今、こういう時に読むべき本ではないかもしれない。
やはり、今は、「死」という言葉は苦しくてつらい。
でも、この本の中の「死」は、
悲しいものだけれど、
ひとつひとつに、誰かに残していく大事な『なにか』があって、
読後は、やさしいです。
必要だったので、再読して、
「死」ということばに、動揺して、
でも、いい本だと、思います。

ひこうき雲
泣けました。
幼い日の、青い気持ち、
敏感に揺れていた気持ちが、
友達の顔と一緒に帰ってきたから。
クラスメイトの女子が手術のために入院する。
彼女は「ガンリュウ」ってあだ名で、あだ名通りのイメージの女子だった。
かなり重病のようで、寄せ書きを書いてお見舞いに行くことになったけど、
何を書いていいのか、喋っていいかわからない。
年月を経て、あの頃を思い出しながら家族と電車に乗っている。
義母の見舞いをするために。

朝日のあたる家
誰かと出会い、何かが起きる。
普通に生きてきたはずの人に起こる「なにか」。
間違いでも、間違いじゃない「ところ」が描かれているのが、いいと思いました。
正しさなんて、誰にもわからない。でも、それを開き直ってはいけない。
誰にでもいくつになっても、お説教を言ってくれる人は必要だな、と思いました。
朝のランニング中、昔の教え子にばったり出会う。
カメラマンを目指すフリーターの教え子から、
同学年の女子が、同じマンションに住んでいることを聞く。
女性には万引き癖があり、教え子の働くコンビニで繰り返し行っているらしい。
行き場を見失った元教え子たちに、何を伝えるべきなのだろう?

潮騒
小さい時の、
あの頃だったから感じただろう「苦さ」と「あたたかさ」を思い出しました。
悲しいけど、 病気をしていると、 他人事ではなくて痛いけれど、
痛いのに、あたたかいお話でした。
余命を宣告された男が、昔ほんの一時期住んでいた海岸沿いの町に向かう。
幼馴染みに再会し、当時の苦い思い出を語り合う。
同級生が海で遭難し、戻って来なかった・・・という事実だ。

ヒア・カムズ・ザ・サン
大事なひとは「いる」だけでいい。
今だから、余計、たくさん涙が出ました。
生きなくちゃ…とも。
母一人子一人。
仕事から帰ってきた母が、駅前で歌うストリートミュージシャンの話に紛れて、
気になることを言った。胃カメラを飲んでみようかな。
息子は、母親が重大な病気なのかもしれないと思いながら、
母には何も言えないまま、時間が過ぎていく。
母は、毎日ストリートミュージシャンの話をする。
会いにいこう。息子は、そこで、母の想いを知ることになる。

その日のまえに
どんな苦しい事実の前でも、
『朝の太陽は東の空に昇る。明日から、暦は春だ。』
新婚当時住んでいた町を訪れる。多くのことが変わっていて違う町のようだった。
この町に来たのは、妻の余命が幾ばくもないことを宣告されたからだ。

その日
言葉のひとつひとつが、重い。
命は、重い。 重くて、苦しくて、声を出して泣きました。
妻が死んでしまう日を、二人は『その日』と呼ぶことにする。
別れの挨拶、葬式の段取り、気持ちの整理、出来る限りのことはした。
だが、予想より早い病状の進行。
元気になって帰ってくると信じている二人の息子たち。
何も知らされていなかった息子たちを連れて、『その日』を迎える。

その日のあとで
『僕は、和美のことを忘れる。 けれど必ず、いつだって、思いだす。
そのときには、お帰り、と言ってやる。』
死んでしまった妻は、ダイレクトメールの中では生きている。
夫も、二人の息子も、忘れることはない。
これからどんどん忘れてしまうことはわかっている。
それでも・・・忘れない。