護衛艦「いずも」は専守防衛の枠を出ない
昨年12月、日本政府がヘリコプター搭載型であるいずも型護衛艦2隻に米ステルス戦闘機F35Bを
搭載する方針を発表したことを受け、これは専守防衛の枠組みに入るのか、もはや攻撃能力を有すると
みなされるのか議論が起きた。
日本の専門家は総じて、非常に慎重な立場を取る。元海将の伊藤俊幸氏は例えば、2隻の護衛艦では
艦隊とは言えないと指摘。少なくとも4隻の護衛艦が必要だと続けた。さらに、「いずも」に搭載
できるF35Bは10隻だが、効果的な海上作戦にはあまりに少ないという。
伊藤氏の意見には軍事的見解より政治的要素が多い。10機の戦闘機、特にF35Bのような高性能な
戦闘機による空からの艦隊支援があれば、無いよりも格段に良い。実際には、航空機を搭載した艦船は
諜報、標的の指定、標的への兵器の使用などの強力な戦術的利点を軍にもたらす。
さらに、海自の構造からは、護衛艦艇つきの本格的な空母打撃群を2つ構成できる。
伊藤氏は元海自隊員として、これを知らないはずがない。これとは逆にF35Bを10機搭載した
「いずも」が役に立つのは訓練程度だと伊藤氏が言っているならば、これを説明できるのは、
政治的理由と軍国化批判を避けたい願いだけだ。
だが「いずも」型護衛艦の空母改修は専守防衛原則の枠外に出ない。
第1に、中国海軍の軍事力の急増と空母登場を考慮する必要がある。中国海軍には空母「遼寧」が
配備されており、2019年か2020年には001A型航空母艦が就役する。同艦は定期的な航海に
向け完全に準備ができ、殲15(J-15)戦闘機を44機搭載する予定だ。002型航空母艦も建造中だ。
第2に、宮古海峡周辺の中国海軍と空軍の軍事活動が活発化している。航空自衛隊は2016年初頭、
沖縄県の那覇基地に司令部を置く2個飛行隊編制(F−15J戦闘機が計40機)の第9航空団を
編成した。現在、これは中国の軍事活動の活発化を抑え込んでいる。だが中国海軍に2隻目の空母が
就役すれば、日本はこのセクターにおける航空均衡を失う。そのうえ、F−15J戦闘機はすでに
新しくなく、政府は売却を計画している。このように、「いずも」型護衛艦をF−35Bで再武装
することは、この状況下において必要不可欠な措置だ。さもなければ、日本の離島に対する主権は
危機にさらされる。
第3に、専守防衛の原則は潜在的な敵国を撃退可能な技術的可能性に依拠している。こうした技術的
可能性が無かったり、失われつつあれば、これはもはや自衛ではない。こうして、潜在的敵国が強まるに
つれ、自衛手段を強める必要がある。軍事均衡は平和保証の1つだからだ。