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【世界の潮流】バルカンにおけるロシアの挑戦

2017-05-10 21:18:35 | ヨーロッパ・EU諸国

バルカンにおけるロシアの挑戦

3月11日付英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、ロシアが西バルカンを不安定にし自国の勢力圏に取り込む工作を

進めているので、EUと米国はこれに対応すべきであると述べています。その要旨は次の通りです。


ウクライナの後、ロシアが挑戦を試みているのは、バルト諸国ではなく、バルカン諸国である。

 1990年代の旧ユーゴ紛争終結後、西バルカン(5つの旧ユーゴスラビアの諸国とアルバニア)の安定を支えて来た要

素は2つある。1つは遠い将来のことかも知れないがEU加盟の展望である。この展望が民主主義化の改革を促し、いず

れバルカン諸国民の間の和解を不動のものにするとの希望を与えて来た。もう1つは米国の支持、およびもし紛争が再

燃する場合には米国あるいはNATOが介入するであろうとの想定であった。


 しかし、債務問題、難民、Brexit、ポピュリズムの台頭という危機のためにEU拡大は死んだ。一方、トランプ大統領は

欧州の端っこには最小限の関心しかないと思われる。このことが、EUと米国の影響力を押し戻す隙をロシアに与えるこ

とになっている。ロシアは正教会のスラブ民族との文化的繋がりを利用している。


 バルカンではどこであろうと騒ぎが起こると、その後ろにロシアの姿が見える。昨年10月のモンテネグロにおけるクー

デタ騒ぎは、当初セルビアのナショナリストの仕業と思われたが、ロシアの情報機関が同国のNATO加盟を阻害するた

めに仕組んだものだという証拠がある。先月、セルビアからコソボ国境に送られた列車の側面には「コソボはセルビアの

もの」と21カ国語で書かれていたが、この列車はロシアで作られた。マケドニアの政治的対立を巡ってはロシアとEUは

相対立する関係にあるが、長年の親EUの大物であるニコラ・グリュエフスキはロシアに傾いているらしい。ボスニア・ヘ

ルツェゴビナでは、ロシアは独立のための住民投票を求めるスルプスカのミロラッド・ドディック大統領を支援している。


 ロシアのプロパガンダと特殊部隊による妨害を防ぐ最善の方法は、この地域の心を掴むことにEUと米国がコミットし

続けることである。トランプ自身の見解は兎も角、平和な欧州の重要性を理解する政府高官が任命されるなら、EUには

米国の関与を繋ぎとめるチャンスがある。


 貿易、援助、投資の面でEUのバルカンへの影響力はロシアを圧倒する。バルカンからの移民は殆ど全て欧州を目指

す。EUには吸引力がある。しかし、更なるEUの関与が必要である。それには、情勢の綿密な把握、ロシアの情報工作

への対抗、バルカンの問題を真剣に考えていることを保証するための欧州の首脳・高官による訪問がある。このための

政治的意思が必要であり、それなくしては、欧州の最も問題の多い一角は暗い過去に逆戻りする危険がある。それは

欧州全体にとって危険である。

 

 この社説は有用な警告だと思います。バルト諸国も危険に向き合っていますが、西バルカンはロシアの裏面工作、

浸透工作といった違った種類の脅威に非常に脆弱なのだろうと思われます。この社説が言及している個々の出来事に

ついては詳らかにしていませんが、最近この地域を訪問したEUのモゲリーニ上級代表は地域の不安定性とそれが民族

紛争に発展する危険性に大きな懸念を抱いたと報じられています。


 バルカン諸国のEU加盟の可能性と米国の関与という2つの安定の柱が失われた状況にロシアが付け入っているとい

う指摘はその通りだろうと思います。世界的に見てもこの地域に対する関心が低下しています。


 3月9日のEU27の非公式首脳会合は西バルカン情勢を取り上げましたが、トゥスク大統領は「地域を不安定化させよ

うと試みる内部および外部の勢力が存在することは明らかだ」と述べ、EUは今後も地域を支援していくと述べました。

EUとしては、米国を引き込む努力をすべきですが、この問題は欧州の安全保障に係る近隣の問題であり、EUが外交努

力を集中して然るべき問題だと思います。

 

出 典:Financial Times ‘Europe and the US face a challenge in the Balkans’

2017年4月13日  WEDGE Infinity

一触即発状態にある「バルカン半島」の危うさ 紛争を阻止するにはどうしたらいいか



3 コメント

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自国の繁栄とは (ハブグレジュンタのマミー)
2017-05-10 22:16:40
単純な考えしか持っていない私が考えるに、中国もロシアももうすでに大きすぎるだけの国土を持っています。しかし、その国土に住んでいる人たちの生活水準は決して高く住みやすいとはいいがたいと思います。もし国民のことを考えるリーダーだったら国土を広げるよりも国民の生活水準を上げることを考えると思います。他国を侵略していくということはリーダーの征服願望を満足させているだけと思います。
“大きいことはいいことだ”ではないのですが。
単純なコメントで失礼しました。
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Unknown (Unknown)
2017-05-11 14:39:57
紛争を起こしても領土を広げたいのは独裁者のエゴですね。
中国もロシアも領土は既に広大なのに他国の領土や海を欲しがる。
両国とも広大な領土ですが使える土地が少ない。特にロシアは殆どが不毛の土地なので少しでも土地が欲しいのではないでしょうか。
軍事的な理由もありますよね。
あと資源。尖閣も資源があると判ると中国領土だと言い出しました。
北方領土は使える土地ですし、アジア、太平洋に対しての軍事拠点としてロシアから見れば手放したくない所だと思います。
日本は国土のほとんどが使える土地です。平地は作物や各種産業に、山地は樹木が生い茂っています。北海道も開発すれば使えますし、それに水もきれい。
福島原発事故で現在使えない所はありますが、100年後には確実に使える土地に戻ります。
海洋国家で豊かな国土の日本は中国が侵略したい国家だと思います。
中国もロシアも自分の領土で知恵を絞れっていいたくなりますね。
戦後米国が占領し日本も辛い時代もありましたが、
日本を分断しないで米国だけで占領したことは感謝すべき点だと思います。
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ハブグレジュンタのマミーさま (jiu)
2017-05-11 14:42:44

マミーさま。タイトル入れるのわすれました。m(__)m
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