イスラエル、シリアでイランの防空システムを攻撃。米に事前通知
【ワシントン】イスラエル軍は先週、米国の暗黙の支持を得てシリアにあるイランの先進的な防空システムを攻撃した。
この件の概要を知る情報機関の職員などが明らかにした。
ドナルド・トランプ米政権がイスラエルと協力して、中東におけるイランの影響力拡大を阻止しようとしていることが改めて
うかがえる。
同職員らによると、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はトランプ氏と協議した上で、新たに配備されたイランの
防空砲台への攻撃を命じた。シリアで軍事作戦を実施しているイスラエルの戦闘機に対しイラン軍がこれを使えないようにするためだ。
また、イスラエル当局者は事前にトランプ政権へ今回の攻撃計画を伝えていたという。
イスラエルの指導者たちは攻撃について沈黙を守っているが、ロシア、イラン、シリアはいずれも同国の攻撃実施を非難した。
情報当局から提供された情報や攻撃について説明を受けた関係者の話からは、具体的な標的やイスラエルの狙い、
同国と米政府との協議について新たな詳細をうかがい知ることができる。
イスラエルはイランによるシリアでの軍事プレゼンス確立を阻止しようと取り組んでおり、先週の攻撃はそれが大幅に
エスカレートしたことを物語る。イランと同国が後ろ盾になっているイスラム教シーア派武装組織ヒズボラはシリアの
バッシャール・アサド大統領にとって不可欠な支援を提供している。
イランの拠点:イランはシリア各地に拠点を置いている(緑の点)
イランはイスラエルへの反撃をちらつかせており、イスラエルはイランとの衝突拡大に備えている。こうした中東2カ国の
対立が長期化すれば、シリアに新たに危険な力関係が生じる可能性がある。トランプ氏は、すぐに終結する兆しの見えない
シリアでの衝突に米軍がこれ以上巻き込まれないようにする手だてを探っている。
一部の米当局者は、シリアにおけるイスラエルとイランの戦闘拡大で、レバノンとイスラエル一帯で新たに突発的な衝突が引き
起こされかねないことを懸念している。
同地域ではシリア内戦を巡って対立する連帯組織や同盟諸国の思惑が複雑に絡み、混乱を極めている。イラン、ヒズボラ、
ロシアはアサド大統領が反政府勢力を敗北寸前に追いやる手助けをしている。一方、2000人を超える駐留米軍部隊の任務は
クルド人やアラブ人勢力と協力し、過激派組織「イスラム国」(IS)を掃討することだ。そして、クルド人の勢力拡大阻止を狙う
トルコ政府はシリアのクルド人支配地域を制圧している。
米国のイスラエルの攻撃への支援は、終わりの見えない中東の争いに警戒を強めるトランプ氏が、イスラエルとサウジアラビアを
中心とする同盟国により大きな役割を担うよう要請しているタイミングで行われた。
イランは、同国がシリアで拠点確立を狙っているとの見方を否定しているが、アサド政権を守るため軍隊を引き続き駐留させると
述べている。
米国とイスラエルの協議に詳しい関係者によると、トランプ氏は昨年大統領に就任して以来、ネタニヤフ氏と協力し、
イランのシリアへの派遣部隊を標的にしたイスラエルの取り組みに戦略的な支援を提供している。
ネタニヤフ氏は2週間前にトランプ氏に電話をかけ、イランとシリアについて協議した。ホワイトハウスは詳細には言及せず、
両者が「イランの有害な影響に反撃し、活動を不安定化させるために引き続き密接に協調していくことで合意した」と述べた。
両者の通話について説明を受けた関係者の1人によると、ネタニヤフ氏はトランプ氏にイランの拠点を攻撃する計画について
伝えたという。しかし、イスラエルと米国いずれの当局も詳細は明らかにしなかった。