と、今回の改正に伴う付帯決議は以下のリンク先から確認ができる。

・2009年法制定当時の制度検討等の経緯

・2020年改正時の附帯決議 衆議院内閣委員会(2020年3月11日)、参議院内閣委員会(2020年3月13日)

 同附帯決議では、「特に緊急の必要がありやむを得ない場合を除き、国会へその旨及び必要な事項について事前に報告すること」を明記するとともに、「国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとすること」、「報道・論評の自立を保障し、言論その他表現の自由が確保されるよう特段の配慮を行うこと」(参のみ)などを求めた。

 ただし、法制定をめぐる審議が十分であったかどうかについては疑問が残る。そもそも、もとになる法の制定時には、当時の野党である自民党が実質審議に参加せず、採決でも欠席したこともあって、審議時間はわずかに9時間というスピート審議であった。そして今回の改正時の審議も、両院ともにわずか3時間弱という超スピード審議であった。これほどの私権制限と政府への権限移譲が予定されている緊急事態法制にしては、チェック機関としての国会の役割が十分発揮されたとはいえないのではなかろうか。

 なお、特措法自体が有する法的課題については、以下の記事を参照いただきたい。

・表現の自由全般については、「情報統制が不安を増幅させる~なぜいま、緊急事態対処法がダメなのか」

・とりわけ報道の自由に関しては、「改正特措法は報道規制の道具になりうる~緊急事態対処法である新型コロナ特措法の大きな罠」

・法適用の前提条件が欠如している点については、「先手でも後手でもない「禁じ手」~なぜいま、緊急事態対処法がダメなのか」

★これまでの経緯
 すでに1月以降、新型コロナウイルスの政府対応は継続的になされているわけであるが、以下では、特措法に則った手続きが開始された段階からの動きを追ってみた。首相は「国難ともいえる状況」と、強い表現で<緊急事態>であることをアピールしてきている。

閣議で新型インフルエンザ等対策本部(政府対策本部)の設置を決定(法15条)3/25

・政府は地方自治法の例外として、政府現地対策本部(新型インフルエンザ等現地対策本部)を設置可能(法16条)

 ↓

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で大臣報告案を了承(法6条)3/26

 ↓

厚生労働大臣が総理大臣に「蔓延の恐れが高いと認められる」と報告(法14条=法附則1条の2による読み替え)3/26

 ↓

第23回新型コロナウイルス感染症対策本部での報告 3/26

 ↓

政府対策本部の設置(法15条) 3/26

 ↓

政府対策本部が設置されると、各都道府県でも同じく対策本部(都道府県対策本部)を設置(法22条)3/26~

 ↓

新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(政府行動計画) に基づき、「新型インフルエンザ等への基本的な対処の方針」(基本的対処方針)の策定を指示(法18条)3/26

 ↓

基本的対処方針等諮問委員会に諮問(法18条)3/27

・緊急を要する場合で、あらかじめ、その意見を聴くいとまがないときは、この限りでない

そのなかで緊急事態宣言の条件を検討

 ↓

政府対策本部で基本的対処方針を決定(法18条)3/28

・クラスター封じ込め

・重症者の発生最小化

・軽症者の自宅療養

・マスク等の国産化の検討 など

(原案にあった「使用制限・指示期間の<21日程度>は最終案では盛り込まれなかった」

 ↓

方針を直ちに公示して周知(法18条)

 ここまでが、執筆段階(3月28日)の状況であり、この次の段階は「宣言」の発令ということになる。逆に言えば、それまでは、法手続き上の動きは原則ないということだ。

★今後の想定
 今後想定される、宣言発令までの流れは以下のとおりである。すでに、法に基づく手続きは終わっており、政府対策本部(=官邸)の政治判断(=自由意思)で発令が可能であるが、国会における付帯決議で、諮問委員会への意見聴取、国会への事前報告、が予定されている。

 また、厳密に考えるならば、事態の発生の確認や、実施期間・対象の策定については、同宣言の根幹をなすものであって、これらは対策本部に白紙委任されているのではなく、改めて「基本的対処方針」の策定手続に則って手続きを踏むべきともいえよう。少なくとも、専門家会議の科学的・専門的な報告などの根拠をないまま、政府の政治的判断に委ねるのは、法の趣旨に反するとも考えられる。

緊急事態宣言要件に該当する事態の発生を確認(法32条)

・国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある

・全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある

 ↓

事項の確認(法32条)

・新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間

・新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域

・新型インフルエンザ等緊急事態の概要

 ↓

諮問委員会に意見聴取

・国会付帯決議に基づくもので省略可能

 ↓

国会への事前報告

・国会付帯決議に基づくもので省略可能

 ↓

緊急事態宣言の発令・公示(法32条)

・2年を越えてはならない(法32条)

 ↓

予防接種の実施(法46条)

・公務員等への予防接種の強制

都道府県の知事が具体的な協力要請を発令(法45条・47条以下)

・学校の休校の要請・指示

・使用制限の要請・指示

・土地・建物や医薬品等の収用 など

 ↓

国会への事後報告(法32条)

 巷間では、海外の厳しい都市封鎖の状況と比較して、日本では罰則等の強制力がないので徹底されるかどうか疑問、あるいはこれを機にさらに強力な緊急事態法制を整備すべき、という声が強くなっている。しかし実際は、

・法に基づいた「要請」

・従わなかった場合の「指示」

・条件を定めた「収用」

は、ほぼ強制力に近いものだ。

 これは日本社会の特性に合わせた法体系であって、少なくとも企業・組織については政府の意向に反してまで、「通常通り」の経済活動や行動を持続させることは、これまでの行動様式からして想像しえない。それがあるなら、今日の「忖度」社会は生まれない。むしろ、言うことは聞かないだろうという想定がどこから生まれるのかが疑問だ。

 一方で、若者層を代表とする「気の緩み」論については、その要因がどこにあるかを確認する必要がある。もちろん、罰則がないから外出するという理屈はありうるが、より一般的な理由は「危険を感じない」という情報の欠如を理由とするものだ。

 とするならば、これに対する方策は、行政側の情報提供の改善で十分ということになる。感染者が蔓延といいつつも、その実態は示されることがないなかで「想像せよ」といい、想像ができない若者が多いから「罰則が必要」というのは論理の飛躍があるだろう。

 この情報不足の問題は、別記事で詳述しているのでここでは繰り返さないが、緊急事態宣言で予定されている政府行動は、いずれも強制力を伴うものとほぼ同義であることを確認しておくことは大切だ。そしてもう1つ、宣言を出さなくても同様の効果を生むことが、政府の情報提供の仕方を変えることで実行可能であることも、重要なポイントである。

【#小野昌弘】英国でのコロナウイルス感染爆発と全土封鎖、NHSナイチンゲール設立の意味

2020-03-29 03:39:22 | 海外の反応
今週の月曜日3月23日に英国も全土封鎖に踏み切った。25日水曜日には議会が閉鎖、さらには27日金曜日にはボリス・ジョンソン首相らがコロナウイルスに感染したことを発表。英国中枢にもコロナウイルス感染が蔓延しはじめている懸念がある。この一方、英国政府は今週大きな2つの対策を発表した。それは対コロナ戦戦略のための抗体検査の大規模実施と野戦病院「NHSナイチンゲール」の設立である。この記事では、これらの背景につき少し解説したい。

全土封鎖

3月23日、ボリス・ジョンソン首相は最近恒例になっていた毎日の夕方の記者会見の代わりに、夜8時半に短い国民向けの演説をテレビ・ネットで放映した。要点は次の5点である。

1. 食料品など生活必需品以外の店はすべて閉鎖、

2. 市民は食料品・薬等の買い物・散歩など1日1度の運動のときだけ外出可(1)

3. 通勤が必須であるごく一部の例外を除き自宅勤務

4. 公共の場での二人以上のいかなる集会も禁止、結婚式・宗教集会などいかなるイベントも禁止

5. これらを守らない場合は警察による罰金や介入がありえる。

そして外食産業に対して通常の店舗営業を禁止し、店舗には入らない形での持ち帰り用販売のみ許可する政府通達がでる。これに伴い、多くのレストランならびにほとんどのカフェやファスト・フードは閉鎖した。スーパーマーケットや薬局など最低限の生活に必要がない店のみ残された状態になるつつある。

