宇宙戦争、「シュリーバー演習」。日本が演習初参加
2018年11月25日05時03分
安全保障に関する宇宙利用のイメージ
10月中旬、米アラバマ州マックスウェル空軍基地内の一室。米国、英国など国ごとに仕切られたブースの
一つで、日本の防衛省、外務省、内閣府、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)
などの職員が机上のパソコン画面を見つめていた。
同月9~19日の間、米空軍宇宙コマンドが主催した多国間机上演習「シュリーバー・ウォーゲーム」
での光景だ。米軍の宇宙関連の部隊や米政府機関からの約350人のほか、日本を含む7カ国が参加した。
演習名の由来は、米軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発や宇宙活用に大きな功績を残した
シュリーバー元空軍大将の名前にちなむ。
演習の内容は「機密」扱いだが、複数の政府関係者によれば、想定はこんなシナリオだったという。
2028年。太平洋からインド洋の東側までを担当する米インド太平洋軍の管内で、米国の偵察衛星や
通信衛星が「ある競合国」から攻撃や電波妨害を受け、軍事作戦に欠かせない全地球測位システム
(GPS)もダウンした――。
宇宙空間での軍事作戦をテーマに2001年に始まったこの演習は今年で12回目。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が加わった年もあったが、多くは軍事諜報(ちょうほう)の
世界で「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米、英、豪州、カナダ、ニュージーランドの5カ国を中心に
続けられてきた。そんな「極めて秘匿性が高いインナーサークル」(自衛隊幹部)の演習に日本が
招待を受け、今年、初めて参加したのだ。
背景にあるのは、現代戦における「宇宙」の比重の大きさだ。新たな防衛大綱の策定に関わる
政府関係者はこう話す。「弾道ミサイル発射の兆候も含めて情報収集や警戒監視、通信、測位、
気象観測……。
陸海空の作戦と装備は、宇宙に深く依存している。相手の宇宙インフラを使えなくすれば、死傷者を
出さずに陸海空の戦いで圧倒的に有利になる。だから、現代の戦争は宇宙とサイバーから始まる。
宇宙を制する者は現代戦を制すだ」
演習では、シミュレーションが繰り返されたという。衛星が使えなくなった米軍が作戦を続けるために、
欧州の測位衛星システム「ガリレオ」や「日本版GPS」と呼ばれる準天頂衛星「みちびき」では、
どんな支援ができるのか。米軍が他国の暗号コードを使うための技術的な課題やそれぞれの国の国内法上の
制約は何か。各国で対応を検討し、米国と調整を重ねた。もはや日本も無縁でなくなっている。
各国の宇宙政策に詳しい鈴木一人(かずと)・北海道大学大学院教授は「南シナ海で米中の軍事的
衝突の恐れが高まった時、最初に狙われるのは宇宙システム。米国の衛星が攻撃を受けたときに、
同盟国と連携して被害を最小限にとどめ、リスクを分散し、機能を維持していけるのかを探るのが演習の狙い」
と解説する。
宇宙を舞台に「米VS.中国・ロシア」という対決の構図が鮮明になりつつある。一方、人工衛星や
ロケット開発で生じた大量の宇宙ゴミは、各国共通のリスクだ。防衛省・自衛隊は、後者の解決をとば口に、
宇宙への関わりを深めようとしている。
https://www.asahi.com/articles/ASLCS7DW6LCRULZU00H.html
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米空軍宇宙コマンド主催多国間机上演習「シュリーバー演習」への参加について
平成30年10月5日 防衛省
1 目的
米空軍宇宙コマンド主催の多国間机上演習「シュリーバー演習」に参加し、宇宙に関する各種事象への対応等を参加国とともに演練することにより、宇宙空間における各国との連携強化や将来の宇宙政策立案の資とする。
2 参加時期
平成30年10月9日(火)から同月19日(金)
3 実施場所
米国(アラバマ州マックスウェル空軍基地)
4 演習参加予定国(日本以外)
英、豪、加、ニュージーランド、仏、独
5 参加人員(計14名)
内部部局 | 5名 |
---|---|
統合幕僚監部 | 3名 |
航空幕僚監部 | 6名 |
6 その他
防衛省・自衛隊のほかに、国家安全保障局、内閣府、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省、内閣衛星情報センター、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からも職員が派遣される予定。