北朝鮮レーダー未稼働、深刻な電力難原因か 米機飛行時
ソウル 2017年9月27日03時03分 朝日新聞
米空軍の戦略爆撃機B1BとF15戦闘機が23日に北朝鮮東方の国際空域を飛行した際、北朝鮮軍の早期警戒レーダーが稼働
していなかったと軍事関係筋が明らかにした。
北朝鮮は深刻な電力難でレーダーが十分稼働していない。米側の突然の飛行もあり、満足な対応ができなかった模様だ。
韓国の国家情報院も26日、北朝鮮軍が緊急発進(スクランブル)などの対抗措置を取らなかったと国会情報委員会に報告した。
同委所属議員らが明らかにした。米国は北朝鮮の反応について「突然で驚いたようだ。反応がないのは中ロと協議しているからでは
ないか」と韓国側に説明し、中ロにB1B接近を確認した可能性を示唆した。米側は、北朝鮮がB1Bの飛行経路を理解していないと
判断し、経路を公表したという。
米韓関係筋によれば、米側は事前に韓国にB1Bなどの飛行計画を通報。海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を
越えて北上するため、韓国軍は参加せず、米軍単独での飛行になったという。
ログイン前の続き韓国軍などによれば、B1Bは北朝鮮東岸の元山(ウォンサン)から約350キロ東に離れた国際空域を韓国の
防空識別圏の北限まで飛行した。軍事関係筋の一人は「北朝鮮のレーダーで把握できるが、ミサイルは届かない経路だ」と語った。
北朝鮮軍は地対空ミサイルSA5(射程200~250キロ)を保有。敵機を早期に発見する探知レーダー(射程400キロ)とミサイル
の照準を合わせる射撃統制レーダー(同200~250キロ)で運用する。
1980年代に旧ソ連から導入して改良して使用を続けているが、探知レーダーと射撃統制レーダーの本来の射程である
約600キロと約270キロの性能を発揮できずにいるという。
不十分な態勢から、ミグ戦闘機などによるスクランブルもできなかった模様だ。軍事関係筋は、北朝鮮軍が衝突を恐れて対応を自粛したとの見方を否定。米韓関係筋も「北朝鮮が言葉ほど十分な対応を取っておらず、驚いた」と語った。
一方、情報委所属議員によれば、北朝鮮はB1Bの飛行後、日本海側の空軍基地に航空機を増派した。南北軍事境界線付近で
問題が発生した場合には処置よりも報告を優先する命令も出したという。議員の一人は「偶発的な衝突に神経を使っている」と語った。
北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相は25日、米ニューヨークで、トランプ米大統領による金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長へ
の批判について「明確な宣戦布告」と見なすとの声明を記者団に発表。「今後、米国の戦略爆撃機が我が国の領空に入っていなくて
も、撃墜を含むあらゆる自衛的な対応を取る権利がある」と述べた。
米ホワイトハウスのサンダース報道官は同日、「我々は宣戦布告などしていない。馬鹿げている」と一蹴した。(ソウル)
■北朝鮮のガソリン、年初の3倍に
韓国統一省当局者は26日、北朝鮮でガソリン価格が年初の3倍に高騰していると明らかにした。国際社会による制裁を警戒した
動きとみられる。年初に1リットルあたり6千ウォンだったガソリン価格が上昇。8月中旬から急騰したという。
北朝鮮の公式レートは1ドル(112円)が108ウォンだが、国内では1ドルが8千ウォンで取引されている。
また、国際社会からの孤立によって、北朝鮮が今年企画した国際行事のうち、元山(ウォンサン)航空祭や大同江(テドンガン
)ビール祭りなど20余の行事が中止に追い込まれたという。中朝関係も悪化。労働新聞(電子版)は22日、中国共産党機関紙
「人民日報」と、系列の「環球時報」を名指しで非難した。
一方、統一省と外交省によれば、スペイン、クウェート、メキシコ、ペルーの4カ国が北朝鮮大使の国外退去処分を決めた。
独、仏、ブルガリアは北朝鮮大使館員の縮小を要求。クウェートとカタールは北朝鮮の派遣労働者へのビザ発給を中断したという。
北朝鮮は7月現在で、計47カ国に大使館を開設している。