同日25日をもって英国議会も閉鎖され、ロンドンの多くの地下鉄の駅も閉鎖された。いまは地下鉄はこれらの駅を飛ばして運転している。つまり、主要駅に警察などによる関所をつくりさえすれば、強制力をもって人の流れを厳密に制御できる準備は整っている。こうしてロンドンにも強力な外出禁止令が出せる体制が整ったが、27日現在のところは、まだフランスなど欧州各国がとる警察権力による強硬な対応ではなく、自粛に依存した体制をとっている。

こうしてロンドン中心部はすっかり空っぽである。

野戦病院とナイチンゲール

英政府は、対コロナ戦の対策として、大都市圏における仮設病院(野戦病院)の開設を発表した。ロンドンではオリンピックに使用されたイベント会場ExCeLが「NHSナイチンゲール」という名称の巨大な野戦病院になるという(2)。

NHSナイチンゲールは4000の病床、500の人工呼吸器と、2つの遺体安置室を設置する予定であり、軍が建設にあたっている。NHS医療者が運営に協力し、ロンドンでの相当な規模での患者発生と巨大な数の死亡者に備える。

英国第二の都市、バーミンガムでは空港に遺体収容所を建設することを発表した。まずは1500体分の仮設遺体収容所を用意し、これはのちに12000体まで拡張可能で、バーミンガム空港の隣にあるイベントセンターを野戦病院として使用する予定との報道もある。

英はまるで空襲を迎え撃つ臨戦態勢に入ったかのようである。

ところで、NHSナイチンゲールという名称は極めて重要な示唆をこめていると筆者は考えている。これは決して甘い香りのするお花畑の話ではない。

日本では誤解が広がっているがフローレンス・ナイチンゲールはただの優しい看護師ではない。彼女は統計学者でもあり、クリミア戦争時の野戦病院に出向き、兵士たちがばたばたと死んでいく中で、死因のデータを取得した。そして戦死者の死因が創からの感染症であることを分かりやすいグラフにし、英政府を納得させ軍の衛生指針を改革したのが彼女の主たる業績である。こうしてナイチンゲールは王立統計協会初の女性会員になっている。

彼女の業績を思い起こせば、ロンドンに設立される野戦病院がナイチンゲールの名前を冠することは無意味ではなかろう。おそらくここにおいて行われる医学調査研究は、大都市における感染爆発時の現実的な対応指針をつくることになろう。

蛇足ながら、英政府は、コロナウイルスによる感染爆発は今回だけで終わるものではなく、封鎖解除後に再燃すると予想している。

英国の新戦略ー抗体検査の対コロナ戦への活用

集団免疫を出口戦略に隠すことなく使用したのは英政府がおそらく初めてであろう。その方針には英国内でも強い批判が噴出したが、ここにきて英政府は免疫を基盤にする新たな戦略を発表する。これは英国はコロナウイルスの抗体検査(血清学的検査)である。特に、在宅検査キットを一般公衆向けにも準備している点に特徴がある。

この在宅抗体検査キットは、糖尿病のための古典的な血糖検査のように、指先からのごく少量の血で検査可能である。来週から大学機関による検査の機能検証がはじまり、検査の特性が判明し次第、まずは公的病院(NHS)勤務者に配布し、前線のNHS医療者から検査しだすという。さらに検査は一般向けに大規模に拡大される予定で、既に350万キットを購入済みで、さらに在庫を積み上げるという。アマゾンやブーツという大手薬局を通じた販売になるとされる。

抗体検査とは、ウイルス遺伝子の存在確認をするためのPCR検査とは全く違う原理であるし、目的も全く違うので、ここに少し抗体の免疫学の解説する。

抗体検査

ウイルスに感染して数日から1週間ほどのあいだに人間の体はそのウイルス特異的な抗体を産生を増加させ、血液検査で検出できるようになる。この初期の反応では、ウイルスに反応できるB細胞がまず迅速対応として免疫グロブリンM(IgM)という形の抗体を産生する。IgMは初期の反応には不可欠な形態の抗体だが、病原体に戦う力は一般に弱い。

しかし1週間ほどのあいだに一部のB細胞がより成熟した形態の抗体である免疫グロブリンG (IgG)抗体を産生するようになる。IgG抗体はIgM抗体よりもウイルスを無効化(中和)する力が強く、免疫細胞を有効に動員しウイルスを体内から除去する力が強いため、血中にIgM抗体とともにIgG抗体が増えてくる頃には、順調にいけばウイルスは排除されはじめ病気はよくなってくる。

そして時間がたちすっかり治癒したころには、血中にあるウイルス特異的な抗体の中には、IgG型の抗体だけが検出されるようになり、未熟なIgM抗体は検出されなくなる。

このIgMからIgGへの変化はどんな感染症でも普遍的にみられるため、コロナウイルス特異的なIgMとIgG抗体を検査することで、その人の免疫状態を調べることができる。こうして、ごく最近感染したところなのか、少し前に感染して治ったあとなのか(免疫)、まだ感染していないのか、の3つの状態の大まかに区別ができる。必要があれば、これをウイルス検査(PCR検査)や、より精密な抗体検査と組み合わせることで、より詳細に感染状態・免疫状態を知ることができる。

戦略的検査

重要な点は、このコロナウイルス抗体検査の大規模実施は、一般公衆の不安に対処する目的ではないし、検査により徹底的にコロナウイルス感染をあらいあげる目的でもない。もっと戦略的で、実際的で、ある意味、極めて冷徹な目的を持つと筆者は考えている。

現在のコロナウイルス対策の根幹は、熱や咳の症状があるかないかだけである。当然、風邪やほかの病気でも熱や咳はでる。しかしながら現在の英国のようにコロナウイルスが蔓延している状況では、ウイルスに感染している可能性がある人を勤務させるとコロナウイルスが職場で感染流行する危険性が高く、このような人には症状がなくなるまでは少なくとも自宅にいてもらうよりほかない。

この結果、たとえば、現在ロンドンの地下鉄職員の30%が自宅隔離状態だという。こうした人員不足がこれから特に問題になるのは前線の病院である。多くの看護師や医師が勤務できない状況になると、ただでさえ既に負荷が大きくかかっている病院の運営がさらに困難になる。これが医療崩壊を促進することになる。

一方、医療者がいつでも検査できるようになれば、いったん自宅隔離になったひとを職場復帰させる指針にもなるし、免疫を獲得した人を中心に、より安全に勤務シフトを組むことができるかもしれない。

英戦略の基本ー高齢者の保護

また同様に、ウイルス弱者である高齢者などのケアにあたる施設でも、免疫成立した人を同定できれば、同様に、仕事のシフトを改善し負荷を軽減し、利用者のこともより効率的に守ることができる可能性がある。

英国の政策の根幹的な方針は、英国全体でのコロナウイルスの感染はある程度許容するが、感染流行中は可能な限り高齢者らコロナウイルス弱者をそのあいだ社会から隔離し被害を最小化することにある。ここで大きな懸念は、どのようにコロナウイルス弱者を守るのか、であった。

現在英政府は、4ヶ月間にわたる高齢者の完全な外出禁止を準備している。その間、ウーバーなどを利用して、無料で食事を届けるという。それ以外にも掃除や入浴などさまざまな手助けが必要な高齢者は多数いる。このケアをするひとにコロナウイルスに対する免疫があればより安心して任せられよう。

ひょっとすると、この21世紀の世界大戦における抗体検査は、前線に立てる人を選別するための徴兵検査に相当するものなのかもしれない。

検査の限界とエビデンスに基づいた判断

当然、偽陽性や偽陰性といった検査の限界はある。それゆえ、抗体検査をしても、免疫があるはずだったのに(検査が間違いで)コロナウイルスに罹患してしまうひとや、逆に免疫がないと思って用心しているのに実は免疫があった人もでてくるだろう。それゆえに、医療者などリスクの高い人は、自己検査後、大学や研究機関の支援でさらに精密な抗体検査を行うことになる可能性も十分にある。

