『tokotoko』

Fortune comes in at the merry gate.

『六月大歌舞伎/口上』

2012-06-13 | 立ち直っていく、という時に。
一部『小栗栖の長兵衛』のあと、幕間30分の後、

口上(昼の部/12:26~12:51)

初代 市川猿翁 三代目 市川段四郎 五十回忌追善

二代目市川猿翁
四代目市川猿之助 襲名披露
九代目市川中車
    
五代目市川團子 初舞台



口上の前に、福山雅治さんから寄贈された祝い幕が引かれました。

市川猿之助(亀治郎)さんは、
高校時代から福山雅治さんが担当するオールナイトニッポン二部のヘビーリスナーで、
<市川亀治郎>の名前でハガキを投稿したこともあるそうです。

その福山さんから寄贈された祝い幕。嬉しいお話ですね。

デザイン案も福山さんで、新猿之助さんと話し合って決定したとのことですが、
いくつもの隈取りが重なっていてます。

重ねたのは、新猿之助さんが持つ初代猿翁「黒塚」「小鍛冶」「連獅子」
三代目段四郎「連獅子」八代目中車「火焔獅子」

そして新猿之助さん自身の「蜘蛛絲梓弦」「鬼揃紅葉狩」

歴史を重ねてきた、それぞれへの思いを感じる隈取りを使っての新しい発想が、
まさしく、新猿之助さんにピッタリの祝い幕になったと思います。素敵でした。



また、福山さんはポスターの撮影も行っています。
東京の街を背に空を飛んでいるこの斬新な写真。面白いです。



市川猿之助さんと福山さん、
そして今回中車を襲名した香川照之さんは、龍馬伝で共演しています。

 



初代市川猿翁と三代目市川段四郎の五十回忌を機に、
二代目猿翁、四代目猿之助、九代目中車、そして五代目團子が誕生。



初代市川猿翁(1888年5月10日~1963年6月12日)
二代目市川猿之助を53年間つとめる。

欧米に留学経験があり、新作や翻訳物に取り組んだり、ソ連・中国公演、新派との共演など、
新しいことに、次々挑んでいったひと。その一方で、埋もれていた古典の復活上演なども果たす。

新作喜劇『小栗栖の長兵衛』『研辰の討たれ』『膝栗毛』の初演。
『小栗栖の長兵衛』は、今回曾孫の中車さんが、襲名披露で上演しています。

日本俳優協会の初代会長。





三代目市川段四郎(1908年10月5日~1963年11月18日)
三代目市川猿之助(二代目市川猿翁)を、息子が襲名し(63年5月)
父の初代市川猿翁が亡くなった(63年6月)直後の、63年11月、55才で亡くなる。

奥様は女優の高杉早苗さん。



幕が開き、「口上」がはじまります。

最初に藤十郎さんが、五十回忌追善の話、
初代猿翁、三代目段四郎の思い出を語り、今回の襲名について話されました。

次に、段四郎さんお願いしますと言われて、段四郎さんが口上を述べられました。

上手側には門閥系の役者が並んでいて、順番に口上を述べていかれます。

印象に残ったのは、弥十郎さんの、
「猿之助さんが初お目見えで安徳天皇をやったとき、抱えている武士の役で腕が痺れた」というお話や、

寿猿さんの「猿之助、段四郎襲名(50年前)にも列席した」という話。

50年前すでに舞台に・・・すごすぎる

下手側は門弟さん達。こちらも次々に口上が続きます。

そして、最後に襲名する役者たちの番になって、最初が新猿之助さん。



「・・・うれしさ百パーセントです。歌舞伎のために命を捨てる覚悟です・・・」と、
張りのある、きれいな声で、述べられました。

数日前までは、亀治郎という名前に対する寂しさと、襲名の嬉しさと、あとわからない、
という発言をされていたので、この言葉は、この名前を背負っての大きな覚悟からだと思いました。

中車さんは「歌舞伎の舞台に初めてお目見え致しまする私は、生涯をかけまして精進し、
九代目を名乗らせていただきます責任を果たして参りたいと存じております。」と、

鬼気迫る感じで汗をにじませ、涙を滲ませるかんじで話されます。



そして、口上に列座した役者の中で、一番堂々としていたのが新團子さんで、
「猿翁のおじいさまより、ずっとずっと、立派な俳優になることが私の夢でございます」と、
ものすごく明瞭な口跡で話していました。

この、あまりに堂々とした姿、雰囲気をみて、
この子には、きっちり澤瀉屋の血が流れている・・・と感じました。



最後に、藤十郎さんが呼びかけて後ろの襖が開き、台に乗った新猿翁さんの登場です。

実際劇場で生の声を聞き、その瞳を見ると、
大病をしながらそれでもこの舞台に立つ強い思いのようなものを感じました。

鋭い視線が、上手下手、二階三階と客席中に投げかけられ、

それこそが、猿之助さんや中車さん、團子さん、
ひいては、澤瀉屋をよろしくというような、思念のようなものを受けました。



ここに至るまでに、様々なことがあり、様々なひとの思いがあったことと思います。

ただ、芸を見ると、そういうことで、つまらない発言をくり返ししている人たちの、
その口や、文字が、ものすごく薄っぺらく思えました。

一緒に行った人がみせてくれた猿之助さんの特集が組まれていた文藝春秋七月号に、
下記のような文章がありました。

引用します。

『俳優、スタッフ、お客さん。そしてマスコミ。
 俳優として名を成しているだけに鵜の目、鷹の目で狙われる。
 何を言っても揚げ足を取られるでしょう。
 ですから潰されないように、と思っています。
 勝手に潰れていくのはしょうがない。
 それは自分の責任だけれども、世間でいうより、
 <マスコミによってつくられた世間>に潰されることのないようにと思います。

 確かにこれまで彼のような前例はないかもしれません。
 でも前例がなければ、作ればいいんです。』

猿之助さんにとっても、中車さんにとっても、そして團子ちゃんにとっても、
新しくて、大きな大きな挑戦がはじまったのでしょう。

楽しみです。
応援したい、と、思いました




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