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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

若手演出家コンクール2010最終審査 錫村聡『水商売』

2011-03-02 | 舞台

*錫村聡(手作り工房錫村)作・演出 公式サイトはこちら 下北沢「劇」小劇場 6日まで
 96名の応募から第1次、第2次審査を経て最終選考の残った4名の演出家が、各々1時間以内の作品を発表し、最終日に公開審査を行って最優秀賞を決めるもの。

 「場内大変暗いのでお気をつけください」とアナウンスがあり、入ってみるとほんとうに暗い。開演まで少し時間があったが折り込みチラシを読むのをあきらめたくらいである。舞台中央に水道の蛇口があり、傍らに男がひとり客席に背を向けて座っている。段ボール箱が積み上げられペットボトルが散乱し、舞台全面に半端なカーテンのような黒い幕がかかっていて、全体が非常に狭く見える。下手から男(錫村聡)が飛び出し、客席に向かって一方的に大変な勢いでしゃべりだす。

☆4作品すべて観劇すると「観客賞」の投票権利が与えられます。『水商売』は5日土曜日に2度めの上演があります。これからご覧になる方はここから先はお読みくださらないほうがよいかもしれません☆

 

 およそ50分の上演中、この作者は何を描きたいのか、どうみてほしいと思っているのかがつかめず大変居心地の悪い思いをした。終演後に審査員(全員ではない)と錫村本人も加わってのトークが催され、そのやりとりを聞いてようやくつかめそうなところが多少みえてきた。男は浄水器のセールスマンであり、前半は出会いカフェ?で指名した女(小林そら)と過ごす場面、後半は彼がひとりの主婦(小林が兼ねる)に浄水器を売りつけるむちゃくちゃなセールストークの場面で終わる。

 トークによれば、錫村氏はいろいろな商品の実演販売の仕事をしているそうである。立派なプロのお仕事であり、一方で「素人の女性と2時間(だったか?)しゃべり放題」というサロンに通いつづけた経験談も披露され、それらが今回の『水商売』にどう活きているのかが、とうとうひと言も発しない蛇口の傍らに座り続ける男の存在といい、やはりよくわからないのであった。前半は素人女性が出会い系の指名料(彼女は「心付け」と言っていたが)だけでなく、自分がサイドビジネスにしている化粧品やサプリを男に売りつけようとする。お金を介して男とつきあうことにもサイドビジネスにどちらも半分素人の垢ぬけなさと厚かましさを描き、後半は詐欺のプロがうんざりするようなセールストークでまんまと浄水器の契約をさせてしまう様子で、だまされる側もまただます行為をしていることが強烈に感じられるのは確かなのだが、舞台にのせて客席にみせるものとしてより完成度を高めるために、必要なものと不要なものをもっと突きつめて吟味するべきではないだろうか。

 たとえば蛇口かたわらの男に対して審査員のおひとりが、「太田省吾の無言劇を連想したが、どこにも通じてないところがおもしろかった」と苦笑しつつも好意に受けとめていらしたが自分は納得がいかないし、前半女に『ハナミズキ』をフルコーラス歌わせた場面についても腑に落ちない。
 外は真冬に戻ったような寒風。若手演出家コンクール、まずは第1夜終了である。

 

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