しかしながら、感染爆発がおこると、やがて遺体の収容に困難が生じるほど死亡者が増加し、医療者にも犠牲が出て病院の状態が逼迫する事態になる。簡易の自己検査で免疫状態をチェックすることは、日々の差し迫った生活の中で、個人が、各組織が、迅速かつ合理的な判断を下すよりどころになると考えられる。

国家戦略のための抗体検査

抗体検査には、おそらくさらに重要な点がある、英政府は大規模に抗体検査を実施することで、刻一刻かわる国民全体のコロナウイルスに対する免疫状態を調べる体制とするものと考えられる。これには科学的にも政策的にも極めて重要な意味がある。

まずウイルスに感染して免疫を持つようになった人たちが社会のなかでどれだけいるかがわかれば現在の疫学モデルが改良でき、将来の予測がより精密になる。現在のモデルはまだ精度が低く、数ヶ月、数年先がどのような状態になるか分からないところが多い。

こうしてモデルが改善されれば、封鎖解除をいつできるか、(再流行時の)再封鎖をいつどのタイミングでどの程度の厳密さで行うべきかといった決定がより効果的にできる可能性がある。

コロナウイルスに対する免疫は1年以内に減弱するという説もあるが、これについても実際のデータを取得できることになる。感染後どれくらいの期間にわたって免疫がどれだけ維持されるかがわかれば、今後どれくらいの頻度でどの程度の流行が起きるのかを予測するうえで重要なデータになる。

地域別のデータがあれば、地域ごとに異なった形での封鎖を行う政策も可能になるだろう。

こうしたデータと疫学モデルをもつことは、この第1回目の大流行後の世界を生きていく上で重要なことである。特にコロナウイルス感染がこれからの1ー2年(あるいはさらに長期間にわたり)遷延し、感染爆発を繰り返す状況になった場合には(そしてこれが現在予想されている事態である)、国家安全戦略の重要な基盤を与えると考えられる。

注釈

1.散歩など運動が許可・奨励されているのは奇異に感じるかもしれないが、これは明らかに自宅に閉じこもることによる健康障害を懸念しての対策である。どのような政策にも副作用はあるものだが、長期における外出禁止はコロナウイルスに対しては有効だが、循環器疾患など他の疾患の危険を高める可能性があり、散歩などの運動は重要である。

2.東京圏でいえば幕張メッセや横浜パシフィコが病院になるようなものである。

【#木村正人】新型コロナの免疫とワクチンの話をしよう 免疫学の第一人者・宮坂先生にお尋ねしました(上)

2020-03-29 03:37:06 | 海外の反応
イタリアでは手遅れになっている患者が多いようですが
[ロンドン発]中国に続いて欧州、そしてアメリカを襲う新型コロナウイルス。免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授にさらに質問をぶつけてみました。

木村:英BBC放送のドキュメンタリー番組で中国の患者さんの家族がCTスキャンの画像を見せる場面がありました。素人が見ても両肺の9割5分ぐらいがハチの巣のようになっていて間質性肺炎を疑いました。新型コロナウイルス肺炎の末期というのは間質性肺炎がひどくなって死んでいくのですか。

宮坂氏:いいえ、私の理解は、そうではありません。レントゲンでは白く見えますけれども、あれは肺胞自身がつぶれる、破壊されるために白く見えているのです。

普通、間質性肺炎というのは、肺胞ではなくて、肺胞と肺胞の間の間質のところに炎症が起こることを指します。

ところが、新型コロナウイルス感染の場合には、肺胞の上皮細胞が感染して壊れるので、肺胞が壊れる。それとともに周囲の間質にも炎症が起こっているということで、肺胞の破壊なしに間質性肺炎が起きているわけではありません。また、間質性肺炎が起きたから肺胞が破壊されているのではなくて、やはり一次的には、何らかの原因で肺胞の上皮細胞がやられてしまって、従って空気交換ができなくなる、ということだと思います。

肺炎の最初の自覚的症状は呼吸困難ですね。あれは酸素が十分に体内に吸収できなくなるからです。その時点では、レントゲン写真ではそんなに白く見えないことが多いのですが、そこからなぜか急に重症化する人がいるのです。

木村:今後、日本でも流行が広がると、病院のベッドが足りなくなってくるから、若くて症状の軽い人は、みんな自宅で療養することになると思います。イタリアでは手遅れになっている人も多いようです。重症化して病院の集中治療室(ICU)に入れられた人で助かる例は少ないという報道もあります。

宮坂氏:何歳で、そしてどういう状態で、ICUに入ったかということが大事です。中国や欧米のデータを見ると、年齢によって50歳より前であれば、ICUに入っても多くの人は元気になって退院しますが、60、70、80歳となると、ICUに入ったら半分は亡くなります。きちんとした医療施設があっても、高齢者には持病があることもあり、助けられる例は多くないようです。

ただ、イタリアのように人工呼吸器が足りなかったり、重症者を入院させられなかったりというような状況にまでいってしまうと、ICUに担ぎ込まれても十分な治療ができず、結局は駄目という状況があるようです。

木村:医療資源のひっ迫度合いによって、助けられる命の率も大きく変わってくるわけですか。

宮坂氏:そうだと思います。この他に、重症化をするかどうかは2つの重要なファクターがあります。一つは、ウイルスの曝露(ばくろ)量です。医療関係者は患者に近接距離で接するのでウイルス曝露量が多く、どうしても重症化する率が非常に高くなります。

木村:本当にかなり重症化率、死亡率が高いですね。

宮坂氏:それは彼らが、ウイルス曝露量が多いだけでなく、非常にストレスのある状況で仕事をしていることも原因になっています。ストレスによって免疫力が落ちていて、非常に感染しやすい状況になっています。体の抵抗力が落ちているためにウイルスが入ってきやすくなっていて、いざウイルスが入ってくると、体内で一気に増えてしまうということです。

もう一つの大事なファクターは持病です。糖尿病、心疾患、高血圧などの持病があり、しかも治療が不十分だった場合、また、がんの化学療法を受けていると、免疫力が低下していますから、当然、重症化しやすく、いったん重症化すると非常に高い確率で亡くなるということになります。

と言っても、実際の統計を見ると、糖尿病や高血圧を持っている人は、重症化率は確かに高いですが、中国の統計では20~25%で、一方、普通の人が重症化するのは数%です。ですから、持病を持っていたら半分以上が重症化するというわけではありません。

免疫系の暴走サイトカインストームについて教えて下さい
木村:ウイルス性の炎症から免疫系の暴走によるサイトカインストームと呼ばれるものに移行する瞬間というのは、どういう感じで起きるのですか。同時に起きていくわけですか。

宮坂氏:それはよく分かっていません。肺炎が悪くなるにつれて、免疫細胞の異常な活性化状態が起っています。しかし、何がその異常活性化状態を引き起こしてしまうのかが、現在のところわからないのです。免疫細胞が活性化されると、炎症性サイトカインというものが作られます。これは、自動車ではアクセルに相当するもので、免疫反応を強く前に進ませる役割があります。

新型コロナウイルス感染の末期に起こるサイトカインストームでは、ちょうど自動車でいえば、ブレーキをかけずにアクセルを踏み込み続けた状態で、全くブレーキが利かないようになっています。でも、われわれにも分からないのは、なぜアクセルだけ踏み込まれてブレーキが利かないようになってしまうのか。通常は、免疫反応の場合、アクセルを踏んだらブレーキが踏み込まれて、加速しすぎないような調節機構があるのですが、サイトカインストームの場合、そこがうまく働いていないようです。

免疫反応というのは一種の炎症反応であり、通常の場合、炎症は一定程度起こっても、必ず戻ってきて回復します。でも、このサイトカインストームの場合には、ある一定のスレッシュホールド(敷居)を超えると、だーっとサイトカインがつくられ続けすぎて、さらに免疫細胞が異常に活性化されて、それが急激な肺胞の破壊あるいは間質の破壊につながっているように見えます。

