新型コロナ「58歳女性の脳が壊死」米ミシガン州で世界初
2020年04月02日 19時02分 Hazard Lab
新型コロナウイルスの感染が全世界中で広がるなか、肺炎症状だけでなく、味覚や
嗅覚などの異常も報告されるようになったが、米国の研究で、脳の一部で炎症や壊死が
進行する「急性壊死性脳炎」を発症していたことが明らかになった。
58歳女性の脳のMRI画像(Radiology)
米ミシガン州デトロイトのヘンリー・フォード・ヘルスシステムの神経科医エリッサ・
フォーリー博士らの医療チームが放射線医学誌『ラジオロジー(Radiology)』に
先月31日付で発表した症例報告によると、航空会社に勤務する58歳の女性は先月19日、
パニック障害や方向感覚の欠如、意識不明などの状態で同病院に救急搬送された
インフルエンザ脳症を疑ったが…
ヘンリー・フォード・メディカル・センター
担当医はインフルエンザ脳症による意識障害を疑って、ウイルス検査を行ったが陰性。
さらに脳脊髄液を採取して、ヘルペスや帯状疱疹、西ナイル熱などのウイルスについても
調べたが、3日かけても原因は一向にわからなかった。
そこで、米疾病予防管理センター(CDC)が開発した検査キットを使って調べたところ、
新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたという。
脳内出血も
脳の中心部で出血も起きていた(Radiology)
同時に、頭部のCTスキャン検査を実施したところ、脳の中心部分にあって、
視覚や聴覚、運動などをつかさどる「視床」に損傷が見つかり、壊死が起きているのが
判明。さらに脳のMRI検査の結果、側頭葉の血管が破裂して出血しているのも見つかった。
当初、急性脳炎を疑っていた医療チームは、免疫機能が暴走して、自身の体に
ダメージを与える「サイトカインストーム」を起こしていると判断。
サイトカインとは、白血球など免疫系の細胞から分泌されるタンパク質で、ウイルスや
病原体の増殖を抑えるなどといった役目を果たす。
サイトカインストームとは
免疫系の暴走で自身の細胞を傷つけることがある(Radiology)
しかし、免疫系のバランスが乱れて、サイトカインの制御ができなくなると、
サイトカインストームといってサイトカインの過剰分泌を起こし、ひどい場合は死に
至ることもあるという。
ヘンリー・フォード・ヘルスシステムのチームは「新型コロナウイルスが原因で、
急性壊死性出血性脳症を起こした初めての症例だ」として、現場で働く臨床医や
放射線医は、この症状の進行に注意するよう呼びかけている。