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<国防は1日にしてならず。想定外は許されない> /読売新聞お前もか!「陸上イージス、費用大幅に膨らみ運用」の印象操作/そんな知識レベルで大メディアと言えますか? 北の核廃棄はない。安保は長期的視点で

2018-08-02 15:12:16 | 防衛・安全保障・インテリジェンス

読売新聞 「陸上イージス、費用大幅に膨らみ運用」の印象操作

 




 各新聞社一斉に「イージスアショア 4600億に費用増大」と大幅値上がりしたような印象操作の大見出し

読売お前もか!陸上イージス、費用大幅に膨らみ運用2年遅れも

(電子版は後に金額削除。朝刊紙面は陸上イージス4600億円の見出し)

2018年7月31日6時0分    読売新聞

  防衛省は30日、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」に最新鋭レーダー「LMSSR」を搭載すると

発表した。レーダーを含むイージスアショア2基の取得経費は2679億円、維持・運用費と教育訓練費を

加えると4664億円に膨らむ見通しだ。


 運用開始は目標の2023年度から約2年遅れる可能性が出てきた。


 イージスアショアは、イージス艦のミサイル防衛機能に特化した陸上型施設で、防衛省は19年度予算の概算要求に

2基の本体取得費を計上する。1基あたり800億円程度を見込んでいたが、

今回選定した米ロッキード・マーチン社製のLMSSRは最新鋭で、1340億円に膨張した。


 レーダーの探知距離は千数百キロ・メートル。配備候補地の秋田、山口両県から北朝鮮全域を常時監視できる。


 多数の弾道ミサイルを同時着弾させる「飽和攻撃」や、通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」の

弾道ミサイルへの対処能力が強化される。


 米国防総省ミサイル防衛局とロッキード社の提案で示された費用の4664億円には、30年間運用した場合の

維持・運用費1954億円と教育訓練費31億円が含まれる。施設整備費や迎撃ミサイルと発射機は含まれていない。


 一方、イージスアショア1基目の納期は契約締結から6年後となる公算で、運用開始時期が25年度にずれ込む

可能性がある。防衛省は23年度運用を目指し、米側との交渉で納期短縮を求める。

 

 「陸上イージス、1基1340億円…2基導入へ」

2018年07月30日 13時53分   読売新聞

 

 イージスアショアは、イージス艦のミサイル防衛機能に特化した陸上型施設。LMSSRの探知距離は

1000キロ・メートルを大きく上回り、海上自衛隊のイージス艦搭載のレーダー「SPY1」と比べると、

探知距離は2倍以上になる。配備候補地の秋田、山口両県から朝鮮半島全域を常時監視できる。


 導入費は施設整備費などを含め、最終的に4000億円以上になる見通しだ。搭載する新型迎撃ミサイルの

取得費用を含めると、費用はさらに膨らむ可能性がある。


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そんな知識レベルで大メディアと言えますか?

北朝鮮の核廃棄はあり得ない、安全保障は長期的視点で。

2018.7.18(水)  JBPRESS   織田 邦男

 7月12日、某新聞の電子版に次のような見出しで記事が掲載された。

 「ミサイル防衛『矛盾』なぜ 警戒縮小、システムは配備拡大 北朝鮮脅威遠のき 背景に米中2大国」

(日経新聞です。2018/7/12 18:30 発信)


https://www.yomiuri.co.jp/politics/20180730-OYT1T50036.html 読売

 中身を読んで、安全保障に対する理解度の低さに今更ながら驚いた。テレビのワイドショーならまだしも、

日本を代表する有力紙までがこの程度なのかとため息が出る。


短期的な事象で判断できない防衛力整備

 記事には「北朝鮮のミサイルに対しては警戒態勢を縮小し、その一方で新たなミサイル迎撃システムを導入する。

北朝鮮の非核化を合意した米朝首脳会談が終わった後、日本政府が矛盾するかのような対応をしている」とある。


 簡単に言うと米朝首脳会談で非核化が合意され、政府はミサイル警戒態勢を縮小したのだから、新たに導入する

陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は不要ではないかという趣旨だ。

 

