マラケシュからオリーブ畑や牧草地を車窓から眺め、アトラス山脈を超えた。山肌は、サボテンの栽培がわずかにあるものの、木も生えない不毛な山肌であった。
昼食をしたレストランにアルガンオイル専門店が併設していた。
アルガンオイルは、モロッコの南西部に自生している樹から採れる種をすりつぶして抽出したオイルである。店の中で、昔ながらの方法でベルベル人が臼ですりつぶしている所を実演していた。モロッコに入ってから、イスラム教の女性は、写真を撮るのに了解を得なければならないので、私はフラストレーションがたまっていた。ここばかりはとカメラを向けた。
妻は、テレビショッピングでアンチエイジング化粧品でアルガンオイルのことを知っていた。妻は、意味ありげに今回の旅行も心置きなく送り出してくれた。感謝!感謝!
先住民族のベルベル人は、敵から守るために要塞(カスパ)化した村に7世紀頃から住んでいる。そのうちの保存状態が良くて景観がよい村が、今なお残っている。それが「アイト・ベン・ハッドゥ」である。日干し煉瓦で作られているため、毎年修復しないといけない。世界遺産を守るっていうことは、大変なことである。村人の大半は、川を挟んだ対岸に移り住んでいるというが、いまだに数件の家族が生活している。その中の様子を見せていただいた。水や電気のない生活は、私には耐えられない。
頂上からの景色は、素晴らしくいい。炭鉱の残渣でできるぼたやまみたいなものがあった。それは、映画ロケで掘りおこした土の山であった。大がかりなロケ設定である。
モロッコは、映画産業が盛んであるという。マラケシュとフェズの大きな旧市街、サハラ砂漠、不毛な地などいろいろな場面を創り出すことができるからだ。
その後、バラで有名なエル・ケラア・ムグナ村、断崖絶壁のトドラ峡谷を通り、カスパ街道を東に進んだ。その途中、バスの中で「カスパの女」を聞き~地の果て アルジェリア~のフレーズに酔い痺れた。