でも、なぜそうなるかは、われわれにも分かっていませんし、どういう人がそういうことを起こしやすいのかも、先ほど言ったような持病や加齢などのリスクファクターは分かっていても、例えば若い人でもなる人は何%かいるわけです。そういう人が血液検査や何かで分かれば、その人を入院させて重点的に診ればいいのですが、これが分からないのです。

ワクチン開発の見通しはどうでしょうか
木村:英インペリアル・カレッジ・ロンドンのロビン・シャトック教授はワクチンの開発に取り組んでいますが、遺伝暗号を新型コロナウイルスの塩基配列が公表されてから2週間で作りました。その遺伝暗号を筋肉に注射するとタンパク質をつくって免疫反応を起こすと言われています。大学のホームページを見ても1行か2行の説明しかないので何のことか分かりません。

宮坂氏:それが今、DNA(デオキシリボ核酸)ワクチンとかRNA(リボ核酸)ワクチンと言われるもので、アメリカではモデルナという会社がRNAワクチンを開発していて、今、第一相の治験が始まるところです。

ウイルスの遺伝子は一本鎖のRNAですが、その中から特定のウイルスタンパク質を作る部分を見つけてきて、それをわれわれの体に注入し、細胞の中で発現させてやれば、特定のウイルスのタンパク質がわれわれの体で作られるようになります。

そうすると、そのウイルスタンパク質はわれわれの体にとって異物ですから、われわれの免疫系が認識して、それに対する抗体をつくる、あるいは、それに対するキラーT細胞をつくるようになる、ということが期待できます。

つまり、これまで行われてきたような、ウイルスタンパク質を用いて免疫するのではなく、体内でウイルス遺伝子を発現させてウイルス由来タンパク質をつくらせることができれば、外からタンパク質を入れるのと同じ免疫効果があるはずだろう、というのがRNAワクチンの考え方です。

木村:それをすると、かなり開発のスピードが上がるのでしょうか。

宮坂氏:そういうことです。特定の遺伝子、タンパク質を試験管の中で大量につくらせること自体が技術的に大変で、これまではこのプロセスで時間を無駄にしていたのです。ですから、ウイルスのDNAやRNAの一部を注射することによってウイルスタンパク質をわれわれの体の中で作らせることができたら、ワクチンの開発としてはものすごく手間が省けるわけです。

ところが大事なことは、私たちの体はどの遺伝子でも導入すればタンパク質をつくるわけではないということです。よくタンパク質をつくってくれる遺伝子と、そうではない遺伝子があります。だからウイルスRNAをちょん切って、何種類かのRNAをわれわれの体の中に入れて、どのRNAが人体で一番ウイルスタンパク質を効率よくつくらせるかを決めないといけないのです。

ウイルスのRNAは、何十種類ものタンパク質をつくり、その中で一番大事なタンパク質を作ってくるRNAはどの部分か、そしてもっとも免疫を刺激できるタンパク質はどれか、ということを順番に探さなければいけません。それはそれで手間ですが、試験管の中でウイルスのタンパク質を最初に大量につくって免疫をするという作業は省けるので、何カ月も仕事が早くできます。

しかもこのウイルスの遺伝子はRNAですから、RNAのどの部分がタンパク質になるかは、ほぼ全部分かっています。だからウイルスRNAの中にタンパク質を作りそうな領域が20カ所あるとすると、それをちょん切ってそれぞれ注射して、20カ所のうちどれが一番いい免疫力を上げるRNAかを見つけることができるわけです。そういうことをすると、RNAワクチンの候補が早く見つけられるであろう、ということです。

このためには、まず動物で前臨床試験をすることが必要で、そこで一番免疫力を上げられるRNAワクチンの候補が見つかれば、次に人で試すことになります。そうすると、第1相試験、第2相試験、第3相試験という臨床治験をやることになります。

ワクチンというのは、最悪の場合、病原体にも抗体をつくるけれども、われわれの体に対しても抗体をつくってしまうことがあるのです。もし、ワクチンによって神経細胞に対する抗体ができたら、われわれはアルツハイマーになってしまう、あるいは脳炎を起こしてしまうわけです。

実はそういうワクチンの悲しい歴史もありました。これはいいと思ってつくったワクチンでも、例えば、日本脳炎のワクチンでも脳炎が起きたことがありました。

マウスの脳で人のウイルスを増殖させたがゆえに、マウスの神経細胞に存在する抗原がワクチンに混ざってしまい、そのためにそのワクチンをうつと人の神経細胞に対する抗体ができて脳炎を起こす、つまり、ワクチンを打ったために脳炎を起こしてしまったという例が今までもあったのです。

この他にも、RSVという子どもの肺炎ウイルスに対するワクチンを作ったところ、接種した子どもにかえって肺炎が起こる頻度が増え、死者が増えたという悲しい事例が過去にありました。また、デング熱を起こすウイルスに対するワクチンでも同様のことがありました。これは「ワクチンによる病原性の増強」と言って、ワクチン接種により、かえってウイルスの病原性が増して病気が悪化したという例です。

このようなことから、ワクチンの場合には、第1相試験で約100人、第2相試験で数百人、第3相試験で少なくとも2000人や3000人で安全性と有効性を調べます。しかし、そのような安全性、有効性試験を通り過ぎたワクチンであっても、過去には大きな事故が起こったことがありました。ワクチンというのは何百万人に投与するので、千人単位の安全性試験ではなかなかわからないことがあるのです。

ワクチンの安全性試験にはどれぐらいの時間がかかりますか
木村:人数を大きくすると、きわめて稀だけれども大きな副反応が見えてくるということですか?

宮坂氏:そうです。何百万人という単位でワクチン接種をすると、稀だけれども大きな副反応が見えてくることがあるのです。そうなると、必ず大きな非難を受けることになります。ワクチンは健康な人が受けるものですから、1例でも副作用があったら、「このワクチンは駄目だ」と。当然、自分の子どもがワクチンを打って脳炎になったら、「何だ」と絶対に言いますね。

ですから、ワクチンというのは安全性試験と有効性試験がやはりすごく大変で、それをやるにはどうしても2年かかります。

だから米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長という感染症のトップの人も、少なくとも1.5年から2年かかると言葉を濁していましたけれども、それは大人数に対する安全性試験と有効性試験まで入れたら、どうしてもそうなるのです。

ただ、例外は、例えばエボラ出血熱のように、抗体が効くらしいということから試験的に抗体を投与したという例があります。エボラになった感染症の患者さんに、治った人から抗体をとってきて次の人に入れたら、それなりに効いたと。それを人工的に大量につくれる抗体の形につくり替えて、それを何種類か混ぜて投与したら確かに効いたのです。

それは安全性試験とともに有効性試験を同時にやっているのです。これは、かなりのリスクがあり、事故が起こる可能性があります。「それでもいいですか」と言ってインフォームドコンセントをとるのですが、死にそうな人だったらOKするしかない、そういう試験です。

また、第1相、第2相、第3相試験は、ランダム化の試験ですから、あなたに何を投与しますということは、一切言わずに行います。だからその試験に参加しても、自分は正しいお薬をもらっているのかそうでないのかが分からない状態でやるのです。

だから感染症のワクチンの治験は大変です。1群はプラセボ(偽薬)、1群は効くはずのワクチンを投与します。投与を受ける人はどちらのものを投与されているのかは知りません。プラセボを受けた人は、その感染症に免疫はできず、感染のリスクが残ることになります。

ということから、ワクチンの安全性試験と有効性試験を第3相試験までやるというのは大変です。第3相では、数千人の集団を見つけて試験をする必要があり、それを感染が起こりうる地域でやる必要があるのです。

イギリスは、これが2年ぐらいでできるかもしれない、それまでに集団免疫ができればあとはワクチンでいいだろうなどと言っていますが、私は2年では絶対にできないと思います。

木村:臨床試験とは相手のインフォームドコンセントを取って人体で実験をするということですか。

宮坂氏:そういうことです。だから死にそうな人に対しての実験としては成立するのですが、健康な人にそれを言ったら簡単にはやらせてもらえません。

だから、もしも新型コロナウイルスで重症化した患者さんで、死にそうだったら分かりません。今のエイズ薬やアビガンやいくつかのお薬は、そういうところで使っているわけです。

