人工肉バーガー人気、パテ供給業者はうれしい悲鳴
2019 年 6 月 5 日 13:24 JST WSJ By Jacob Bunge and Heather Haddon
TGIフライデーズの「ビヨンド・ミート・バーガー」
米ファストフードチェーンが、割高でも人工肉バーガーは客足や売上高を伸ばすとの期待から
投入を急いでいるのに対し、人工肉の供給業者は注文を満たすのに苦労している。
ビヨンド・ミートとインポッシブル・フーズが生産する人工肉は、ファストフード店によると
米各地の飲食店2万店近くで販売されている。調査会社テクノミックが6000業者のメニューを
調査したところ、3月の時点で米飲食店の15%が人工肉バーガーを提供しており、提供する店舗は
前年から3%増加した。ベジタリアン向け商品の導入は、環境に優しくヘルシーな商品を求める若い
消費者を呼び込もうとするファストフードチェーン間の競争を反映している。
ホワイト・キャッスル・システムは、インポッシブル・フーズの牛肉代替品を使用した商品を
最初に投入した大手チェーンのひとつ。「インポッシブル・スライダー(ミニハンバーガー)」
発売から2カ月で既存店売上高の成長率が4ポイント上昇した。ある幹部は同商品の発売が
主因だとみている。
過去1年半にビヨンドやインポッシブルの商品を導入したチェーンにはこのほか、TGIフライデーズ、
デル・タコ・レストランツ、CKEレストラン・ホールディングス傘下のカールズジュニア、
レッドロビン・グルメバーガーズなどがある。
ビヨンドとインポッシブルは急増する需要への対応に苦慮している。それでも投資家は、両社が
植物性食品を大量供給できると信じている。ビヨンド株は5月の新規株式公開(IPO)価格の
約4倍に上昇し、時価総額は60億ドル(約6487億円)に達している。
インポッシブルは同月にベンチャーキャピタルから3億ドルを追加調達し、2011年の調達以降の
累計調達額が7億5000万ドルとなった。
開発業者によると、新世代の人工肉バーガーは植物性プロテインやでんぷん、その他の材料を
操作することで、かつての「豆・キノコ」バーガーから進歩している。その結果生まれたバーガー
などの商品は、ジュージューと焦げる音や焼き色ばかりか「肉汁」まで牛肉そっくりだ。
必要な穀物や水やエネルギーは家畜を育てるのに比べればわずかだが、生産コストは相対的に
高いままだ。ビヨンドの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のイーサン・ブラウン氏によると、
同社商品を使ったバーガーのコストは標準的な牛ひき肉バーガーの2倍といったところだ。
インポッシブルによると、同社のバーガーのコストも牛ひき肉バーガーより高い。
米ファストフードチェーン全体として客足が減るなか、植物性バーガーは客足の増加に貢献してきた。
調査会社インマーケットによると、バーガーキング全体では、4月の来店者数が平均で前月比
2%減少したのに対し、「インポッシブル・ワッパー」を提供し始めた店舗に限ると17%増加した。
バーガーキングの広報担当者はインポッシブル・ワッパーが提供店舗の客足を押し上げていると
述べた。親会社のレストラン・ブランズ・インターナショナルのホセ・シルCEOは最近の
インタビューで、肉の代替品の売上高が引き続き伸びるとの見方を示した。
人工肉バーガーは割高なコストに見合わないと考える飲食店幹部もいる。
アービーズ・レストラン・グループのロブ・リンチ社長はインタビューで、代替品ではなく肉を
提供して他社と競合していると述べた。「人は味が劣る商品に高い金額を出そうとはしない」と
話している。
マクドナルドは最近、フィンランドとスウェーデンでビーガン向けの商品を投入したが、
米国で肉の代替品を提供する計画は今のところないとしている。
ホワイト・キャッスルがインポッシブルのパテで作るバーガーは、コストが同社の普通の
スライダー(0.90ドル)より約1ドル高く、利幅は薄い。だがそうしたバーガーを含む購入の
金額は全体として高めだ。肉を食べる客が元祖スライダーに追加することが多いと幹部は話している。
また、食べられるファストフードが少ないベジタリアンにとっては、ホワイト・キャッスルが
割安な選択肢になっているという。
フロリダ州のチェルシー・ドノバンさん(31)は「味に打ちのめされている」、「注文するたびに、
間違って牛肉を使ったのだと思ってしまう」と述べた。
バーガーキング向けの植物由来パテを量るインポッシブル・フーズの製品開発部員
昨年夏、A&Wフード・サービシズ・オブ・カナダの店舗でビヨンドのバーガーが数週間にわたり
品切れとなった。この春には、シカゴ周辺のアメリカン・ワイルドバーガーなどの店舗で
インポッシブルのバーガーが払底した。
インポッシブルは不足について飲食店に謝罪した。広報担当者は大型チェーンを優先しては
いないと述べ、配送会社400社を通じて販売をしているためその方法にはコントロールが効かないと
付け加えた。
ビヨンドはこの1年にミズーリ州に新工場を開設し、食品メーカー3社を採用するなどして
生産能力を3倍に増強し、現在は約1万1000店の飲食店に供給をしているとブラウンCEOは述べた。
同社は5年以内に、価格を牛ひき肉などに匹敵する水準に下げることを目指しているという。