これは、父の大いなる決心、ほむべき犠牲でした。まだ若い姉達に母の代わりに叔母からよい教育を受けて貰うため叔母の住んでいる地に移られたのです。生まれ故郷を去るのは別に辛い感じをしませんでした。子供等は変化ことどと常ならない事を好みます。それゆえ私は喜んでリジュー市に行きました。ちょうど夕刻に叔父の家に着きますと、従姉妹のヨハンナ、マリアの二人が私達を門口に迎えて出てくれました。ああ、その時叔父や叔母が非常に新設に待遇して下さった事を深く感じました。
翌日私等は新しく居住する家に行きました。そこはリジュー市のブイソネ町というところで、近くに「星の庭園」という有名な公園があり、至極閑静なな町です。父の借り入れた家はなかなか広く立派で、高い物見台からは遠くまでも見え、正面には英国風の美しい庭園があり、億のほうには大きな畑があるので若い私の想像力にとっては、何かと都合の良い家でありました。実はこの景色の良い愉快な家は喜び忘れられない家庭的な事柄となりました。ある夫人の家に行っている時には、島流しに遭ったような心持ちになり、母の亡いという悲しい感じがしておりましたが、この家に来てからは心が開いて、何となく生き生きとして嬉しく楽しく微笑むようになりました。
まず朝、目が覚めますと姉達が来て、私を色々と慰めいたわり、皆一緒に朝の祈祷をして後、私はポリナのところに行って読書の稽古をしておりました。私は一番先に一人で読む事が出来たのは「天国」という文字であった事をよく記憶しております。この読書が済むと直ぐに父の書斎に参るのですが、成績の良かった時にこれを父に告げる時の愉快さは譬える事が出来ないくらいでありました。
また毎日午後から父に連れられて近辺を散歩し、今日は東の天主堂、明日は西の聖堂というふうに、所々の天主堂に詣って聖体訪問をいたしました。こうしてある日「カルメル会」の聖堂に詣りました。ところがその時父は童貞達の居られる鉄格子の結界を指して「小さき女王よ(父は私をこう呼びます)、この大きな鉄格子を御覧なさい、この向こうにおられるは、一生涯を天主様に献げて、祈祷苦業に身を委ねておられる尊い童貞の方々です」と教えてくれましたが、その時に私は、自分も九年の後にはこのような童貞の身分になる事も、またこの愛せられた修道院の中で、このように多大の恩寵を受ける等という事を、少しも思い浮かびませんでした。(続く)
読んでくださってありがとうございます。yui
翌日私等は新しく居住する家に行きました。そこはリジュー市のブイソネ町というところで、近くに「星の庭園」という有名な公園があり、至極閑静なな町です。父の借り入れた家はなかなか広く立派で、高い物見台からは遠くまでも見え、正面には英国風の美しい庭園があり、億のほうには大きな畑があるので若い私の想像力にとっては、何かと都合の良い家でありました。実はこの景色の良い愉快な家は喜び忘れられない家庭的な事柄となりました。ある夫人の家に行っている時には、島流しに遭ったような心持ちになり、母の亡いという悲しい感じがしておりましたが、この家に来てからは心が開いて、何となく生き生きとして嬉しく楽しく微笑むようになりました。
まず朝、目が覚めますと姉達が来て、私を色々と慰めいたわり、皆一緒に朝の祈祷をして後、私はポリナのところに行って読書の稽古をしておりました。私は一番先に一人で読む事が出来たのは「天国」という文字であった事をよく記憶しております。この読書が済むと直ぐに父の書斎に参るのですが、成績の良かった時にこれを父に告げる時の愉快さは譬える事が出来ないくらいでありました。
また毎日午後から父に連れられて近辺を散歩し、今日は東の天主堂、明日は西の聖堂というふうに、所々の天主堂に詣って聖体訪問をいたしました。こうしてある日「カルメル会」の聖堂に詣りました。ところがその時父は童貞達の居られる鉄格子の結界を指して「小さき女王よ(父は私をこう呼びます)、この大きな鉄格子を御覧なさい、この向こうにおられるは、一生涯を天主様に献げて、祈祷苦業に身を委ねておられる尊い童貞の方々です」と教えてくれましたが、その時に私は、自分も九年の後にはこのような童貞の身分になる事も、またこの愛せられた修道院の中で、このように多大の恩寵を受ける等という事を、少しも思い浮かびませんでした。(続く)
読んでくださってありがとうございます。yui