政府、国境離島の私有地調査…安保強化へ保全策
政府は今年度、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の基点となる国境離島の私有地に関する初の実態調査を実施する。
「保全上重要な土地」を指定する制度を作り、土地の保全策を講じる方針だ。安全保障上の脅威になり得る土地取引の監視を強め、
領海の保全や海洋権益の確保を図る狙いがある。
調査は、今後5年間の海洋政策の指針となる次期海洋基本計画の柱の一つである「国境離島の保全管理」の具体策として実施する。
調査対象は、全国に525島ある国境離島のうち私有地がある98島。内閣府が今夏までに有識者会議を設置し、
「保全上重要な土地」の定義を決める。具体的には、海岸沿いの陸地のほか、水源地や空港・港湾、発電施設などの周辺地が
対象となる見込みだ。この定義に当てはまる私有地を優先的に調査し、不動産登記の情報から所有者や取得原因などを把握する。
政府は調査結果がまとまり次第、土地の保全策の検討も進める。自民党では「保全上重要な土地」を取得する場合は、
届け出制とする案などが浮上している。
政府が国境離島の私有地を調査するのは、住民が手放した土地の一部が外国人や外国資本に転売されている例もあり、
安全保障上の懸念が高まっているためだ。例えば、長崎県・対馬では、海上自衛隊基地に近い土地を韓国資本が購入している。
国境離島では過疎化が進んでおり、外国資本による土地取得が加速することも予想される。
このため、自民党からは「実態把握を急ぎ、外国人による密漁や防衛施設への通信傍受などを防ぐべきだ」と政府に対策を
求める声が出ていた。
政府は3月末までに、国境離島を含む全国の自衛隊・米軍の関連施設約650か所について隣接地の所有状況を調査し、
運用に支障はないことを確認した。今回の調査では、防衛施設周辺以外の土地を対象とする。
政府は国境離島の保全管理のため、2014年8月、離島のうち名前がなかった158島に命名したほか、17年4月施行の
有人国境離島地域保全特別措置法に基づき、経済支援などを実施している。
◆国境離島=領海やEEZなど国の外縁を根拠づける離島。全国に525島ある。有人国境離島地域保全特別措置法は、東京都の小笠原諸島や沖縄県の八重山諸島など29地域・148島を「有人国境離島」に指定し、保全の対象としている。このうち、長崎県の対馬や島根県の隠岐諸島など15地域・71島は「特定有人国境離島地域」に指定され、航路・航空路の住民運賃の引き下げなどの支援策が講じられている。