中国、マラッカ海峡で異例の警戒強化 周辺国困惑
2019 年 7 月 12 日 07:44 JST
中国はマラッカ海峡を航行する自国船舶へ向け緊急レベルの警報を発した。海峡周辺の国々はこれに
困惑し、戦略的な意図が背後にあるのか解明しようとしている。
中国は今月2日、高レベルの海事警報を発した。こうした警報は通常、攻撃が近い場合など
非常事態に発せられ、商用船舶に保安強化を促すものだ。中国政府は今回の警報を発する根拠となった
危険に関し、詳細を明らかにしていない。
中国が海上輸送する原油の大半は、マレー半島とインドネシアのスマトラ島に挟まれたマラッカ海峡を
通る。このため、仮に紛争が発生し、米国など競争国が海峡封鎖を試みれば、中国にとっては戦略的な
弱点となる。
警戒レベルの引き上げを受け、中国が護衛艦を海峡に送り込む可能性が懸念されている。
中国外務省の報道官は、こうした臆測は「何の根拠もないうわさだ」と一蹴した。
耿爽報道官は今週、警報は「危険に備え、安全な海峡通過を確保する」目的だったと述べた。
アフリカ東岸などの海賊行為が発生しやすい地域では、最高の警戒レベルになることも珍しくない。
国際海事局(IMB)海賊情報センター(クアラルンプール)の関係者は、少なくともここ10年に
マラッカ海峡でそうした警報が発せられた例は思い出せないと語った。
東南アジア当局者は、警報の原因は「誰にも分からない」としている。
この当局者は、マラッカ海峡を囲むマレーシアやインドネシア、シンガポールといった国々が
同地域の安全に責任を負い、安全保障を維持していると説明した。
地域の国々は超大国のプレゼンスに警戒心を抱いている。インドネシアとマレーシアは2004年、
海賊行為やテロのリスクを緩和するため艦艇を派遣しようとした米国の提案に反対した。
一方、自由貿易が自国経済にとり極めて重要である都市国家のシンガポールは、提案を支持した。
だが米国の提案はついに実現することがなかった。
中国政府が自国の商用船舶を護衛する目的で軍の艦船を派遣するためには、
「海運に対する明白かつそこにある危険」を示す必要があるが、「そこにはない」とISEASユソフ・
イサーク研究所のシニアフェロー、イアン・ストーリー氏は語る。
マレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相は10日、ウォール・ストリート・ジャーナル
(WSJ)に対し、中国から警戒レベル変更の理由を示す通達は受け取っていないと述べた。
マラッカ海峡周辺国の外務省および海運当局の関係者は、新規あるいは差し迫った危険を示す
情報は一切ないとしている。中国に情報を問い合わせているが、返答はないという。