エイズ薬などは、すでに第3相まで過ぎたお薬なので、敢えて新たな臨床試験なしに目的外使用という形で特別にやっているわけです。でもこのワクチンの場合にはそういうわけにはいきません。何百万の人にやろうと思ったら、必ず第3相までの試験は通していないと、国は認可を出しません。それには私は少なくとも2年はかかるだろうと思います。

木村:SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスとMERS(中東呼吸器症候群)ウイルスで共通に存在する抗原(=タンパク質)でマウスを免疫すると、両方のウイルスに反応するTリンパ球が体内にできて、ウイルス感染細胞を殺すことができるというお話を前回うかがいしました。

SARSやMERSは致死率がそれぞれ10%や34%ぐらいあって非常に危険なウイルスだと思いますが、そういうのを動物や、極端な話をすると、人間の体にわざと入れることはできるのですか。

宮坂氏:いいえ、そうではなくて、こういう実験は全てウイルスの遺伝子の一部分を切り出してきて、特定のタンパク質だけ、あるいはそれを作る遺伝子だけを切り出してきて、それを使ってマウスを免疫したりするわけです。

私が前にお話したのは、SARSウイルスとMERSウイルスという異なる2種類のコロナウイルスの間で共通に持っているアミノ酸配列――共通抗原と言いますが――これをマウスに投与するという実験です。

これはマウスを感染させるのではなくて、ウイルス由来のタンパク質で免疫するということです。そうすると、マウスのBリンパ球もTリンパ球もこのウイルス抗原によって刺激されて、Bリンパ球が抗体を作り、Tリンパ球のうちウイルス感染細胞を殺すことができるキラーT細胞が、実際にこの免疫によってできてくるのです。

中でもキラーT細胞は、MERSの感染細胞も殺せるし、SARSの感染細胞も殺す能力を持っていました。つまり、例えばAというコロナウイルスを使って、Bという別のコロナウイルスに対する免疫を起こすことができるかもしれないということです。ただしそれはAとBが共通の抗原を持っていればという話です。

木村:それは今回の新型コロナウイルスにも、ひょっとしたら応用は可能なのですか。

宮坂氏:はい。SARSとMERSと今回の新型コロナウイルスの間には共通に存在するアミノ酸配列が確かにあるのです。そういう配列があるからといって全て免疫を起こす力が強いかどうかというのは、やってみなければ分からないですが、SARSとMERSで共通のタンパク質でお互いに反応する免疫を起こすことができたということは、新型コロナウイルスに対してもこのような共通配列を用いて免疫を起こせる可能性があると思います。

つまり、ウイルスの一部のタンパク質あるいは遺伝子の一部だけを取ってきて、実際の感染力がないものでワクチンを作って、免疫を起こすことができる可能性があるのです。

(つづく)

宮坂昌之氏
1947年長野県生まれ、京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学博士課程修了、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所、1994年に大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部教授。医学系研究科教授、生命機能研究科兼任教授、免疫学フロンティア研究センター兼任教授を歴任。2007~08年日本免疫学会長。現在は免疫学フロンティア研究センター招へい教授。新著『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』(講談社)。

【#ハーパーズ バザー・オンライン】新型コロナをめぐる「陰謀説」! 私たちが注意すべきこと

2020-03-29 03:33:34 | 海外の反応
ヨーロッパで新型コロナウイルスが“現実”のものになる前、私(筆者)は、土曜日のブランチに、予想外の陰謀説を唱える人とエッグフロレンティーンをシェアしていた。賢く、ふだんは冷静なその友人が、ウイルスは武漢の研究所から漏らされたという「信頼できる情報を得た」と言うのだ。何故そんなことを?過密な世界の人口を減らすためだ。

つまるところ、高齢者や弱者がもっともハイリスクなのだからと、彼女は理由づけた。そんなの、疑わしいと思わない?正直言って、彼女の意見は私を不安にさせ、私はミモザ(カクテル)を1杯余計に飲んでしまった。

が、それから2週間経ち、予想通り新型コロナウイルスに関する陰謀説はパンデミックと同じくらい急速に広まっている。今やソーシャルメディアにはこのグローバルな健康危機に関するフェイクニュースが咲き乱れ、中にはCIAが中国に戦争を仕掛けるために企てた細菌兵器だと言う人までいる。(もちろん、中国は逆だと主張)。

また、大手製薬企業が市場を操り、ワクチンで途方もない利益を得ようとウイルスを導入したのだと確信している人もいる。一方、コウモリのスープ、というかコウモリを食べるとCOVID-19にかかると言っているソーシャルメディアアカウントも相次いでいる。

しかし、人の命がかかっている時に、情報発信チャンネルが不安をあおる嘘や“魔法の治療薬”を唱える極めて不正確なレポートの塊になっていて、陰謀説はウイルスそのものと同じくらい危険なのではないだろうか?
ケント大学の社会心理学教授カレン・ダグラスは、そう確信している。

「危機に瀕した時に陰謀説は顕著になりますが、それは状況の不確実性と大いに関係しています。人々は重要なことが起こるとそれに対する説明を求めますが、コロナウイルスのケースのように、公式チャンネルからの情報が不完全だったり一貫性がなかったり、次々に明らかになっていったりすると、私たちはより速く、単純な説明を求めることが多いのです」と、彼女。

「が、陰謀説は、不確実を減らすというより、実際は高めてしまうことが研究からわかっています。無力感や失望感も高まります。人々は(フェイクニュースから)力や信頼感を得ようと期待するのですが、逆に恐怖を注ぐので気分がもっと悪くなるのです」

この見方には、陰謀説心理学の専門家でアングリア・ラスキン大学教授のヴィレン・スワミも同調する。
「いま現在、ウイルスについての情報は日ごとに、ほぼ1時間単位で変化しています。陰謀説は、自分たちでコントロールできない時にその仲介的感覚を与えます。つまり、もし自宅で自主隔離していて不安で恐ろしくて世間から切り離されてしまった気持ちになった時、陰謀説は問題を人格化するのに役立つのです」

「それが中国の研究所職員であれアメリカ政府であれ、突然、誰か責める相手が見つかるわけです。ここで問題になるのは、不安になる代わりに、何か行動を起こす承認を得てしまうことです。それが、外国人嫌悪が急増したり、馬鹿げた、潜在的に非常に危険な誤った医学的アドバイスを信じてしまったりすることなどにつながります」

結果として、新型コロナウイルス大流行ではすでに、世界中で人種差別や東アジアコミュニティをターゲットにしたヘイトクライム(憎悪犯罪)が急激に高まっている。トイレットペーパーの輸出がストップするという一つの噂がスーパーマーケットでの買い占めをあおるなど、メッセージグループが新型コロナウイルスに誘発されたパラノイアを反響させてしまっている。

トランプ支持のQアノン陰謀説のフォロワーは、“魔法の鉱液”と称する薬物を宣伝していると報じられている。この“治療薬”は、自閉症からガン、COVID-19まで何でも治すのに役立つと誤った主張をしているもので、漂白剤が含まれているのだ。

「陰謀説は間違いなく、精神的にも肉体的にも、個人の健康に有害なものになり得ます」と、ダグラス教授は説明する。「が、社会の健康も蝕みます。専門家や科学、政府への不信感を助長するので、その代わり必然的に非公式な情報源を頼りにするようになるのです」

インターネットで人々が非常につながっている時代に、それは深刻な問題だ。ソーシャルメディアのおかげでフェイクニュースがかつてないほど容易に、より効果的に拡散するようになり、ハッカーたちは誤った情報に引き込むようデジタル的に罠を仕掛け、新型コロナウイルス関連のサイトを立ち上げて個人情報を盗み、実際、利益すら上げている。専門家によると、トランプ大統領がTwitter上で誤情報を流しているもっとも有名な人物の一人だという事実もまったく役に立たない。

とは言え、FacebookやGoogle、Twitterなど主要オンラインメディアは陰謀に駆られたマテリアルを減らすアルゴリズムを今は使っており、世界保健機関や政府関係者と密に仕事をして、正確な情報が広く行き渡るようにしている。

