手掛松と九葉紅葉

2014-10-01 08:56:21 | 法話

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「手掛松と九葉紅葉」

 

 去る九月七日に蝦蟆ヶ池辯天堂の落慶法要が恙なく終わり、正月修正會の御札作りに忙しい。陽も短くなり、少しばかり木々の葉が色づき始めてきた今日この頃、平穏なはずの我達谷西光寺で、困ったことが二つもある。

 

 

一つは、達谷窟毘沙門堂に、光背のごとく聳える眞鏡山上に生える手掛松が、マツクイムシの食害にあって、枯れ始めたことである。往古、悪路王が八尺堂山に敷かれた坂上田村麿公の陣を、この松に寄りかかりながら覗ったとの伝承を持つ由緒木なのである。もちろん後の木なのだが、山上から迫出した姿は雄渾そのもので、参拝客の眼を楽しませてきたのだが、9月初めの落慶法要の準備の頃から急に赤茶けてきて、じつに痛々しい。

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森林組合の見立てによれば万事休すで、11月に伐採のうえ燻蒸処理する予定というが、此処達谷のみならず、全国でマツクイムシが猛威を振るい、白砂清松と讃えられた美しい日本の風景が瀕死の状態であることは、法話で何度も述べた。ちなみに一昨年も山上の松が枯れ、伐採を目前に控えた11月2日に強風で折れ、毘沙門堂の屋根を突き破るという惨事も経験した。じつに困ったことである。

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もう一つは九葉紅葉が枯死しそうなことである。毘沙門堂の前に生え、文字通り九つに裂けた大きな葉が特徴で、紅葉がじつに美しい。菅江真澄の「かすむこまがた」にも記された、モミジの名木である。九葉は、心を込めて御供物を捧げる供養に繋がるから、毘沙門様への献木とされてきたのみならず、仙台の伊達の御館様の家紋である九曜紋に通ずることから、御巡検の折、ことのほか愛でられたと伝えられる。

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これも先代が枯れたのちに移植した、樹齢30年ほどの若木であったが、目通り五寸の幹にテッポウムシが何匹も入り、一昨年から樹勢が衰え始めた。あれこれ対策を講じたもののうまくいかず、今は根元にわずかなひこばえを残すにすぎない。モミジの類はことのほか樹齢が短く、急に枯れるから、じつに困るのである。

 

 

 

 由緒ある手掛松と九葉紅葉が枯れることは、達谷西光寺にとって一大事であるが、手掛松は材を何かに利用し、九葉紅葉は鐘楼のあたりに繁茂している何本かの中から、移植を試みたいと思う。とまれ、自然は意のままにならない。しかし、じつに有難いのである。

 


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