韓国の財閥オーナーは好き放題…現代財閥に見る一族の食い潰し行為
韓国のオーナー経営者にとって、自分が所有する企業とは「食い潰すことになろうとも、資金を吸い上げるべき対象」になる。個人商店
なら、それはそれで良かろうが、上場企業でもオーナー一族による「食い潰し行為」が珍しくない。
彼らには、上場して創業者利益を手にした瞬間に、その企業は「私的所有物ではなくなった」という認識がない。あるのは「大切なの
は個人の資産」「信じ合え るのは親族だけ」といった伝統的価値観だ。そして、司法は「財閥の会長様」には、よほどのことがなければ
手をつけないから、韓国のオーナー経営者の腐敗は なくならない。
ここで採り上げるのは現代(ヒュンダイ)財閥だ。ネットを見ると、誤解している向きが少なくないようなので、ちょっと説明しておく。
現代建設を中核とした旧「現代財閥」は、金融危機と兄弟の対立によってバラバラになった。
おそらく「正嫡」だったからだろう。5男が「後継者」に指名されていて、現代商船、現代証券、現代エレベーター、北朝鮮観光を手掛け
る現代峨山などを束ねて、ここが「現代財閥」(本流)と名乗ってきた。
「現代自動車」「現代重工業」「現代百貨店」は、元は同じでも、今やまったく別の財閥だ。
「現代財閥」を継いだ5男は、金大中(キム・デジュン)政権下の「北送資金」疑惑の中で自殺した。そして、夫人の玄貞恩(ヒョン・ジョ
ンウン)氏が後を継 いだ。だが、現代商船も現代峨山も大赤字。ついに現代証券を売却することになり、その過程で事件は今年5月に
明るみに出た。
夫人の一族会社が複写機をリースで受け、それを現代証券に再リース提供する形にして、リース契約料の10%を取っていた。もちろ
ん、複写機会社は現代証券に複写機を直接設置する。親族企業はペーパー上の仲介で、居ながらにして資金を吸い上げていたのだ。
さらに、傘下の陸送・宅配会社である現代ロジスティクスは、発送状を別の一族企業を経由して購入する形にして、市価よりも
12~45%も高く支払ってい た。現代ロジスティクスは2014年にロッテに売却されたが、それまでの2年間で一族会社は14億ウォン
(約1億2590万円)も吸い上げていた。
公正取引委員会は、現代証券と現代ロジスティクスに対し、「特定企業に対する不当支援」をしたとして罰金を科したが、玄氏一族が
処罰されたとの報道はいまだにない。悪いのは吸い上げられた奴ということになる。
大赤字の現代商船は、6月に満期が来る8000億ウォン(約719億9200万円)の社債を、(1)半額を出資金に転換(2)半額は3年
延長して3分割償還する-ことで債権者と話をつけたとされる。オーナー一族は持ち株の7分の1減資に応じただけで、逃げ切った。
現代エレベーターと、赤字が累積する現代峨山だけになっては、もはや公取委が定める大規模企業集団基準(資産規模5兆ウォン=
約4497億円)を満たせず「財閥」ではなくなったが、オーナー一族様は健在なのだ。現代商船の経理精査で何が出てくるかは分から
ないが…。
朴政権に“反省の色”なし AIIB副総裁から追放されても…
姫が会う人は皆、「よそ行きの顔」をしている。それでも人に会って話すと、直感的に「いい人」「悪い人」と判断して記帳しておいた。
実権者になった姫は「いい人」を次から次へ重臣に任命するのだが、失敗人事がやたら目立つ。
そして、ついには重用した人物が「失敗」どころか、「売国奴」だったことが明るみに出た。しかし、側近たちが姫に苦言を呈することも
ない。
姫とは、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領のことだ。
姫にとっては、大統領選挙の際、自分の選対本部に入ってきた人物は、ほとんど例外なく「いい人」だ。本当は「猟官の志」に満ち満ち
た人々なのだが…。
中でも、二流大学の教授だった洪起沢(ホン・ギテク)氏がよほど気に入ったらしい。
朴氏は2013年4月、彼を最大の国策銀行である産業銀行の会長に指名した。当時の裏事情を、中央日報(15年7月23日)は「参
謀陣が懸念・反対した が、強行した。西江(ソガン)大出身(筆者註=大統領と同窓)の洪氏は金融実務経験が一度もなかった」「夫人
の全成彬(チョン・ソンビン)教授が朴大統領 と親しいと伝えられた」と報じている。
この記事は、産業銀行が管理下に置く大宇(テウ)造船海洋の「巨額赤字隠し」が明るみに出た直後のものだ。
輸出入銀行は、産業銀行と並ぶ国策銀行だが、そのトップの無能さも、関係者の間では有名だったようだ。東亜日報(韓国語サイ
ト、14年11月25日)は 「洪起澤、李徳勲(イ・ドクフン=輸銀頭取)両氏が西江大学出身でなかったなら、果たして、その地位に就い
ただろうか」と、もう、あきれたと言わんばかり の筆致で述べている。
産業銀行に課せられた責務は造船、海運、製鉄、建設など構造不況業種の企業整理だ。しかし、産業銀行は不良融資を続行するだ
けで、洪氏は責任逃れにきゅうきゅうとした。
「構造改革は血が飛び散り、肉がつぶれる実戦だ。政界に立ち向かい、労組とのもみ合いもある。最初から白面の書生には手に負
えないこと」と、前掲中央日報は厳しく総括している。
さらに驚くべきことは、16年2月、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の副総裁に洪氏が送り込まれたことだ。もちろん、姫の意向が働い
ている。
韓国は米国の静止を振り切ってAIIBの大口出資国になった。AIIBの5人の副総裁の一角を握り、AIIB資金の使途を「韓国に有利」な
ように運ぶのが、韓国の狙いだった。
ところが、大宇造船に絡む産業銀行スキャンダルが次々と明るみに出る中で、“白面の書生”は本国政府に連絡もないまま6カ月の
休暇を取った。休暇入りから 1カ月としないうちに、AIIBは洪氏が担当していた「リスク管理担当副総裁」のポストの廃止を決めた。つ
まり、休暇中に追い出されたのだ。韓国は副総裁 ポストを失い、国際金融界に恥をさらした。まさに“売国奴”のなせる業(わざ)だ。
しかし、姫が責任を痛感しているとの報道はない。姫はいま、就任以来3度目になる大規模恩赦を実施して支持率回復を狙っている
らしい。嗚呼(ああ)、黄昏(たそがれ)の国の光景だ。