「さざなみのよる/木皿泉」という小説(短編集)を今借りている。(2回目)
ルイボスティー飲むべし
もともと人間なんて思い通りにならない。それがわかったのは病気になってからだ。あの頃の(荒れ狂った)自分に教えてやりたい。あんたは、自分で考えていたのより百倍幸せだったんだよって。
主人公ナスミ43歳主婦。竹を割ったような性格で、夫・日出男は反対におとなしいタイプの人。
入院しているナスミがふと回想するくだりがあって・・・
いつだったか、日出男がメンチカツを魚焼きグリルで温めなおしていて、うっかり焦がしてしまったことで大ゲンカになった。ナスミは、冷たいままでよかったのによけいなことをするからだ、と怒り狂った。なんで電子レンジでやらないのよ。それじゃあカリッとならんでしょう。何がカリッよ!あんた、バカじゃないの、焦げたものは発癌物質なんだからね、んなもん、絶対に食べないからね、と本当にナスミは口にしなかった。日出男は、温かいの食べさせてあげたかっただけじゃないかと、こちらも怒りがおさまらないようすで、真っ黒になったメンチカツを意地になって全部食べた。なのに、発癌したのは自分だ。あれ、なんだったの、とおかしくて笑ってしまう。
自分が死に近づいた時に思い出すことって、実はこんなばかばかしい喧嘩の1シーンで、そういうのが本当はかけがえのない思い出なのかもしれないことを予感させてくれる。
その他の章は、ナスミの周りにいた人たちの物語。
姉、夫(日出男)、同僚他、幼い頃のナスミを誘拐しようとした男の物語まで。
本屋大賞とれるかな?