中朝露、新型コロナの隙突く軍事行動 日本政府警戒
2020.4.25 20:34 産経新聞
新型コロナウイルスの感染が世界で拡大している最中も、日本周辺を含む東アジア地域
では中朝露3カ国が軍事的圧力を強めている。特に中国は、空母で感染者が相次ぐ米軍の
隙を突くように海洋へ進出している。事態を警戒する日本政府は、新型コロナの感染拡大
に対処しつつ、各国と安全保障の連携維持を図る。
河野太郎防衛相は24日の記者会見で「世界各国が協調していかに新型コロナを封じ
込めるかという時期に軍事的な拡大を図るのは、いつにも増して許されない」と中国を
批判。同日夜にはエスパー米国防長官と電話で会談した。17日にはフランスのパルリ
国防相とも電話会談している。
いずれの会談も新型コロナ対応のノウハウの共有を通じて連携強化を図る狙いがある。
米国はもちろん、ニューカレドニアなど太平洋地域に海外領土を保有するフランスとも
中国への懸念を共有したとみられる。
自衛隊制服組トップの山崎幸二統合幕僚長は15日、米軍制服組トップのミリー統合
参謀本部議長とテレビ会議を行い、新型コロナに関連して活動を活発化する中国や
ミサイル発射を繰り返す北朝鮮など周辺国の動向について意見交換した。
中国軍は空母「遼寧」を中心とする艦隊が10日から11日にかけて東シナ海を航行
した後、宮古海峡(沖縄本島-宮古島間)の公海上を通り、太平洋に入った。山村浩
海上幕僚長は「中国海軍が新型コロナの影響を受けておらず、これまでの活動を継続
していることを示した」との見解を明らかにした。
中国軍は3月18日にもミサイル駆逐艦など4隻が宮古海峡を通過。2月9日に
H6爆撃機4機が同海峡上空を通過するなど、領空侵犯の恐れがある飛行も繰り返して
いる。こうした行動の背景には、中国国内の引き締めとともに、空母4隻で感染者を
出した米軍の東アジアにおける抑止力を試し、自衛隊にも圧力をかける狙いがあると
みられる。
北朝鮮も3月に4度にわたり弾道ミサイルを日本海に向け発射。4月14日には
地対艦巡航ミサイルを発射した。飛距離200キロ未満の短射程のため、日本政府は
韓国や在韓米軍を標的に想定しているとみているが、技術が高度化しているのは
明らかで、日本の脅威でもある。
ロシア軍も、3月24日に最新鋭戦闘機や爆撃機が日本海などを航行し、4月に入って
も領空侵犯の恐れのある飛行を繰り返すなど活動を緩めていない。
これに対し、自衛隊や米軍は、コロナ禍であっても、警戒監視や有事への即応性に
影響を生じさせない考えだ。航空自衛隊と米空軍は22日、日本海や沖縄周辺で共同
飛行訓練を実施。米軍駆逐艦は中国空母の出現と同じ10~11日に台湾海峡の
中国寄りの海域を通過し、「米中が互いに東アジアで軍事的プレゼンスを示し合う状況」
(防衛省幹部)になっている。
自衛隊幹部は「日本国内が新型コロナに必死に対応する中、周辺国が圧力をかけ続ける
現状も忘れてはいけない」と警鐘を鳴らす。