リーク、挑発、即時非核化の神話。北朝鮮との和平プロセス「埋葬」を米国で望んでいるのは誰か?
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が、米領土に到達する能力のある複数の新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)を
秘密裏に製造し続けていると、ワシントン・ポスト紙が伝えている。このような結論に至ったのは、複数の衛星写真を
含む数多くの多様なデータを分析した米情報機関。スプートニクは専門家らに対し、この報道へのコメントを依頼した。
これらのデータによると、平壌の近くにある研究施設で、液体燃料で作動するICBMが1基、あるいは2基さえ
製造されたという。問題になっているのは恐らく、長距離を飛行できる能力を実験過程で示した北朝鮮初のミサイル
「火星15」だろう。これに先立ち、北朝鮮が秘密施設「カンソン」でウランを濃縮し続けていることを
米情報機関が暴いたとされている。先週にはポンペオ米国務長官が、北朝鮮の複数の工場では、核兵器製造の際に
利用される可能性がある「物質の分裂プロセスが続いている」と述べている。
ワシントン・ポスト紙が伝えるところでは、北朝鮮の新たなミサイルが同国の潜在的攻撃能力を強めることは
恐らくないだろうが、これは北朝鮮政府がトランプ米大統領の楽観主義にもかかわらず、現代的な兵器の開発を
継続していることを裏付けるものだという。トランプ大統領は数週間前、北朝鮮政府が今後は核の脅威ではないと
自らのツイッターで書き込んでいる。見たところ、非核化に取り組むとの北朝鮮の金正恩委員長の約束にもかかわらず、
北朝鮮政府は米政府を欺いているようだ。
記事では、「彼らの戦略は、弾頭20発の廃棄を発表すると同時に、さらに数十発を保存することにある」と
述べられている。
「これは、紋切り型の『反トランプ』的立場を取る米メディアによるニュースだ。そして、そのようなメディアには、
トランプ大統領の名誉を傷つけるあらゆる情報が必要なのだ」と、極東研究所・朝鮮研究センターの
コンスタンチン・アスモロフ主任研究員はスプートニクに対して述べ、以下のように話している。
「米国には、北朝鮮分野で正常に活動できる可能性がない。米国は衛星から監視しているが、衛星から全てのものが
見えるわけではない。あるいは、越境者や韓国人からの情報を利用しているが、この情報は何らかの形で招かれた、
極めて偏ったものである可能性があり、常に正確だとは限らない。首脳会談で達成された合意について話せば、
これは道のりの最終地点ではなく、長期にわたる外交プロセスの始まりなのだ。というのも、即時の非核化というものは
存在しないからだ。プロセスが安定したものであるためには、半島非核化の道のりで遭遇する複雑な状況を、
相互に受け入れられる形で解決する方法の探索に向けた、当事国双方の安定した政治的意思がなければならない」。
一方、ロシア科学アカデミー経済研究所・朝鮮研究プログラム長のゲオルギー・トロラヤ氏はスプートニクに対し、
今回の複数の報道が、米朝関係の正常化を麻痺させるという目的を追求する、情報戦争と挑発の古典的な事例で
あるとして、以下のように述べている。
「政権の一部は、北朝鮮政府に接近する政策に反対を表明しており、彼らの間では陰謀が存在している。
現在のプロセスを邪魔する目的で、北朝鮮が自国の核開発や、自国のミサイルシステムの改良作業も続けていると
主張する情報のリークが行われている」。
トロラヤ氏は以上のように説明した上で、「義務を負わせるいかなる合意も存在しないため、北朝鮮政府には今の
ところまだ何もしない権利がある。そして、それにもかかわらず、北朝鮮は既に一定の措置を行いつつある。
とりわけ、自国のミサイル発射場を解体し始め、軍事的活動を一時停止している」と付け加えている。
共同通信による報道では、北朝鮮は7月初め、朝鮮半島非核化の統一計画作成に取り組むことになっていた、
米国との共同作業部会の設置を拒否した。共同通信によれば、共同作業部会の設置という一歩を踏み出すことを
北朝鮮政府が望んでいないことは、非核化問題に関する両国の立場における相違を物語っている。
つまり、米国が迅速で完全な非核化を望んでいる一方で、北朝鮮は段階的アプローチを主張しているというのだ。
北朝鮮政府が、米側からの対応措置を期待している可能性も排除されていない。シンガポールでのトランプ大統領と
金委員長の会談の総括として、米国は北朝鮮に安全の保証を提供すると約束した一方、北朝鮮政府は朝鮮半島非核化に
向けた自らの献身的姿勢を確認したということを指摘しておきたい。