緊急事態宣言真っ只中の今月中旬、「不要不急」に関する
何人かの考え方を新聞で読んだ。
「それぞれの不要不急」と題した養老孟司氏の寄稿文は、
さすがに蘊蓄を傾けた長い文であるが、あえてその中身一切
を取り払って、最初と最後だけを紹介しよう。
私は80歳を超え、当然ながら公職はない。この年齢の
人なら、非常事態であろうがなかろうが、家にこもって、
あまり外には出ない。出る必要がない。
今の私の人生自体が、思えば不要不急である。
・・・・・・・(長い中身)・・・・・
しかし人生は本来、不要不急ではないか。ついそう考えて
しまう。老いるとはそういうことなのかもしれない。
養老氏よりは少しだけ若いが、蓋し納得である。
次は、大手書店勤務の後、那覇市の公設市場前で「ウララ」
という古本屋を営む宇田智子氏。こちらは「市場のことば、
本の声」を著した、人生バリバリの意見である
同じ本屋なのに新刊書店は休業要請の対象外で、古書店
はその対象です。東京都は「新刊書店は参考書などを販売
して生活に不可欠だが、古書店は趣味要素が強い」と説明。
古本屋は「不要不急」ということでしょうか。
コロナ禍で、すべての営みが「不要不急」というふるい
にかけられるようになりました。でも、誰かの「要」や
「急」を他者が決めることなんてできるのでしょうか。
これもその通り。新刊書が「急」で古書が「不急」なんて
だれも決められないはずだ。しかし、今回のコロナ禍の中で
1772年出版の「ペスト」が重版されたことを述べた後でも、
宇田智子氏は達観して、こう結んでいる。
多くの人には「不要」としてはじかれた本を「欲しい」
と感じて手に取るまで何十年も待ち続ける。それが古本屋
です。そう考えると本当に「不急」な商売。
でも、そんな店を私は自信を持って続けたいと思います。
もうしばらくは自分の意志で外出自粛。断捨離を免れた
「古書」から何か読んでみよう。
散歩から花たちを、きょうも九連発。