朴政権、米中双方から黙殺 北の核実験情報を知らされず…電話まで無視
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、厳しい立場に立たされている。13日には国民向け談話を発表したが、北朝鮮の4回目の核実験
(=北朝鮮は水爆実験と 主張)を自国で察知できなかっただけでなく、同盟国の米国と旧宗主国の中国の双方から、重視されていない
ことが明確になったのだ。近づく、経済危機の足音 と、国内メディアによる激しい政権批判。ジャーナリストの室谷克実氏が、朴氏の
「コウモリ外交」の終焉に迫った。
「新年早々、面白くないことばかりだ」
韓国の朴大統領の心の内は、こんなものではなかろうか。何よりも、北朝鮮が4回目の核実験をする兆候を、米国が教えてくれな
かったことだ。慌てて、中国の 習近平国家主席に電話したが、出てくれない。米国、中国双方からコケにされてしまったのだ。気位高い
朴氏にとっては一番こたえることだ。
加えて、上海株の続落や人民元の切り下げの悪影響が、対中依存度の高い韓国にヒシヒシと押し寄せてきている。日本との慰安婦
問題に関する「不可逆的合意」 に対する国民の反発は依然として収まりそうにない。内需は湿ったまま、輸出も不振が続行しそうだ。
良いこと何もない「朴槿恵・韓国」の年明けだ。
朴氏は元旦、国立墓地を参拝した際、「朝鮮半島の平和統一を成し遂げ、世界平和に寄与する2016年になることを願う」と記帳し
た。それから1週間とたた ないうちに、北朝鮮が「水爆実験に成功した」と発表した。「知っていたら、そんな記帳をしなかったのに」と地
団駄(じだんだ)を踏んだはずだ。
米国は昨年末には兆候をつかんで、観測機を飛ばしていた。米国の圧力を受けて、慰安婦問題に終止符を打つ日本の提案をのんだ
直後には、「これで日米韓の連携がスムーズになる」と米国高官は語っていたのに、何も教えてくれなかった。
きっと、「オバマ、憎い!」だろう。
韓国はここ何年も中国に対して、「国防省の間にホットラインを開設しよう」と要求してきた。ようやく、15年の大みそかに、それが開
通した。
が、核実験の報を聞き、韓民求(ハン・ミング)国防相がホットラインで呼びかけたが、中国の国防相は電話口に出てこなかった。尹
炳世(ユン・ビョンセ)外相は8日になって、ようやく中国の王毅外相に電話が通じたが、北朝鮮制裁に関する言質は何も取れなかっ
た。
こんな状態だから、朴氏と習主席の電話もつながらないまま、すでに時機を逸してしまったといえよう。
「朴政権はこれまで中国との信頼関係構築に大きな努力を傾けてきたが、今のこの状況については『本当に重要な時には両国間に
大きな壁があることが露呈した』との指摘が相次いでいる」とは、保守系の朝鮮日報(1月9日)の記事だ。
中国の“居留守外交”に対し、「西側でただ1人、天安門の軍事パレードに立ってやったのに…」といった思いが伝わってくる記事とい
える。
《東亜日報(日本語版)も12日の社説で、朴政権が自画自賛した外交成果について、『このような評価は虚構であることが明らかになっ
た』と指摘した。中央 日報(同)も同日の社説で、北朝鮮の核実験を察知できなかったことなどを、『これが外交と安保で成果が大きい
と自評する保守政府がする話なのか』と厳しく 批判した》
韓国の情報機関と軍部が、何一つ、情報をつかんでいなかったことも、朴氏にとっては腸(はらわた)が煮えくり返る思いだろう。
昨年12月23日、尹氏は「世界で米国と強い関係を維持しながら中国とも最上の関係を維持する国はいくつもない。戦略的な資産と
してこれを活用しなければいけない」と“コウモリ外交”を自画自賛した。
しかし、2つの大国を手玉に取っていると思っていたら、2つの大国からコケにされていた。2つの大国の気を引く道は、責任ある当局
者が「韓国も核兵器を持つ準備に入る」と公言してみせることぐらいしかないかもしれない。
まだ続くコウモリ外交 アングロサクソンの価値観は某3国には通用しない
「鳥に左右両方の翼があるように、米国とも中国とも同時に親しい『親米で親中』は、なぜいけないのか」
これはおそらく、東アジア関係史に100年ぐらいは残る発言になる。語ったのは、韓国外交省の林聖男(イム・ソンナム)第1次官だ。
16日に東京で開かれた日米韓外務次官級協議の後、いわば「コウモリ外交のどこが悪い」と韓国人記者団の前で開き直ったのだ。
つまり、朴槿恵(パク・クネ)政権は、これからも米中コウモリ(二股)外交を続けますと宣言したといえる。
思うに、米国はまさにアングロサクソン的論理思考で、(1)東アジアでは、中国を封じ込めるため日米韓3カ国同盟を強化したい(2)
それができないのは、日韓に「慰安婦問題」があるからだ(3)慰安婦問題さえ解決できれば、すべてうまくいく-と考えたのだろう。
アングロサクソン的思考では「条約」「協定」「合意」…名称が何であれ「約束」は守らなくてはならない。日本の武士道と同じだ。いや、
日本では武士だけではなく、農民、町人も「約束」を重視した。だから、紙切れに過ぎない「為替」「手形」が、江戸時代に流通したのだ。
しかし、中国と韓国、北朝鮮の「特定アジア3国」は違う。この現実を、米国中枢はどれだけ苦汁をなめさせられても理解できない。
前述の(1)~(3)の論法で行けば、韓国は慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決」したのだから、3カ国同盟の一翼を担わなけ
ればならない。
だが、現実は「鳥に左右両方の翼があるように…」なのだ。
北朝鮮の「水爆実験成功」との発表に、韓国は慌てふためき、中国に対して、朴大統領と習近平国家主席の電話会談を申し入れた
が、応じてもらえなかった。韓 国国防相は、2015年の大みそかに開設した「中韓ホットライン」を使って、中韓国防相会談を呼びかけ
たが、中国の国防相は出てこなかった。
つまり、重要な時になったら「居留守外交」で“あしらわれた”のだ。そこまで屈辱を味わっても、韓国は中国に反抗する意思もないの
か。
ないのだ。ないからこそ、政府高官が「鳥に左右両方の翼があるように…」と語っているのだ。
先の「日韓合意」は、多くの日本人にとって「憤懣(ふんまん)やるかたなし」だった。それでも冷静に見れば、日本国としては手にすべ
きものは手にした。一方で、米国の東アジアに対する思惑は早々と潰れた、
韓国という国は、2つの宗主国にどれほどコケにされようと、間を飛び回るコウモリなのだ。そのうえ、コウモリであることを、何ら恥ず
べきことと思っていない。
日本が「なすべきこと」は2つある。
1つは、米国に対して「アングロサクソンの価値判断は『特ア3国』には通じない」と教えることだ。もう1つは、日本自身が「韓国=属国
DNAに染まり切った国」と見限って、その対処方針を確定することだ。
室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派 員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、 「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。