職業柄か、本好きの人が周りに多く、お陰様で話題の最新刊などはもちろんのこと、自分では120%手に取ることのない隠れた名作なんかも教えてもらうことが多い。
私が生きている間に時代は移り変わったけど、こんなに活字離れが進む時代の中でも、本をたくさん知ってる人って素敵。
最近勧められるがままに読んで、当初の期待度(2%くらい)を裏切って逆に私が周りに勧めてしまっているのが、「エンジェル・フライト」(ノンフィクション)。
なんと、うちの図書館でいうと、「ビジネスコーナー」の「葬儀会社」コーナーに並んでおる
せめてカウンター近くの話題書コーナ-なんかに並べてあれば手にとる人もいるかもしれないけど(残念ながら学生はそれすらせん)、2階まで行ってわざわざその本を手にする人もなかなかいないと思う。
もし、海外旅行中に自分が命を落としたら。
そのあと、自分の遺体がどんな扱いを受けるのか。
なんて、考えたことあっただろうか。私はまずない。
その国に住んでいるなら、知り合いに聞いたり、それなりに知識もあったりすることもあるんだろうけど、
この本を読むと、気軽な気持ちで海外旅行へ行っていた若かりし頃の自分にぞっとすることになりまっせ・・・
当たり前だけど、生物は死んでしまうと、後は腐敗していく。
遠い国で命を落とした私の遺体を、日本の我が家まで、「眠っているかのようです」と言われるくらい綺麗で安らかな状態で、
「どうか見てやって下さい」
と夫が通夜に来てくれた人に言えるくらいのベストな状態で運んでもらえることが、どれだけ大変で、しかも運のいいことかを、知ってしまう。
だいたい、海外で私が死ぬシチュエーションとなると、まず事故。
すでに元の私でなくなっているひどい状態である可能性が高い私を、どこの誰がどんな風にして我が家まで帰らせてくれるのか。
遺体を処置するのは、その国の人間。
人気のある職業とは考えにくいから、ひょっとしたら中には、仕事に誇りを持たずに処置に携わる人もいると考えられる。
遺体搬送に携わる安心な業者がもともと一握りしかいないような、とあるアジアの国だとしたら、
言葉が通じない状態で、どのようなやりとりをして、どのような手続きをふんだらまともな遺体搬送をしてもらえるのか。
高いお金をぼったくって、遺体の処置をロクにされず、下手したら臓器が減った状態で、日本に戻ってきた時には腐って見る影もなくなったような遺体を目の当たりにして、遺族は2度目の心の傷を負うことになるらしい。
最後の姿って、家族には一生目にやきつくものだから・・・。
遺体がつらそうだったら、遺族は一生苦しみ続けることになるんだって・・・。
この本は、日本で唯一の海外の遺体の搬送に携わる会社を立ち上げた女性社長を取材したもの。
なんと、1社しかないってビックリ!!しかも、数人しかいない家族経営の会社だし。
(みんなすぐに辞めていくらしい・・・)
ニュースに出てくるような海外での日本人の訃報の影には必ず彼女の活躍があるそうだ。
「眠っているかのような安らかな顔でした」
故人にそう思ってもらえないと、故人も旅立つのがつらいだろうな・・・。