 テレビの娯楽番組で軍事的知識のないお笑いタレントが呟くならまだいい。だが電子版とはいえ、日本では

一応クオリティー・ペーパーと言われている有力紙である。


 「警戒態勢の縮小」という短期的な事象と「情勢見通しと防衛力整備」という長期的な事柄を同じ土俵に載せて

批判する「矛盾」に気が付いていないとしたら、程度は相当低い。


 6月22日、小野寺五典防衛大臣は「イージス・アショア」を配備する候補地の山口、秋田両県を訪ね、

「北朝鮮の脅威は変わっていない」と必要性を述べた。

 

 一方、同日に菅義偉内閣官房長官が記者会見で北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えた住民の避難訓練を

「当面は中止する」と発表した。このことが矛盾するというわけだ。


 つまりミサイルに対する避難訓練が中止されるような情勢なのだから、イージス・アショアはもう不要だと主張する。


 配備候補地がある山口県の村岡嗣政知事も「情勢は変わってきている」と述べ、秋田県の佐竹敬久知事は

「住民を軽視している」と配備に疑問を呈したとし、続けて「『訓練中止』と『脅威は変わらない』との説明は、

相反してみえる」と記事は述べる。


 6月12日の米朝首脳会談以降、米朝実務者の交渉が継続されている間、ミサイル発射の蓋然性が極めて

低くなったのは確かである。従ってイージス艦やPAC3によるミサイル警戒態勢が緩和された。


 だが、このことと将来の備える防衛力整備とは別次元の話である。

 

イージス・アショアの導入は早くても5~6年先

 政府は今年度予算でイージス・アショアの導入を決めた。だが、実戦配備になるのは、今日、明日ではない。

最短で見積もっても5~6年先である。


 契約交渉が終わり、各種覚書などが締結され、製造が始まり、装備が実際に基地に搬入されるまで4~5年かかる。

自衛隊がそれを受領して、運用試験など各種試験を終えるのに更に約1年がかかる。


 その間、同時並行的に隊員の教育訓練が米国や国内で実施される。その後、配備完了した装備でもって実地に

急速錬成を実施し、不具合を是正するのに更に時間がかかる。


 今年度導入が決定されても、現実の迎撃能力を発揮できるようになるまで最短でも5~6年の歳月が必要なのだ。


 では、5~6年先の北朝鮮情勢を正しく見通せるのだろうか。その時にはイージス・アショアが不要な情勢だと

誰が現時点で言い切れるのか。


 今後の米朝交渉の結果、更に情勢は好転すると誰が保証できるのだろう。今、イージス・アショア導入を

中止したとして、仮に再び状況が緊迫した場合、その時点で導入を再決定しても対応はもう間に合わない。


 金正恩朝鮮労働党委員長の意図は一夜にして変わり得るが、防衛力整備には最低でも約5年はかかるという

基本的知識が欠けていると言わざるを得ない。

 

 この記事では、「短期的な警戒緩和と中長期の対応は別、ということだ」と一応述べている。しかしながら続けて「それなら米朝協議の行方を見てから中長期の方針を決めてもいいはず」と述べる。

 無責任に過ぎないだろうか。繰り返すが、米朝協議の行方は一夜にして怪しくなり得るが、装備の実戦配備には5~6年かかるのだ。

 米朝首脳会談が終わったが、現時点では状況は何にも変わっていない。「非核化」は全く進んでいないし、見通しすら立っていない。


北朝鮮の核廃棄は全く進んでいない

 北朝鮮が日本を射程に収めるミサイルを数百発保有している現状に変化はないし、核弾頭を約60発

(米国防省情報局DIA情報)保有しているという状況が変わったという情報もない。


 これまで核、ミサイルに対する懲罰的抑止を米国の拡大抑止に依存してきた。独立国として実施すべき拒否的

抑止については、イージス艦とPAC3の2層によるミサイル防衛体制を構築してきた。


 ミサイル防衛体制の核となるイージス艦については、隻数も限られ、常時日本海に張り付けておくことは極めて人的、

物的負担が大きい。


 このため、早期改善が喫緊の課題であった。この解決策としてイージス・アショア導入があるのであり、

この必要性については、今でも何ら変わりはない。

 