それでも、有害な表現を抑えるような対策がもっと必要なのは明らかだ。

「陰謀説にもっと積極的に挑戦する政治的意思が必要です。オンラインの誤情報には当局筋が取り組むことが重要なのです。自主隔離すると、パンデミックにイライラしてきて、ますます多くの人々がデジタル処理されたアドバイスを頼るようになるので、なおさらです」と、スワミ教授は加える。

「友人や家族、愛する人たちがシェアしたフェイクニュースを非難するのはやっかいなことになりかねませんが、私たちは皆、信頼できる情報で知識の隔たりを埋める責任があります」

では、毎日、偽理論の氾濫や両極端な意見にマイナスの影響を受けている人は、今後、どうするのがベストな方法なのだろう?
「警戒を怠らず、分析することです」と、ダグラス教授。
「受け取っているその情報が正しいか誤ったものか、NHS(イギリスの国民保健サービス)や政府のウエブサイトなど信頼できるチャンネルやニュースソースを通して確かめましょう。世界保健機関(WHO)は、広く流布している誤解を払拭し、不安を低減する助けとするためにMythbusters(通説バスター)ページをローンチしました」

そして、何でも誰かとシェアする前に細かくチェックしよう。
「その情報が誰かに与える可能性のある影響を分析し、人々がフェイクニュースを信じれば、健康上リスキーな判断をしがちだということを覚えておきましょう」と、彼女は加える。

もちろん、陰謀説自体は新しいものではなく、歴史的に危機になると人々の会話に影響を与えてきた。言うなれば、感染する前に怖れが先にやってくるのだ。が、過度につながった、ポスト真実(何が真実かわからない)時代は、信頼できる情報を得るための闘いと、安全でいるための闘いを連携させていかなければならない。

BY NICOLA MOYNE From Harper’s BAZAAR UK

Translation: Mitsuko Kanno

【#朝鮮日報】【萬物相】天安艦爆沈、デマを流布した厚かましい人々

2020-03-29 03:30:23 | 海外の反応
 10年前に韓国海軍の哨戒艦「天安」が爆沈した直後、北朝鮮の魚雷攻撃を否定する最初のデマは「座礁説」だった。これを提起した民間潜水業者に判断の根拠を尋ねたら「ぱっと見たところ座礁」と答えた。「天安を実際に見たことがあるのか」という質問には「引き揚げのテレビ中継のとき初めて見た」と答えた。この人物は、セウォル号沈没事故のときも「ダイビングベル」の主張で現場に大きな混乱を起こした。5年後、民主党の大物議員がテレビで「天安艦の横にできたスクラッチ(引っかき傷)を見たか。座礁だ」と発言した。スクラッチは引き揚げの過程でできたものだ。議員は「北の仕業だとは信じたくない」とも発言した。この言葉こそ本心だろう。

 「艦内爆発説」もあった。天安の切断面が外から中に向けてひどくたわんでいることが明らかになると、この説は消えた。「米軍原子力潜水艦との衝突」デマが通用しないとなるや、今度は「イスラエル小型潜水艦衝突説」が飛び出した。北朝鮮の小型潜水艇の仕業だと発表されると「そんな能力はない」という主張が繰り広げられた。一つのデマが根拠を失うと別のデマが代わりになる。デマ同士、互いに矛盾したりもする。

 インターネットメディアの代表が「東海に生息する赤いホヤが、西海で引き揚げられた(北の)魚雷の推進体から発見された」と主張した。韓国軍が爆沈の証拠として海から引き揚げた北朝鮮の魚雷の推進体は捏造(ねつぞう)、というのだ。ところが、「赤いホヤ」を遺伝子分析した結果、生命体ではないと判明した。その人物は「北の魚雷に(ハングルで)書かれた『1番』という文字は韓国人が書いたもののようだ」とまで言った。民主党は、こんな人物を天安の民間調査委員に推薦した。

 現在政権の座にある当時の野党は、政府発表を信じようとしなかった。世界的な金属工学者が発表した科学的事実に対し、柳時敏(ユ・シミン)氏は「小説」だと言った。一時は、天安爆沈を信じないことこそが、何か優れた人物であるかのような風潮まであった。「地方選挙用の『北風』工作」というデマもかなり出回った。兵士たちが家に電話をかけて「北朝鮮とわざわざ戦争しようとしているが、防がないといけないんじゃないか」と言う事件まで起きた。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が天安爆沈を認めた後、デマは消えた。事実を認めるとか認めないとか言うこともない。北朝鮮の攻撃ではなかったのであれば、この10年の間に何十回も良心宣言が出たはずだ。だが、実際にはただの一度もなかった。それでも、デマを主張していた人々は依然として大きな顔をして歩き回っている。狂牛病デマ、THAAD(高高度防衛ミサイル)電磁波デマを言いふらしていた人々も同様だ。狂牛病デマを主張していたある人物は、米国でハンバーガーを食べたりもしていた。天安デマは、痛ましい天安遺族の胸を引き裂いた。デマを流布した人々は、いまだに「申し訳ない」の一言もない。それでいて、口さえ開けば「正義」を叫ぶ。

アン・ヨンヒョン論説委員

【#朝鮮日報】【社説】「北朝鮮」を隠した追悼の辞に哨戒艦爆沈事件の遺族が絶叫、文大統領の本心は何か

2020-03-29 03:27:45 | 海外の反応
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は27日、初めて「西海守護の日」記念式典に出席した。第2延坪海戦、哨戒艦「天安」爆沈、延坪島砲撃など北朝鮮の西海挑発で国に命をささげた韓国軍将兵55人を追悼する国家記念日だ。韓国軍の統帥権者ならば、あらゆる日程を後回しにして記念式典に出席するのが当然だが、文大統領は海外歴訪や韓国国内のほかのスケジュールを理由に不参加を続けていた。10分間にわたる文大統領の記念の辞に、「北朝鮮」という単語はただの一度も出てこなかった。殉国将兵が誰の攻撃で犠牲になったかを隠す追悼の辞というのがあるのか。

 この日、焼香する文大統領に白髪の「天安」遺族が近寄った。故ミン・ピョンギ上士(曹長に相当)の母親(77)だった。「大統領様、これが誰の仕業か、ちょっと仰ってください」「胸がつぶれます」と話しかけた。絶叫のような言葉だった。文大統領がミン上士の母親に「北朝鮮の仕業という政府の立場がある」と答える場面がカメラに捉えられた。ならばなぜ、公式の追悼の辞でこれを表明しないのか。到底納得できない。

 文大統領は、「天安」爆沈から5年後に、「北の潜水艇が天安を攻撃」と語った。そのときまで民主党とその周辺勢力は、ありとあらゆる「天安」デマを作り出したり、それに便乗したりしてきた。文大統領がこのデマに終止符を打ったが、現在の汎(はん)与党勢力の「本心」が何なのかについては疑問がある。北朝鮮の仕業という事実は否定できなくなったが、かといって北朝鮮の挑発に対し憤慨するということは全くない。彼らは、北朝鮮が初めて核実験を行って民族の未来に暗雲を垂れこめさせた数カ月後、北朝鮮の関係者とダンスを踊ったこともあった。

 文大統領は今年の新年の辞で、「4・19(1960年4月19日。4月革命)60周年」、「5・18(1980年5月18日。光州事件)40周年」、「6・15宣言(2000年6月15日。南北共同宣言)20周年」は語る一方、6・25開戦70周年という点には言及しなかった。6・25戦争は韓国現代史最大の事件にして悲劇だ。にもかかわらず6・25だけを外したのは、南侵した戦犯の孫が金正恩(キム・ジョンウン)だからだ。就任から3年連続で6・25記念式当日の行事には出席しなかった。6・25の護国英霊を追悼する顕忠日の記念の辞でも3年連続で、6・25と侵略の主体である「北朝鮮」を直接には挙げなかった。逆に、6・25南侵で功を挙げ、金日成(キム・イルソン)から勲章をもらった人物を「韓国軍のルーツ」であるかのように祭り上げた。「天安」爆沈の主犯の一人である金英哲(キム・ヨンチョル)を受け入れ、国賓級の待遇も行った。これが文大統領の本心ではないか。

