師走は雪が多く、厳しい冬が予想されたが、平成27年乙未(きのとひつじ)に年が改まると暖かい日が続き、雪も少ない。
前回の法話でも述べたが、今年は春の訪れが早いのである。立春と共に、春が来た。一月(ひとつき)近く、早いのではないか。
じつは春が早(はや)過ぎると、困ることもあるのである。毎年のことだが、枝垂桜(しだれざくら)を筆頭(ひっとう)に境内の
老木(ろうぼく)に巣食(すく)う苔(こけ)を駆除するために、寒さの厳しい2月末のこの時期に、硫黄合剤(いおうごうざい)を
散布(さんぷ)するのである。いつもならば雪がたくさん残っている筈(はず)なのに、瞬(またた)く間に春めいてきたから、
慌(あわ)てて金成緑化に電話したら、まだ大丈夫です、と言われたのである。とまれ、25日には散布(さんぷ)を終え、まず
は一安心である。ね
世は当(まさ)に、春である。雪のない道路を平泉に向かい、髢(かつら)石(いし)を過ぎると視界が開け、束(たば)稲山(しねやま)に、
春(はる)霞(がすみ)が立つのが見える。日当たりのいい南の土手だけではなく、至(いた)る処(ところ)でフクジュソウが咲いている。
ネコヤナギが芽吹(めぶ)き、梅の蕾(つぼみ)も大きく膨(ふく)らんでいるのである。
スイセンの芽(め)が角(つの)ぐみ、蕗(ふき)の薹(とう)ことバッケが出ているが、散布した硫黄合剤には毒性があるから、
食用に適(てき)さなくなってしまった。こんなことなら、先に摘(つ)んでおけばよかったのにと後悔(こうかい)するが、バッケを
見つけたのが月末の28日だから、笑うしかないではないか。
春が早すぎる所為(せい)か、ちぐはぐなことも多いが、地表の温度が上がると、雪が降っても上から下から溶けてしまうのである。
斯(か)くして、春は忽(たちま)ち来るだろう。
こんな年があってもいいと、28日に弟子と毘沙門堂での御勤(おつと)めを終えて、柔(やわ)らかな日差しを浴びて、階(きざはし)を
降(お)りながら思ったのである。明日(あす)から、春(はる)三月(さんげつ)である。