アンジェリくんの死において
今まで幾度とお客さまワンちゃんの死に対面して来ただろう
何故こんなに深く悲しむんだろうと思われる方もいらっしゃるでしょう
アンジェリくんを悼む気持ちで
この悲しみを忘れないためにも、これまでの経緯を記したいと思います
長くなりますのでご興味のない方はどうぞ、スルーしてください
アンジェリくんが『おんりぃWAN』のお客さまになった時
既にご高齢の飼い主さん(以後お母さんと書きます)と二人暮らしでした
お母さんは脚が不自由で、お散歩もろくにさせてあげられないことをこぼしていました
「アンジェリが先に逝くか私が先に逝くか...」
「誰かもらってくれんかねぇ...」が口癖でもありました
ご親戚・ご親類は動物が好きではないとのこと
お母さんに万が一のことが有ったら、その時は私が引き取らせてもらおうと決めていました
義務心ではなく、私はアンジェリくんに幸せな犬生を全うさせてあげたいと思っていました
その気持ちをお母さんには決して言いませんでしたよ
安心して、生きる気力をなくされると困りますのでね
今月7日夜、お母さんが急病で入院され、回復までお預かりすることになりました
繊細で、気を遣う性質のアンジェリくんに寛いでもらえるよう
長期になるかも知れないので、なるべく家にいる時と近い環境を設置しました
筋肉が落ちてしまった後肢の為に1日3~4回、短い距離・時間をお散歩しました
家から持って来たごはんを食べないので、栄養価が高く消化吸収の良いごはんを適宜あげました
数ヶ月前から時々
「アンジェリの様子がおかしいんです」
「アンジェリの後ろ脚が立たなく、歩けなくなりました」
「アンジェリが起き上がらず、ハァハァ荒い息をしてるんです」
「朝から水も飲まず、ごはんも食べないんです」等とお母さんから電話が入っていました
都度駆け付け、すぐに行けない時は後で様子を見に行っていました
いつも私が行くと何んとかなっていました
3月後半から今月初めにかけては電話がかかる頻度が高くなり
多忙で余裕のない時には「私は獣医さんじゃないの!」と冷たい言葉を返したことも有りました
数日後、お母さんが入院したと聞き、私の心無い言葉に傷ついて具合が悪くなったのかと自己嫌悪
謝ろうと翌日病院へ、話してみると私の考え過ぎだったようでした
8日からウチの子になった(つもり)アンジェリくん
確かに後肢がふらついて崩れ落ちることも有りましたが、すぐに自力で立ち上がっていました
毎日のお散歩を本人も楽しみに、ハーネスを持つとお尻尾を振って喜んでいました
見る見る後肢は踏ん張って逞しくなり
お尻尾を左右に振りながら闊歩する姿は私をワクワクさせてくれました
食欲も有り、お肉のチャンクやササミをほぐしたのは特に大好きで
その食べっぷりも私をワクワクさせてくれました
ウチに来る前よりも元気にしてお返ししたい! 出来ると思っていました
14日午後2時過ぎ
ふと見ると四肢がピーンと伸び、小刻みに震えています
次第に震えは大きくなり、泡になったよだれをこぼし痙攣を始めました
初めて見る状態に焦りましたが、こんな時こそ落ち着いて... 知識を引っ張り出しました
てんかん?? 発作の時にはさすったり抱き上げてはいけない、静観する
ものすごく長く感じましたが2分程度、治まった後は何もなかったのようにしています
15時の愛犬病院の午後からの診察時間になるのを待ちかね、電話をして指示を仰ぎました
「てんかんか他の疾病か、発作が出ている時でなければ判断がつかないもの
1日に2回以上出るようであれば連れて来てください
発作が出たら何時何分~何分間と記録してください
見てる方は長く感じますが30秒から1分程度が殆どで、それで死ぬことは9割以上有りません
寝てる時はカウントしなくていいです」とのことでした
以降、発作はなくお散歩に食欲旺盛、元気いっぱいでした
18日15:10 1分強 発作→記録
すぐに治まり、時間を置いてお散歩・食欲とも普段通りでした