 文大統領が「西海守護の日」の行事に出席すると発表するや、心にもない総選挙用ショーをやる、という指摘が起きた。だが、韓国軍の統帥権者として、違った姿を見せてくれることを期待した韓国国民も多かった。しかし文大統領の追悼の辞は、本心が別にあるという事実のみを示した。今や「金正恩は偉人」と主張する勢力までのさばり、野党の選挙を妨害しても警察は黙って見ているだけという有様だ。犠牲になった将兵の遺族の心情はいかばかりか。故ミン・ピョンギ上士の両親は、遺族補償金およそ1億ウォン(現在のレートで約891万円)を出して韓国海軍に機関銃18丁を寄贈した。大韓民国は、軍の統帥権者ではなく、こうした方々が守っている。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【#朝鮮日報】中国が入国禁止の不意打ち、韓国外交部はまた大空だけ殴った

2020-03-29 03:25:24 | 海外の反応
習近平、G20テレビ会議で韓国の防疫を称賛するも2時間後にドアを閉じる

日本には即刻反発した韓国外交部、中国には対抗措置なく抗議のみ

 韓国外交部(省に相当、以下同じ)は27日、中国政府が同日未明に全ての外国人に対して全面的な入国禁止措置を取ったことについて「突然の発表があり、事前に通知を受けられなかったので遺憾に思う」とコメントした。しかしこれに対抗して中国人に対する入国禁止措置を取ることはしないとも明らかにした。中国から不意打ちを食らっても対抗措置はしないということだ。日本が韓国に入国制限措置を取ったときは直ちに対抗した政府が、中国にだけはダブルスタンダードを適用しているとの指摘が出ている。中国は今回の措置を26日夜11時30分(現地時間)に発表した。わずか2時間前に文在寅(ムン・ジェイン)大統領は習近平・国家主席らが参加したG20(主要20カ国・地域)首脳らによるテレビ会議で「海外からの入国を全面的に制限しない状態で行われている韓国の防疫措置の優秀性」を強調していた。

 中国外交部はホームページに掲載した公告を通じて、28日0時から既存の中国ビザ・居留許可を持つ外国人の中国入国を一時中断すると発表した。北京などで行われていたノービザでのトランジットや一部国籍者に対する到着ビザ制度も全面的に禁止となった。ただし外交官、航空会社の乗務員などの入国は認められる。中国政府は貿易・科学・救護目的などでの入国については「中国領事館を通じてビザを申請できる」としている。今回の措置は主要国の中では最も強力なレベルだ。

 韓国外交部はこの日午後5時ごろ、金健(キム・ゴン)次官補が邢海明(けいかいめい)駐韓中国大使を呼び、電撃的な入国禁止措置について抗議の意向を伝えた。しかし韓国外交部は「(中国発の旅行客について)全面的に入国禁止すべき状況ではないと考える」ともコメントした。韓国外交部は、中国の各都市で韓国人を含む外国人旅行客の2週間隔離が始まった際「中央政府ではなく地方政府次元での措置」との理由で対抗措置は取らなかった。今回、中国の中央政府次元での入国禁止措置が出たにもかかわらず、対抗のレベルを高めなかったのだ。今月6日に日本が韓国人に発給されたビザを停止しノービザ・プログラムを中断した際、韓国外交部は「ビザ政策は相互主義」として直ちに対抗措置を取った。中国と日本に対する対応が180度違っているのだ。

 これについて韓国外交部のある幹部は「われわれはすでに武漢を含む湖北省で発給されたビザ所持者の入国を禁止し、済州道ノービザ入国プログラムと第三国ノービザ経由も停止した」と説明した。この幹部は「(中国側の措置は)韓国に対するものではなく、全世界を対象としたものだ」とも述べた。

 一方で韓国外交部は、日本が3月末までと発表していた韓国発の旅行者に対する入国禁止措置を4月末まで延長したことについては「遺憾」とコメントした。

北京=パク・スチャン記者

【#朝鮮日報】韓国総選挙に1118人が出馬…3分の1は前科者、中には殺人犯も

2020-03-29 03:22:46 | 海外の反応
145人は兵役に就かず、共に民主党最多

5年間税金滞納の候補も150人

 第21代国会議員選挙の候補登録が27日に締め切られた。与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナクヨン)新型コロナウイルス感染症国難克服委員長や、野党・未来統合党の黄教安(ファン・ギョアン)代表など1118人が候補登録を終えた。

 最終登録候補者1118人のうち、50代が539人で最も多く、以下60代(291人)、40代(181人)、30代(56人)の順だった。最高齢候補は国家革命配当金党のチャ・ドンイク候補(「ソウル蘆原乙」選挙区)で80歳だった。「ソウル恩平乙」選挙区から出馬した基本所得党のシン・ミンジュ候補が25歳で最も若かった。男性が904人で全体の80.9%を占めている。職業別に見ると、政治家が591人と全体の52.9%で、以下弁護士(61人)、教育者(49人)、会社員(34人)、医師・薬剤師(25人)の順だった。「ソウル鐘路」選挙区からは最も多い12人の候補が登録した。

 27日午後7時までに登録された候補者1052人のうち、3分の1以上の387人(36.8%)に前科があった。前科者数は共に民主党が98人と最も多く、ホ・ギョンヨン代表が率いる国家革命配当金党が79人、未来統合党が60人、民衆党が38人、正義党が37人だった。国家革命配当金党のキム・ソンギ候補(「釜山書洞」選挙区)は1982年に殺人罪で懲役2年を言い渡された。最多前科者は民衆党のキム・ドンウ候補(「京畿安山檀園甲」選挙区)で前科10犯だった。共に民主党のイ・サンホ候補(「釜山沙下乙」選挙区)は飲酒運転(2回)や集会デモ法・特殊公務執行妨害など前科7犯だ。イ・サンホ候補は2002年に「ノサモ」(盧武鉉〈ノ・ムヒョン〉を愛する人々の会)の代表を務めた。女性候補198人を除く854人のうち145人(17%)が兵役免除を受けたことが分かっている。人数の多い順に共に民主党(50人)、未来統合党(27人)、国家革命配当金党(26人)、正義党(12人)だ。

 最近5年間で所得税・財産税・総合不動産税などの滞納歴のある候補も150人(14.3%)いた。ウリ共和党イ・ドンギュ候補(「大田西乙」選挙区)が12億5251万ウォン(約1億1000万円)を滞納したほか、共に民主党イム・ドンホ候補(「蔚山中」選挙区)、未来統合党カン・チャンギュ候補(「仁川富平乙」選挙区)らが税金を1億ウォン(約900万円)以上支払っていない。反対に、税金納付額が最も多い候補は共に民主党キム・ビョングァン候補(「京畿城南盆唐甲」選挙区)で、最近5年間で103億7906万ウォン(約9億2000万円)支払った。キム・ビョングァン候補は財産申告額も2311億4449万ウォン(約205億5500万円)で、候補者の中で最も多かった。

キム・ウンジュン記者

【#ハンギョレ】在韓米軍ついに…労働者4千人を「無給休職の崖」に立たせた

2020-03-29 03:06:08 | コラム
米、防衛費交渉で人質に取る 「来月1日から休職」個別通知書 
労働者休業手当もなく見通しは暗い 
大統領府・外交部「対策準備を講じる」

 在韓米軍で勤務する韓国人労働者4000人余りが韓米防衛費分担金交渉の「人質」となり、4月1日から強制無給休職に追い出される瀬戸際の危機に瀕している。

 25日から在韓米軍で働く韓国人労働者8500人中4000人余りが「4月1日から終了が通知されるまで無給休職に処される」との個別通知書を受けた。無給休職が現実化すれば在韓米軍駐留の60年余りの歴史上初めての事態だ。これは米国のトランプ政権が今年韓国が負担する防衛費分担金を去年1兆389億ウォン(約920億円)の5倍を超える50億ドル(約6兆ウォン、約5600億円)に引き上げるとの無理な要求をした時から予告された災難でもある。分担金交渉は去年妥結されるべきだったが韓米の意見の隔たりは相変わらず大きく、合意に至れずにいる。17~19日の交渉では無給休職の事態を防ぐために韓国政府が在韓米軍の韓国人労働者の賃金をまず負担するので人件費部分から先に妥結しようと提案したが、米国が公式に拒否した。人件費から妥結する場合、韓国を圧迫するカードが消えることを米国が憂慮したからであるとの分析が出ている。米国が韓国人労働者を「人質」にして防衛費大幅引上げを受け入れれるよう韓国を圧迫する状況だ。