 米朝首脳会談後の「非核化」については、交渉が緒に就いたばかりであり、その成否について全く言える段階にはない。

こういう状況にあって、なぜ「警戒縮小」と「システムは配備拡大」が「矛盾」と言えるのだろう。


 むしろ「情勢は変わってきている」と能天気に断定し「住民を軽視している」と述べる両県知事に対し、

少しでも防衛力整備に識見があれば、これをたしなめる記事を書くのがクオリティー・ペーパーなのではないか。


 そもそも北朝鮮は核を廃棄するのだろうか。筆者は金正恩委員長が核を全廃することはないとみている。

今、北朝鮮の核ミサイルに対する日本を覆う雰囲気は楽天的過ぎる。

 

 核は金王朝の「体制保証」には不可欠のツールである。北朝鮮は1960年代から、金王朝3代にわたり文字通り

国家総力を挙げて核とミサイルの開発にあたってきた。


 膨大な資源を投入し、数万人以上といわれる餓死者を出しながらも開発を継続してきた核兵器は、北朝鮮では

「宝剣」と呼ばれている。


 他方、核とミサイル開発に国防予算の大半を費やした結果、通常兵器の、旧式化、陳腐化は著しく、もはや現代戦を

戦える能力はない。

 

核がなければ戦えない北朝鮮

 注目すべきは約20万人と言われる精鋭な特殊部隊くらいだが、これとて制空権のないところで現代戦は戦えない。

せいぜいゲリラ戦くらいが関の山だ。


 現在の通常戦力だけでは北朝鮮は守れない。核がなければ、いわば「非武装」に近い状態であり、金王朝体制を

守る術はない。


 恐怖政治の独裁者がまさか「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」自分の安全保障を確保しようと

考えるわけはないだろう。


 2016年夏に亡命した元駐英北朝鮮公使太永浩は「1兆ドル、10兆ドルを与えると言っても北朝鮮は核兵器を

放棄しない」と述べている。


 北朝鮮の核、ミサイルが金王朝体制の存続と不可分である以上、いくら米国が「安全の保障」を約束したところで、

核を削減することはあっても、全廃することはないに違いない。


 ましてドナルド・トランプ大統領は「イラクの核合意」や「パリ協定」を反故にした張本人である。彼の言葉を

真に受けるほど、金正恩委員長はナイーブでない。

 

 しかも2年数か月後には別の人物が大統領かもしれない。「合意」など大統領が変われば紙屑同然になると

思っていても不思議ではない。


 今後北朝鮮は、核とミサイルの実験をしないことは受け入れるかもしれない。だが「非核化」を装いつつ、

核兵器、弾道ミサイルの一定数の隠匿を図るに違いない。


 米国が主張する「完全かつ検証可能で不可逆」というCVIDには盲点があり、隠匿が可能なのだ。

 

 CVIDは北朝鮮の正直な申告が前提である。意図的な申告漏れを防ぎ「完全な廃棄」を達成するには、

米情報機関の独自情報にもとづく特別査察が不可欠である。

 

北朝鮮に対する米国のHUMINT能力は皆無

 問題は今の米国にはこの能力が極めて限定的であることだ。


 日本ではメディアを含め、米国の情報能力を過大に評価し過ぎている。紙幅の関係上、要点にとどめるが、

冷戦後の情報機能の大幅縮減と偵察衛星能力の過大依存によって、北朝鮮に対する米国のHUMINT

(Human Intelligence)能力は皆無に近い。


 CVIDには、「意図的な申告漏れ」を暴くためのHUMINT能力は不可欠である。リビアでCVIDが成功したのは

英国MI-6のHUMINT能力に負うところ大だった。


 だが、北朝鮮においては、米国はその能力をほとんど有しない。このため、CVIDには必ず抜けが出てくる。

これを金正恩委員長は熟知しており、この盲点を突こうとしているのだ。


 今後、盲点を残したまま「非核化」作業が進み、米朝が「非核化完了宣言」をする時が来るかもしれない。


 そして平和条約を結んだ後、しばらく経ってから核保有を仄めかし、イスラエルのような形で事実上核保有国として

認めさせる。こういうシナリオを金正恩委員長は描いているのではないだろうか。

 

