アマゾンにはびこる偽商品、駆逐は「いたちごっこ」
模造品業者、小規模ブランドをターゲットに
ミシガン州の起業家、サッサ・アカーバル氏と同氏の家族が開発した「SISUマウスガード」は売上高の大半を
アマゾンで稼いでいる。だが、アマゾンに出回る模造品は同ブランドを下回る価格帯に設定し、アカーバル氏の
売り上げを奪っている。アマゾンに繰り返し問題を報告しているが、模造品は後を絶たない。
アマゾンは模造品の販売を禁じている。同社の広報担当者は文書で「当社はストアの品位を保持するために
多額の投資をしている」とし、「顧客と出店者の体験に悪影響を及ぼす業者を引き続き厳しく追跡する」と述べた。
一方、模造品メーカーは、サイトの選択肢を広げて低価格で提供しようとするアマゾンの意気込みに
付け入ることに成功している。小規模ブランド各社やコンサルタントによると、アマゾンはサイトへの出品
プロセスを簡素化し、出店者は商号とメールアドレス、住所、電話番号、クレジットカード、ID番号、銀行口座
さえあれば登録できるようにした。その結果、出店者になりすまして人気商品の海賊版を出品することも
可能になったという。
出店者がアマゾンの「セラーセントラル」サイトにログインすると、大半のページで類似商品を出品しやすいよう、
当該商品の横に「出品する」ボタンが表示される。こうした戦略はシャンプーやスニーカーなど一般的な商品には
有効だ。だが小規模ブランドとなると、たいていブランドの所有者のみが製造業者として登録されている。
このため、模造品メーカーが人気商品の海賊版をブランド品と同じページ上に、さらに安い値段で出品している
場合がある。
アマゾンはアルゴリズムで低価格品を割り出し、顧客がクリックする商品購入用の「ショッピングカートボックス」に
模造品を表示する。こうして正当なブランド品は脇に押しやられてしまう。
アマゾンの出店者にアドバイスを提供するバイボックス・エキスパーツのブランドコンサルタント、
ジェームズ・トムソン氏は「現実はいたちごっこだ」と語る。「ますます多くの模造品メーカーを排除する方法を
見つけなければならない。(アマゾンが)1つ抜け道を閉ざすと、すかさず誰かが別の抜け道を探し出す」
アマゾンで成功を収める新ブランドが急増したことで、模造品の問題も拡大したと複数のコンサルタントは
指摘する。出店者もコンサルタントも、数値化するのは難しいが問題は常態化していると話す。
歯のホワイトニング商品を開発したカル・チャン氏は、最近アマゾンに出品された模造品が通常価格の
3分の1以下の値段をつけていたため、顧客が本物を手にできるように自社商品の価格を引き下げ、
損失を被ったという。このホワイトニング用チャコール(活性炭)パウダー「Active Wow(アクティブワオ)」は
アマゾンで販売数が突出している人気商品の一つだが、チャン氏は模造品と差別化するためパッケージのデザイン
変更を試みた。パッケージもそっくりにまねるほど模倣が高度になっているためだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の問い合わせ後、チャン氏をはじめ当記事で言及された出店者の
商品リストから模造品メーカーは排除された。
アマゾンは以前から模造品メーカー対策に努めている。違反者を相手取って訴訟を起こし、ブランドメーカーが
出品内容を一段とコントロールできるよう、メーカーが自ら登録できるようにした。
アマゾンはさらに、そうした情報を活用してシステムを精査し、模造品メーカーとおぼしき出品の発見や
出品阻止に活用している。 アマゾンの広報担当者は、同社サイトのページビューの0.1%未満で違反行為の
報告があり、そうした報告があった場合、出品商品の95%に関して8時間以内に調査を行っていると述べた。
同社はまた、模造品特定のためにアルゴリズムやその他のシステムを開発している。
それでも偽造品はひっきりなしに出品される。
音楽ボードゲーム「Spontuneous」を開発したロブ・リッジウェイ氏によると、アマゾンにブランドを登録した後、
5ドル安い価格で模造品を売るウクライナの出店者が現れたという。
テキサス州オースティンに住むリッジウェイ氏は、それが偽造品である証拠をつかむため、商品を注文しようとした。
ところがいつまでたっても商品は届かず、配送の追跡番号までもが偽物だと分かった。
リッジウェイ氏は「いらいらする」と憤まんやるかたない。「お手上げというほかない」