私の母の病気の有様については、詳しい事柄までも記憶し、殊にこの世を離れる前の数週間の事は一層よく記憶しております。
この時セリナと私はちょうど島流しにでもなったように、毎朝ある夫人に連れられてその家で一日を過ごしておりました。ある朝、夫人はいつもよりは早く私等を迎えに来られたので、祈祷を為す時間もなく自宅を出ました。ところが途中でセリナは私に「まだ祈祷が済んでいないという事を夫人に告げましょうか」と申しましたので「もちろん、それを言わねばなりません」と答えました。それで夫人の家に着くと、セリナは少し遠慮するような態度で、恐る恐る夫人にその事を申しますと「それならこの部屋で祈祷をしなさい」と言うので、二人を広い部屋の中に入れ、自分はそのまま出て行きました。この夫人の仕打ちがなんとなく物足りない心地がして、セリナも私も少し呆気に取られ、お互いに顔を見合わせました。その時私は「ああ、これはお母さんの仕方と違う、お母さんは何時も私等に祈りをさせてくださったのに……」と申しました。(続く)
読んでくださってありがとうございます。yui
この時セリナと私はちょうど島流しにでもなったように、毎朝ある夫人に連れられてその家で一日を過ごしておりました。ある朝、夫人はいつもよりは早く私等を迎えに来られたので、祈祷を為す時間もなく自宅を出ました。ところが途中でセリナは私に「まだ祈祷が済んでいないという事を夫人に告げましょうか」と申しましたので「もちろん、それを言わねばなりません」と答えました。それで夫人の家に着くと、セリナは少し遠慮するような態度で、恐る恐る夫人にその事を申しますと「それならこの部屋で祈祷をしなさい」と言うので、二人を広い部屋の中に入れ、自分はそのまま出て行きました。この夫人の仕打ちがなんとなく物足りない心地がして、セリナも私も少し呆気に取られ、お互いに顔を見合わせました。その時私は「ああ、これはお母さんの仕方と違う、お母さんは何時も私等に祈りをさせてくださったのに……」と申しました。(続く)
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