 核兵器は数発もあれば、旧式化した通常戦力を補って十分に抑止力たり得る。亡命元駐英公使の太永浩氏も

「(北朝鮮は)核放棄ではなく核軍縮に向かっている」と指摘しているが、「金王朝の体制保障」という

至上命題のためには核は不可欠なのである。

 

 安全保障に「想定外」はあってはならない。日本の安全保障を考えるうえでは、決して北朝鮮は核を削減はしても、

核全廃はしないと見ておく必要がある。


 こう考えるとき、米朝首脳会談が終わったからイージス・アショアの導入は一時中止すべきだという論調はいかにも

能天気、非常識、かつ無責任ですらある。

 

 また記事では「納得しにくい説明になるのはなぜか。別の理由があるからだ」と述べ、「トランプ米大統領は

巨額の対日貿易赤字の解消のため、日本に防衛装備品の購入を迫っている」「イージス・アショアはその目玉」と

主張する。

 

中国を念頭に置くのは当然だ

 こういう面があることを筆者は否定しない。だが「情勢認識と防衛力整備」に関する認識に根本的な誤りあるので、

「牽強付会」あるいは「勘繰り」との誹りは免れない。


 さらに記事は「軍備増強を進める中国の存在」があると続ける。


 「イージス・アショア導入を決めた際、小野寺氏はイージス・アショアについて『巡航ミサイルにも十分な能力を

発揮する可能性がある』と語った。日本を脅かす巡航ミサイルの保有国は中国以外にない」と、さも特別なことが

隠されているかのように書く。


 10年先を見通し、長期的視点に立って実施しなければいけない防衛力整備にあって、「対中国が念頭にある」のは

当然である。


 そもそも装備を導入するにあたって、単一の目的に限定して導入することはほとんどない。できる限り情勢の

変化にも柔軟に対応できるよう考慮するのは防衛力整備の「イロハ」である。


 記事はまた「イージス・アショアの購入費は2基で2000億円規模、レーダーなどを含めると倍以上かかる」と

センセーショナルに書きたてる。

 

 だが、専守防衛を国是とする日本にとって、拒否的抑止能力を確保するうえで他に手段がなければ、少々高くても

導入するしかない。


 また「2000億円」が荒唐無稽な額なのかどうかは、全体の防衛力整備から判断しなければならない。

過去の防衛力整備と比較すれば、決してそうでないことは容易に分かるはずだ。


 それを「日本の財政は厳しい。巨額支出をどう説明し、対中防衛をどう整備していくか。北朝鮮の非核化が進んでも

悩ましい課題になる」と結ぶ。


 まるで55年体制時によくあった「為にする」記事のようだ。単なる防衛力整備に関する見識不足だけなのかも

しれないが。


 防衛力は国民の理解なくして整備できない。そのためには国民に正確な情報を伝える必要がある。

その意味でメディアの役割は極めて大きい。


 安全保障や軍事に関しては、専門家以外はなかなか分かりにくいものだ。


 メディアにあっては、社会の木鐸としての重要性を自覚し、「為にする」記事ではなく、国民に正確な知識が

普及するような記事を書いてもらいたいものだ。




 織田 邦夫::元・空将。1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職。

 

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織田氏指摘の某新聞の記事 

 北朝鮮のミサイルに対しては警戒態勢を縮小し、その一方で新たなミサイル迎撃システムを導入する。

北朝鮮の非核化を合意した米朝首脳会談が終わった後、日本政府が矛盾するかのような対応をしている。

北朝鮮だけを見ていると理由は分からない。米中2大国の動向がポイントだ。


 小野寺五典防衛相は6月22日、山口、秋田両県を訪ねた。陸上配備型の迎撃ミサイルシステム

「イージス・アショア」を配備する候補地だ。小野寺氏は両県に「北朝鮮の脅威は変わっていない」と

必要性を繰り返した。


 その日の午前中、東京では菅義偉官房長官が首相官邸での記者会見で違う話をしていた。北朝鮮の弾道ミサイル発射に

備えた住民の避難訓練を「当面は中止する」と発表した。6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮が非核化に合意し、

