【社説】米副大統領「北朝鮮の平昌拉致を深刻に受け止めている」
2018/01/25 11:06 朝鮮日報
韓国統一部(省に相当、以下同じ)の定例会見では最近「北朝鮮の言いなりにばかりなってもよいのか」といった質問が相次ぐよう
になった。24日には北朝鮮が平昌オリンピックの開会式前日に大規模軍事パレードを行うことが伝えられたが、これについても
「懸念を表明する計画はないのか」「韓米両国は合同軍事演習を延期したが、あまりにも低姿勢過ぎないか」などの質問が相次いだ。
同じような懸念は米国も抱いている。開会式に出席するペンス副大統領は「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が平昌
オリンピックのメッセージをハイジャックしないか深刻に懸念している」と述べたことが23日付のワシントン・ポストで報じられた。
その報道によるとペンス副大統領は「オリンピックが2週間の宣伝戦に変質しないようにしたい」とも語ったという。
平昌オリンピックを利用した北朝鮮の傍若無人ぶりはまさに度を過ぎているが、これをペンス副大統領も深刻に受け止めているのだ。
このままでは2月8日の開会式前日、平昌オリンピックの前夜祭は金正恩氏の独壇場になるだろう。平壌では核ミサイルを前面に
出した軍事パレードが行われ、江陵では北朝鮮の玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏率いる三池淵管弦楽団がオリンピック前夜祭の
ステージに立つ。しかしここまで配慮を示したからといって、金正恩氏が核開発を放棄することはあり得ない。平昌オリンピックを
利用して自分たちに対する制裁を無力化し、核保有を認めさせようとしているだけだ。平昌オリンピックは韓国国民が20年にわたり
苦労して誘致し開催にこぎ着けたものだ。ところがこのオリンピックまで拉致されるといった懸念が現実となり始めているのだ。
韓国政府による北朝鮮への「ご機嫌取り」は今も続いている。開会式では太極旗(韓国の国旗)を、女子アイスホッケーでは選手
たちの出場のチャンスを、またKORという韓国の英文標記も北朝鮮に差し出した。開会式のリハーサルには北朝鮮のテコンドー選手
たちを入れるよう要求されているという。玄松月氏に国賓級の待遇をしながら、本人が何かを語り笑う様子も報じてはならないとする
北朝鮮の指示に従った。玄松月氏の警護を担当した国家情報院の職員は「(玄松月氏は)困っている」と本人の気分を代弁している。
北朝鮮に配慮して韓米合同軍事演習を延期・縮小したばかりか、先日は米潜水艦の釜山入港まで認めなかった。韓国空軍のF35A導入の
イベントには韓国国防部長官のメッセージ読み上げを保留した。「斬首作戦」という言葉も今後は使えなくなった。
それだけではない。市民の抗議行動で警察は同盟国である米国の国旗を燃やそうとする行為は止めるだけで終わったが、
北朝鮮の人民共和国旗を燃やした団体に対しては捜査を始めた。
北朝鮮に行くべき何の理由もないスキー選手たちは、人権じゅうりんが問題視されている馬息嶺スキー場にわざわざ行かねばならない。
2016年に韓国へ亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使ら主な脱北者はオリンピック期間中に公の活動を自粛するよう求め
られたという。北朝鮮の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生日(2月16日)ごろには、ソウルで北朝鮮の宣伝部隊による
公演スケジュールが組まれるとの話も出始めている。韓国大統領府と与党「共に民主党」は「北朝鮮が参加しなければ
(オリンピックは)成功しない」と主張しており、北朝鮮は「平昌(オリンピック)はわれわれが救ってやった」と言っている。
平昌が平壌に拉致されたとの懸念の声が出るのも当然だ。
韓国政府は金正恩氏の機嫌を取りさえすば、それが核の廃棄に向けた対話につながると期待しているようだ。しかし過去20年を
振り返ると、それが単なる幻想にすぎないことは何度も証明されてきた。
米中央情報局(CIA)のポンペオ長官は23日「北朝鮮の核ミサイルは(実際の)攻撃用であり、金正恩氏の目標は自らの権力で
韓半島(朝鮮半島)を統一することだ」と述べた。ポンペオ長官は前日の22日にも「北朝鮮は数カ月以内に米本土を攻撃する能力を
持つようになるだろう」との見方も示している。CIAのトップが公の席で連日このように語るのを簡単に見過ごすわけにはいかない。
ポンペオ長官は「外交面での解決が不可能という結論に達するまで、われわれはさまざまな手段を大統領に提供する」との方針を
示した。これは北朝鮮だけを念頭に置いた言葉ではないはずだ。