ランド・オブ・ザ・デッド

原題：LAND OF THE DEAD

オープニングタイトルが始まるとそこにモノクロ映像に写る死者のメイクアップにまず背筋が凍る。ジョージ・Ａ・ロメロ得意のいきなりその状況から物語は入っていくので最初から恐怖を味わえる。ある意味、回りくどさが無い分個人的には早くゾンビが見られてワクワクした。

今回のこの映画に関しては以前のような恐怖は味わえなかった。「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生」(68)「ゾンビ」(78)「死霊のえじき」(85)と世に新しいモンスターを送り出して来たロメロにして過去のようには行かなかった。所詮歳を取った大監督黒澤明的な感が見えた。その“世界の黒澤”と言えど彼の作品は個人的に「七人の侍」から「赤ひげ」までの第二期黄金期で終わっているように思う。その後の「影武者」「乱」では多くの役者が彼と一緒に仕事が出来る喜びのようなものがあってこぞって大物俳優たちがオーデションを受けたものでした。それと同じで今回の「ランド・オブ・ザ・デッド」のジョージ・Ａ・ロメロの元にも出演を希望したい俳優たちが集まって来たようです。ただ過去の名声による大監督が新作を撮るとそれが駄作でも昔の思い出話に花が咲くという、一種のお祭り的なイベントと言えるでしょう。

ストーリーは近未来的で荒れ果てたスラム街とその中心にひときわ輝くひとつの高層ビル、そのコントラストがとてもよく映し出されていた、ゾンビの造型はやや大人しめで黒人のガソリンスタンドの主人のゾンビ“ビッグダディ”は大したメイクはしていなかった。やはり“ゾンビ映画”はどれだけグロテスクなメイクでこのモンスターを表現してくれるんだろうという期待がかなり大きいため、チョット期待外れでした。造型でいえば「バタリアン」「デモンズ」「ビヨンド」とこの辺りのゾンビのほうが相当グロかったと思う。やはり元は「フランケンシュタイン」のメイクを参考にしたというだけに、せめてそれ以上のメイクはして欲しかったです。でも「ドーン・オブ・ザ・デッド」のときのように走らせなかったことが唯一の救い。

これは後で知ったのですが面白かったのはナタを持ったゾンビ役でトム・サヴィーニが出演していたこと。彼は元々は特殊メイクアップアーティストではあるが、結構映画に俳優として出演しているんですね。エンドクレジットで名前を発見しなかったらまず気が付かなかったです。

もしも、またジョージ・Ａ・ロメロが“ゾンビ”映画を撮るのなら…また観に行くんだろうな～