ひとまず懸念が遠のいたからだ。


 イージス・アショアの候補地の知事はすぐに反発した。山口県の村岡嗣政知事は「情勢は変わってきている」、

秋田県の佐竹敬久知事は「住民を軽視している」と配備に疑問を呈した。訓練中止と「脅威は変わらない」との説明は、

両県にとっては相反してみえる。


 政府全体の警戒態勢も緩和した。6月末には、2016年夏から24時間態勢で続けてきた日本海でのイージス艦による

ミサイル監視を一部解除した。16~17年に40発も北朝鮮のミサイルが発射された状況は、しばらく想定しにくいからだ。


 政府はこう説明する。

 米朝の対話が進む間は、ミサイル発射の可能性は乏しい。それでも北朝鮮は日本を射程に収めるミサイルを数百発

保有している。米朝の交渉の行方は分からず脅威はまだある。だからイージス・アショアは必要だ――。


 短期的な警戒緩和と中長期の対応は別、ということだ。それなら米朝協議の行方を見てから中長期の方針を

決めてもいいはず。納得しにくい説明になるのはなぜか。別の理由があるからだ。


 一つは同盟国・米国との関係だ。トランプ米大統領は巨額の対日貿易赤字の解消のため、日本に防衛装備品の

購入を迫っている。イージス・アショアはその目玉だ。政府が導入を閣議決定した昨年12月ごろまでは北朝鮮の

ミサイル発射が続いていたが、その時点で既にトランプ氏の意向がささやかれていた。北朝鮮の脅威が変わったから

といって撤回すれば、貿易摩擦の問題が残る。


 トランプ氏は在韓米軍の将来的な撤退・縮小にも言及している。防衛省内には「在日米軍を減らすと

言い出すのではないか」との声もある。いかに日本周辺での米国の関与を残すかも、日本には重要だ。

トランプ氏は同盟国の「応分の負担」が持論だ。日本のミサイル防衛の強化は、日本を守る米国の負担減になる。

米国への配慮を示す狙いも透ける。


 もう一つ、政府内では公然の事実ともいえる理由がある。軍備増強を進める中国の存在だ。


 中国は射程が1万キロを超す長距離弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などを保有する。

巡航ミサイルを搭載する爆撃機も日本には大きな懸念だ。軍事力は北朝鮮の比ではない。


 日本政府が対中国の懸念を直接表明することはない。イージス・アショア導入を決めた昨年の閣議決定時の文書にも

中国という言葉はない。だが小野寺氏はイージス・アショアについて「巡航ミサイルにも十分な能力を発揮する

可能性がある」と語る。日本を脅かす巡航ミサイルの保有国はどこか。防衛省幹部は小野寺発言を「対中国が念頭にある」

と解説する。


 日本は1990年代以降、北朝鮮への警戒を理由に米国の装備品購入を中心にミサイル防衛体制を整えてきた。

北朝鮮は日本上空を越えるミサイルの発射など、誰が見ても分かる危険性を示してきたからだ。

だが防衛相経験者からは「北朝鮮のおかげで対中国の防衛体制を整備することができた」との声も漏れる。


 対中国をあからさまにすれば、中国の反発は必至だった。米国への配慮がにじめば「対米追従」と批判を招く。

背景にいる米中の存在は、これまで北朝鮮の脅威でかすんでいた側面もある。


 政府内には「いまの説明は分が悪い」との意見がある。イージス・アショアの購入費は2基で2000億円規模、

レーダーなどを含めると倍以上かかる、との見方もある。日本の財政は厳しい。巨額支出をどう説明し、

対中防衛をどう整備していくか。北朝鮮の非核化が進んでも悩ましい課題になる。

 
 


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