新型肺炎、「緊急事態宣言出すな」 中国が圧力と仏紙報道
2020.1.30 23:21 産経新聞
【パリ=三井美奈】中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、
30日付のフランス紙ルモンドは中国政府が世界保健機関(WHO)に対し、
緊急事態宣言を出さないよう圧力をかけたと報じた。
WHOは22、23日の緊急委員会で、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」
の宣言を行うかどうかを議論した。同紙によると、日米中仏などの委員や顧問の
計21人に加え、オブザーバーとして中国などの大使が会合に招かれたとみられる。
その場で、中国代表が「宣言は問題外」だと強く主張したという。
緊急事態が宣言されると検疫強化や渡航制限などの措置がとられ、経済的な影響が
大きい。同紙は、「中国の強い反対を受け、政治的配慮が科学論議に勝ったようだ」と
評価した。
【北京=西見由章】新型コロナウイルスによる肺炎の感染拠点となった中国湖北省
武漢から各国がチャーター機で自国民を退避させている措置について、中国当局には
そうした動きを拡大させたくない本音がにじむ。外国人の脱出が相次ぐ事態は、
中国の対応能力に対する国際社会の不信感を国内外に示すことにもつながりかねない
ためだ。
「自国民の撤収を希望している国もあるが、世界保健機関(WHO)はこうした
ことは主張しない。過剰反応は必要ない」。中国外務省によると、WHOのテドロス
事務局長は28日、北京で会談した王毅国務委員兼外相にこう語った。
外国や国際組織の要人との会談で、中国に有利な内容を相手側から引き出し、
強調して発表するのは中国当局の常套(じょうとう)手段だ。特に力関係で自国が上と
判断している場合、その傾向は顕著になる。
テドロス氏はエチオピアの元保健相、元外相だ。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の
下でエチオピアに鉄道建設など多額の投資をしている。また中国に協力的な外国要人は、
引退後も中国の友人として手厚くもてなされる。テドロス氏は「中国の体制の力強さと
措置の有効性はまれに見るもので感服する」と述べ、中国の政治体制の賛美まで行う
サービスぶりだった。
駐インド中国大使の孫衛東氏は28日、テドロス氏の「過剰反応」発言を引用した
上で「WHOは中国が感染拡大を防ぐ能力があることを確信している」とツイート。
インド政府が自国民退避に向けた協力を中国側に求めている中での発言だけに
「中国政府は明らかにインドの退避措置を思いとどまらせようとしている」
(インド・メディア)と不満の声が上がっている
WHOが「国際緊急事態」宣言 中国新型ウイルス
2020年1月31日 5:17 発信地:ジュネーブ/スイス AFP
スイス・ジュネーブで記者会見した世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長(2020年1月30日撮影)
【1月31日 AFP】世界保健機関(WHO)は30日、中国で発生した新型コロナ
ウイルスについて、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。WHOによる
同宣言はまれで、発令によりウイルスの拡大防止に向けた国際協力態勢が改善する
可能性がある。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)
事務局長はスイス・ジュネーブで開いた記者会見で、「われわれの最大の懸念は、
ウイルスが医療体制の脆弱(ぜいじゃく)な国々に広がる恐れだ」とし、
「これは中国に対する不信任投票ではない」と述べた。
航空各社はウイルスの拡大を受けて中国発着便の運航を停止しているが、
WHOは中国との間で渡航や貿易を制限する「理由はない」と指摘。
テドロス事務局長は、渡航・貿易について「WHOはいかなる制限も推奨せず、むしろ
反対する」と述べた。