 外交部は今月末まで電話と電子メール、大使館を通じて米国と交渉を続けて無給休職までは行かないよう最善を尽くすとの立場を明らかにしている。しかし、通知された日付の4日前に近づき、期限のない強制無給休職の恐怖が4000人余りの労働者を押さえ付けている。

 在韓米軍韓国人労働組合のソン・ジオ事務局長は「私たちには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡散より無給休職が遥かに恐ろしい」とし、「休業手当でも受給できればこのように途方に暮れることもないだろう」とした。在韓米軍の韓国人労働者は休業手当を始めとする韓国労働法の保護を十分に受けることはできない。彼らの賃金の88%は韓国政府の防衛費分担金から出るが、在韓米軍地位協定(SOFA)労務条項により、彼らの雇用主は韓国政府ではなく在韓米軍だ。労働者は四大保険(国民年金・雇用保険・健康保険・労災保険)もきちんと納めるが、「アメリカ合衆国の軍事的な必要に造反しない限度内で」韓国労働法の規定に従うとのSOFAの規定を在韓米軍が恣意的に解釈できて韓国労働法の保護を受けることができない。労働組合はスト権も制限され、不当解雇と不当懲戒も頻繁に起きていると訴える。

 在韓米軍韓国人労働組合はこれまでの間、米国大使館前でデモを行い「韓国人労働者たちを人質にとる無理な防衛費引上げ要求を中断せよ」を要求してきた。同時に韓国政府も直ちに生計が絶望的になる危機に瀕した4000人余りの労働者に対する対策を用意せねばならないと訴えている。大統領府は26日、国家安全保障会議(NSC)を開いて労働者のための対策準備を講じることになった。しかし政府は雇用主である在韓米軍の代わりに賃金や休業手当を支給するのは難しいと判断していることが分かった。

 労働者たちは、在韓米軍が生命・安全・保健・任務遂行の必要人員を基準に無給休職者を選定したとしているが、同じ事務室で同じ仕事をしている同僚の間でも無給休職者と勤務者に分けられるなど、理解できない選定基準に違和感も大きいと話す。韓国人労働者は在韓米軍の基地内事務、戦闘支援、医療、保健、広報、通訳、電気、ガス、水道など広範囲な分野で働いている。

 在韓米軍労働組合は今回の事態を契機に政府が米国との交渉を通じて制度的改善案も用意することを要求している。労働組合のソン・ジオ事務局長は「政府が韓国人労働者に対する実質的な対策を講じてくれると信じる」とし、「さらに韓国人労働者が防衛費分担金交渉の人質になる事態が再発することなく、在韓米軍が国内法を守るよう不合理なSOFA条項を改善してくれることを要請する」と話した。

パク・ミンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/934563.html

【#ハンギョレ】n番ルーム事件、「犯罪団体組織罪」の適用は可能か?

2020-03-29 03:04:58 | 海外の反応
テレグラムの「n番ルーム」などを通じての性搾取犯罪に対する怒りの世論が沸き立っている。今月24日に回答が完了した「n番ルームの会員すべてを処罰してほしい」など5つの「n番ルーム」に関する大統領府の国民請願には、全国民の10分の1を超える約583万人が同意したほどだ。大統領は厳罰を求め、警察と検察はそれぞれ「デジタル性犯罪特別捜査本部」と「デジタル性犯罪特別捜査TF」を設置した。

 児童・青少年性搾取物犯罪は最近始まったものではない。昨年10月、警察庁は米法務省と協力して、児童性搾取物を共有する「ウェルカムトゥビデオ(W2V)」の捜査結果を発表した。当時、世界各国で310人の利用者が検挙されたが、このうち223人が韓国人であり、運営者も韓国人だった。彼らに対する処罰はどうであったか。運営者はわずか懲役1年6カ月の実刑を言い渡され、利用者はほとんどが罰金または執行猶予処罰を受けた。米国の裁判所がウェルカムトゥビデオを通じて児童性搾取物を所持した男性に懲役10年を言い渡したこととは対照的だ。

 捜査機関と裁判所の「甘い処罰」がデジタル性犯罪を拡大しているという指摘が出ている。実際、「n番ルーム」問題が浮上した後も、検察は「n番ルーム」で児童性搾取物を製作・流布した「ウォッチマン」ことJ被告に懲役3年6カ月を求刑したが、批判世論が高まって、ようやく弁論再開を申立てた。また別のn番ルーム運営者の「ケリー」に対し、裁判所は「真剣に反省しており、捜査に積極的に協力した点を考慮した」として懲役1年を言い渡した。児童・青少年の性保護に関する法律は、児童・青少年利用性搾取物を製作すれば無期または5年以上の懲役刑、営利目的で配布すれば10年以下の懲役に処すると定めているが、現実は法定刑の足先にも及ばない水準だ。

 政府はあたふたとデジタル性犯罪に対する処罰を強化すると発表した。法務部は「n番ルーム」運営者のみならず「会員」も処罰するために「犯罪団体組織罪」(刑法114条)を検討すると明らかにした。刑法114条は「死刑、無期または長期4年以上の懲役に相当する犯罪を目的とする団体または集団を組織、またはこれに加入またはその構成員として活動した者は、その目的である罪に定めた刑で処罰する」と規定している。犯罪団体組織罪が適用されれば、捜査機関は組織員全員に主犯と同じ容疑を適用できる。また、組織員が犯罪を実行しなかったとしても、組織に加入した事実だけで同じ処罰が可能となる。テレグラムの「博士ルーム」運営者の「博士」ことチョ・ジュビン容疑者は、児童・青少年性保護法違反、強制わいせつ、脅迫などの容疑で拘束されたが、「博士ルーム」の会員が映像物の製作に関与していないとしてもチョ容疑者と同じ容疑を適用できることを意味する。そうなれば従犯らの求刑や法定量刑が上がることになる。

 犯罪団体組織罪は、単に数人が集まって犯罪を犯したからといって適用可能になるのではない。最高裁(大法院)の判例によると、多数の構成員▽共同の目的▽時間的な継続性▽最小限の統率体系の、4つの要件を満たせば「犯罪団体」が成立する。核心となるのは「最小限の統率体系」の有無とみられる。ハンギョレの取材で明らかになった博士ルームの運営実態を見ると、博士ルームにはチョ容疑者に従う管理者や職員がいた。彼らはチョ容疑者の命令に従い女性の個人情報を入手し、「奴隷」となった被害女性を訪ねて脅し、会員が出した現金を回収した。法曹界では犯罪団体と見る余地があるという分析が出ている。

 しかし、「会員」を組織員と見なすことができるのかという部分については意見が交錯する。法学専門大学院のある教授は「犯罪団体加入は共同の犯罪を犯す目的でその団体の規約に従うという意味」とし、「映像を見ただけの人なら利用者に過ぎない」と述べた。一方、ある弁護士は「積極的な活動をしなくても、性搾取犯罪が行われているチャットルームであることを知っていた」とし「仮想通貨で決済しなければならないなど、偶然には入れないチャットルームだ。積極的にそのルームに加入した以上、組織員として見ることができる」と主張した。

 専門家らは、「n番ルーム」事件がデジタル性犯罪に対する認識を変える契機にならなければならないと口をそろえる。キム・ジェリョン弁護士(法務法人オンセサン)は「安易に考える人たちに厳しく処罰されるという警戒心を与えなければならない。自分で映像物を所持するだけでなく、自分が望む時に映像に接続できるならそれもやはり性搾取物を所持したと見られるよう、認識を転換するきっかけになれば」と述べた。

ファン・チュンファ法曹チームデスク (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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