17時過ぎ「今帰りました、お世話になりました」お母さんから受電
退院当日は養生した方がいいだろうと思い
発作のことも気になっていたので翌日お返しすることになりました
何分ご高齢(88歳)なので、時々発作が出ること・記録することをきちんとご理解頂こうと訪問しました
お身体の具合のこと、発作が出た時の対処等を話し終わり帰ろうとした頃
「アンジェリに会いたい」
「アンジェリに会えることを楽しみに帰って来たんです」とお母さんが仰いました
その気持ちは痛いほど分かるので、それなら今から連れて来ますということになりました
「お散歩はご自分でしますか?私がさせてから来ましょうか??」
させてくださいとのことだったのですぐに帰り、滞在最後のお散歩をしました
私は完全に愛情が移り、返したくない気持ちでいっぱいでしたがアンジェリはお母さんの犬です
「アンちゃぁーん、おうち帰れるよ~」
「元気でおるんやで~、お母さんがくれるごはん、いっぱい食べるんやで~」
「25日にはまたキレイキレイしよなー、お爪も切るよ~」
お尻尾フリフリ楽しそうに歩く後ろ姿にいっぱい話しかけました
いつもより少しだけ長めにお散歩し、晩ごはんをあげようか迷いましたが
お母さんの手であげた方がいいと判断、身の回り品を纏め連れて行きました
いつもリュックの蓋を開けると元気よく飛び出し、お母さんの元に駆け寄るアンジェリくん
感動のご対面を見られると、私もお母さんも期待していました
ところが、蓋を開けても飛び出すどころか動こうともしません
10泊11日ぶり→人間の約4倍の速さで生きる小型犬にとっては約40日ぶりのご対面
一徹を12日間ペットホテルに預けた時 を思い出し、時間が経てば勘が戻るだろうと思っていました
夜、お母さんから受電
アンジェリが発作を起こし、治まりましたが怖くて今後よう見ないとのことでした
記録して、治まっているのならもう休むように促しました
私はいつかかっても出られるよう、子機を持ち上がり枕元に置いて就寝しました
19日 朝から電話がないので元気にしてるのかと思っていましたが気になるので11時頃訪問
そこには変わり果てたアンジェリくんが横たわっていました
全身脱力し目はうつろ、舌が垂れ出て床には溜まるほどのよだれが出ています
前日の夕方まで、あんなに元気に歩いていたのに... 何が起きたの?なんで??全く呑み込めない
前夜、アンジェリくんは自分の脚で歩けなかったそうです
お母さんは「この子はもうダメです... もう、楽に逝かせてやりたい...」
何を言ってるのっ、お母さんっ!!!
大事な大事なアンジェリくんをこのまんま... とんでもない!そんなことさせない!!
お母さんは、元気になったところでお散歩もさせてやれない... 前途を悲観しています
「私に出来る限りのことをさせてください
そして、もし元気になれたら、アンジェリくんを私にください、大事にします」私は言いました
お母さんは泣きながら「お願いします」と仰いました
一旦戻り、片付けてしまったサークルをすぐに組立てお迎えに行きました
運の悪いことに日曜日
前日からお泊りのワンちゃんがいて夕方のお返し、留守には出来ません
しょっちゅうサークルを覗き込み、状態を確認し続けました
目を開けることは有りませんでしたが、痙攣することもなく呼吸も安定していました
歩いてる夢を見てるのかな?
横たわったままずっと四肢が歩様で動き続けています
私は、翌日愛犬病院に行けばまた元気になれると信じていました
夜さえもってくれれば.....
20:45 急に可愛い声でキャンキャンはしゃいだように声をあげました
ビックリして駆け寄ると
可愛い瞳は私を捉えお尻尾を左右に振って四肢をバタバタお布団の上を動き回っています
「やったー!帰って来たーっ!!アンジェリお帰りーっ!!!」
私の歓喜の声にキャンキャンお返事するように声をあげます
嬉しくて嬉しくて、お返事していることを確かめるように
「明日病院行こーねーっ♪」キャンキャンキャン...
