一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

円安の背景に米金利上昇と高市氏当選の思惑、27日の結果次第で市場変動も

2024-09-26 14:10:51 | 経済

 26日の東京外為市場でドル/円が一時、145円台に乗せた。ドル高・円安が進んだ背景には、2025年末にフェデラルファンドレート(FF金利)が3%まで低下するというマーケットの織り込みが大幅すぎるのではないかとの見方から、25日のNY市場で米長期金利が上昇したことがある。

 また、一部の参加者は自民党総裁選(27日投開票)で高市早苗・経済安全保障相が決選投票を経て当選するとみて、円安進展のポジションを構築し始めているとの見方も出ている。このため石破茂・元幹事長が当選した場合には、円売りの理由がはく落してドル安・円高方向に戻ると予想する声もある。自民党総裁選の結果によって27日の東京市場で大きな変動が生じる可能性もありそうだ。

 

 <市場の米利下げ織り込み、行き過ぎの指摘 ボウマンFRB理事発言も材料に>

 145円台での取引は今月4日以来、約3週間ぶり。25日のNY市場で、10年米国債利回りは4.9ベーシスポイント(bp)上昇の3.784%で取引を終えた。

 米長期金利が上昇した理由として、マーケットが現状で織り込んでいる大幅な利下げ幅に対し、一部で疑念が生じていることがある。マーケットは2024年中にさらに75bpの利下げを織り込み、2025年末には2.75%ー3.00まで利下げするとのイールドカーブ(金利曲線)を形成している。

 しかし、今月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOМC)で0.50%の利下げに反対したボウマン米連邦準備理事会(FRB)理事は24日の講演で、インフレの主要指標はFRBが目標とする2%をなお「不快なほど」上回っていると指摘。インフレの上振れリスクは依然として顕著であるとの見解を示していた。

 ボウマン理事の指摘に対して、市場参加者の中にも最高値圏で推移する米株価や堅調な経済指標、米財政悪化への格付け会社の懸念などを材料に、米長期金利が上がりだすと警戒している向きも少しずつ増えており、そうした思惑が米長期金利の上昇に結びついたと言える。

 米長期金利がこのまま上がり続けるのか、短期的には26日発表の新規失業保険申請件数や27日の個人消費支出(PCE)価格指数が注目を集めそうだ。

 

 <市場の一部に高市氏優勢の思惑、円売りポジション形勢の材料に>

 日本の個人投資家の中には、0.5%の米利下げやその後の継続利下げが予想される中で、どうしてドル高・円安が進むのか疑問に思っている向きがあるようだ。だが、すでに25年末には3%までFF金利が低下することを織り込んでいる前提でドル/円が143円台で推移し、その織り込みが過剰であるとして米長期金利が上昇すれば、ドル/円がドル高・円安方向で反応するのは自然な流れと説明できる。

 複数の市場関係者によると、26日の円安の動きには、米長期金利の上昇のほかにもう1つの理由があったという。それは、自民党総裁選で高市氏が当選するのではないかとの思惑が一部の市場参加者の中で高まっていることが影響しているという。

 多くの市場参加者は9人の候補が乱立した今回の総裁選の勝利者を織り込めずにいたが、25日付読売新聞朝刊が1面で、自民党総裁選の情勢分析を掲載し、今のところ石破氏が126票、高市氏が125票を獲得する状況で、114票を固めた小泉進次郎・元環境相を含めた3人のうちの2人が決選投票に残るとの見通しを示した。

 複数の市場関係者によると、あくまで報道ベースでの情報をもとにしているが、石破氏と高市氏の決選投票になった場合、国会議員の人気度で劣勢の石破氏が高市氏との戦いで敗れ、高市氏が当選するとの期待感が足元で盛り上がっているという。

 高市氏は日銀による今以上の金融引き締め(利上げ)に反対しており、当選すればドル高・円安が進むとの思惑が形成されつつある。また、円安を好感して日経平均株価も上がりやすい地合いになるとの見通しが出ている。

 

 <石破氏、岸田氏の経済政策継承を表明>

 ただ、27日の投開票の結果が、一部の市場参加者の思惑通りに展開するとは限らない。読売の情勢調査によると、1回目の投票で獲得する党員・党友票は石破氏が98票、高市氏が94票となっている。もし、党員・党友票で石破氏が事前の予想を上回って多くの支持を獲得した場合、衆院選が間近に迫っている中で党員・党友票のトレンドを重視した国会議員が続出し、決選投票でも石破氏が高市氏を引き離して当選するケースも考えられる。

 また、石破氏は25日の会見で、岸田文雄首相が進めてきた「成長と分配の好循環」を「さらに力強く、確実なものにしていく」と述べ、岸田首相の経済政策を継承する意思を表明した。決選投票をにらんで岸田首相の影響力が及びやすい旧宏池会(岸田派)に支持を求めたかたちで、「議員票で劣勢」という固定イメージが崩壊する可能性もある。

 

 <石破新総裁なら短期的に円高も>

 いずれにしても高市氏が当選すれば、短期的に円安が進んで株高になる可能性がある一方、石破総裁の登場なら高市氏を期待して作られた円安ポジションの手仕舞いがあって、円高方向に振れると予想する。

 ただ、中長期的にドル/円と日本株がどのように振れるのかは、新政権のマクロ経済政策がどのように打ち出されるのかを待ってからになるだろう。

 当欄で何度も指摘したように、そこで重要な判断の材料になるのは、低い潜在成長率を押し上げていくための具体的な成長戦略の内容になる。新たな情報発信が加わらないと、新政権へのご祝儀相場の賞味期限は短期化することになるだろう。

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