新聞土曜版のコラム「Reライフ」は、長く続いた宗教学者、
山折哲雄氏の「生老病死」から、二回り若い、小説家、保坂
和志氏の「夏の手前で」に変わった。
その保坂和志氏が紹介する、彼の友人の日本人観が極めて
面白い。
「政府が無能なのに(日本の)コロナ対策がなぜかうまく
いっている」のではなく、「無能だからこそ、うまくいって
いるんだ」。
日本人は放っておけば、勝手に努力して、勝手にせっせと
働いて、勝手にあれこれ工夫する。そういう人たちの集まり
なんだ。
日本人は「お上」なんかアテにしないで、自分たちで適当
に助け合ってなんとかしてきた。日本人の心の中には、国家
とか政府とかという概念がそもそもない。
逆に言うと、近代国家に相応しい政府に国民が育てて来な
かった。
(引用終わり)
この最後の「国民が育てて来なかった」は納得である。
結果として、無能な政府が軍国主義に走り、そしてまた今、
無能な政府が、そんな昔への回帰を目指す。
もう一つ、同じく先週の土曜版「みちものがたり」は
日光杉並木。
杉並木は日光街道だけと思っていたが、京の公家たちが
東照宮に詣でた例幣使街道、会津藩主・保科正之が整備
した会津西街道にも杉並木があると言う。
3本で総延長37キロ、「世界一長い並木」のギネス記録
の杉並木は、戦時中に艦船用材調達の名目で全伐採されそう
になったという。
大政翼賛会の伐採陳情に対し、時の文部省は不認可の
通達を出したが、会津西街道は支障なしとされ、所有する
東照宮は「供木奉告祭」を行った。
しかし、形式的に供木を決めても、伐採は意図的に引き
延ばすという地元の知恵で杉並木を守ったという。
「お上」に盾を突く「日本人の勝手な工夫」であった。
その三本が交わるあたりに東武日光線の上今市駅がある。
そうとは知らぬ十数年前、この上今市駅に車を置いて、
「日光街道の」杉並木を歩いた。
この杉並木の起点標は、例幣使街道、会津西街道にも
あるという。コロナ過が過ぎたら訪れてみたいところで
あるが、いつになるやら。