「元気になっておいしいごはん食べよーねーっ」キャンキャンキャン...
「あーんじぇーりくぅーん♪」キャンキャンキャン...
「あーいしてるよぉーっ」キャンキャンキャン...
偶然かもと思い、タイミングを変えて声をかけるとやっぱりお返事してくれます
もう嬉しくて嬉しくて、何回も何回も繰り返しました
よし、明日病院へ行ける! 明日、とにかく明日!!
21:50 あれ?
静かですが、バタバタもがくように四肢を動かしています、目はまた閉じていました
さっきはしゃぎ過ぎて疲れたのかな??
足先・肉球の温度が下がっているのが気になる
22:36 か細い声でキャーン... キャ... キャーン...
慌てて駆け寄ると殆ど動かず、足先は冷たい
すぐに抱き上げ体を擦りながら「アンちゃん!」何度も声をかけた
体のどこにも力はなくグッタリ
そして小さな呼吸を2回して
2回目の息を吐いた時、ずっと閉じていた目を開け2度と動かなくなりました
22:37 死去
私は認めたくなくうろたえました
大声で泣きわめきました
右腕の中のアンジェリに「帰って来い」「ウソや」「アンちゃん」「アンジェリ」声をかけ続けました
愛犬病院で教えてもらった心臓マッサージもしてみました
でも、どうやってもアンジェリは帰って来てくれませんでした
どのくらいアンジェリを抱いていたのか...
気が付いた時にはもう冷たくなり、硬直していました
20日6:25 お母さんから受電
母:「今日、高松の病院へ行くんでしょう...」
私:「お母さん...」
母:「はい、あの、今日...」
私:「お母さん... あの... あのう...」
母:「どしたの...... あ......」
私:「アンジェリくん... 昨夜、10:37に.....」
母:「死んだの?」
私:「...........はい......今からアンジェリくんと行っていいですか」
母:「いいですよ、待ってるよ」
6:48 お母さん宅に到着
玄関で抱き合って暫し号泣
「私が死なせてしまいました、ごめんなさい」謝り続ける私に
何を言ってるの、寿命だったんだと
朝電話したのは「楽にしてやって」と言いたかったそうです
そして何度も「アンジェリを大事にしてくれてありがとう」「幸せな子だった」と仰ってくださいました
火葬場の予約が13時過ぎだったので
箱・お花・真っ白なタオル・大好きだったお肉のチャンク・牛の干し肉を用意して迎えに行きました
箱に入れる前に暫く抱き話しかけ、頬にキスして鼻と鼻をくっつけてお別れしました
火葬場までずっと話しかけていました
アンちゃん... どうして急いで逝ってしまったの?
オバチャン一緒に病院行きたかったよ~
これから楽しいこといっぱい有ったのに
おいしいものもいーっぱい食べられたのに
オバチャン本当に愛してたんよ、アンちゃん知ってたぁ?
もっと手こずらせて欲しかったよ
アンちゃんがもし寝たきりになってもオムツになっても、お世話させてもらいたかったー
最期の最期まで気ぃ遣ってさっさと逝っちゃって... オバチャン寂しいよ~
お骨は拾えるものは全部拾いました
歯・脊髄・肋骨・大腿骨・顎・肩甲骨・頭蓋骨.... どれもこれも愛しくて
特に歯は、真っ白で美しかったあの可愛い顔が浮かんで来て...
涙って枯れることないんですね
ちょっと前にモモタローくんで出し切ったと思っていたのですがとめどなく涌いてきます
様々な考え・解釈・悔い・憶測があとからあとから浮かんできます
もっとこうしてあげれば良かった
もっと... もっと.....
でもひとつだけ、孤独に逝くことだけは避けられてよかった
私の腕の中で旅立って行ったので、そこだけは
こんな悲しいこと、52年の人生で初めてでした
恐らくあと2回は経験しなくちゃならないです、ずーっと先にしてね
いやだなぁぁぁ
その時もやっぱり、腕の中で旅立たせてあげたいです