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海自の護衛艦いずも、九段線に接近 レーダーに機影

2017-06-24 21:17:46 | 軍事・兵器・訓練演習・自衛隊

海自の護衛艦いずも、九段線に接近 レーダーに機影

2017年 06月 23日 19:38 JST     REUTERS

護衛艦「さざなみ」(右)への給油の様子。

[護衛艦いずも艦上(南シナ海) 23日 ロイター] - 日本を出港して1カ月半がたった6月中旬、南シナ海に長期派遣

中の海上自衛隊のヘリコプター空母「いずも」が、航海の様子を報道陣に公開した。いずもはシンガポールから東南アジ

ア諸国の士官10人を乗せ、ヘリによる哨戒や訓練をしながら南沙諸島の方角へ航行。


中国が九段線と呼ぶ付近に差し掛かったところで、レーダーが同国軍のものらしき機影をとらえる場面があった。


<軍艦を派遣する意味>

「レーダー探知」──。いずも艦内のスピーカーから、くぐもった声が短く流れた。周囲を飛ぶ航空機を、レーダーが捕捉し

たことを知らせるアナウンスだ。国籍や飛来の目的は不明だが、いずもが航行していたのが九段線付近であったことか

ら、中国軍機の可能性があった。


中国は南シナ海の地図上に、九段線と呼ばれる破線を引き、その内側は自国の管轄権が及ぶと主張している。南沙諸

島や西沙諸島で岩礁を埋め立て、空港を建設するなどして軍事拠点化を進めている。


これに対し、米軍は人工島の周囲12カイリ(22キロ)以内に軍艦を派遣して中国の領海ではないとけん制する「航行の

自由作戦」(FON)を実施してきた。日本の自衛隊も、FONには参加しないまでも、徐々に南シナ海への関与を強めてい

る。全長248メートルと海自で最も大きく、最も目立つ護衛艦いずもを長期間派遣しているのはその一環だ。


軍艦はその国の領土の延長とみなされる。いずもを南シナ海に派遣すれば、そこに日本の国が出現したことになる。い

ずもが所属する第一護衛隊群(神奈川県横須賀市)の伍賀祥裕群司令は、艦内で取材に応じ、「プレゼンス(存在)を示

すために動いているばかりではない」としつつも、「結果としてそう映ることはあると思う」と語った。


「レーダー・ロスト(喪失)」。いずも艦内に再びアナウンスが流れた。レーダーに映った機影は、圏外に外れた。


<南シナ海で哨戒活動>

いずもが日本を出港したのは5月初め。同月中旬にシンガポールで国際観閲式に参加後、フィリピンへ寄港してドゥテ

ルテ大統領を艦上に招待した。さらに米空母ロナルド・レーガンとの共同訓練をこなし、シンガポールへ戻って6月19日

から23日まで報道陣と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の士官を乗せた。


海と空がまだ、暗闇に包まれている20日午前7時。遠くの空がときおり稲光で照らされる中、いずもの甲板から

SH-60ヘリコプター3機が飛び立った。ヘリコプターの任務は、船の進路や周囲に異常がないかどうかを確認するこ

と。いずものヘリコプターは1日に何度もこうした発着艦を繰り返す。


米軍は自衛隊が南シナ海で哨戒活動を行うことに期待を寄せるが、日本は東シナ海にも対応しなくてはならないとして、

遠く南シナ海で定期的に哨戒する計画はないとしてきた。


いずもの甲斐義博艦長も「パイロットの技量維持などの訓練もある」と述べ、全てが哨戒のための飛行ではないと説明

する。しかし、長期航海中のいずもが何度もこの海域でヘリコプターを飛ばすことは、結果としてその役割を果たすことに

つながる。


<同乗したASEAN士官>

今回のいずもの長期航海には、護衛艦「さざなみ」が同行した。2隻は波が穏やかな南シナ海上を、ときに近づき、とき

に離れ、陣形を組み替えながら航行している。大型タンクを備えるいずもから、ホースを伸ばしてさざなみに給油をする

こともある。


洋上を航行しながら給油をするには、2隻が速度と針路を合わせて並走しなくてはならない。両艦の間隔はわずか40

メートル。方位が1度でもずれれば衝突の恐れがある。21日午後、燃料が少なくなったさざなみに対し、いずもは150キ

ロリットル、ドラム缶750本分の軽油を2時間かけて給油した。


報道陣とASEAN士官が同乗中、いずもは捜索・救難や射撃、旗を使った通信の訓練も行った。10人の士官は訓練を

見学したほか、海洋法などの講義を受けた。日本側の狙いは、中国が南シナ海への進出を強める中、この海域で起き

ている情勢の認識や、国際法の順守の重要性をASEAN各国と共有すること。


タイ海軍のカシカン・テチャティラワ中尉は報道陣の取材に、個人的な意見とした上で「法の下では各国が平等でなけれ

ばならない。大国の発言が大きく、小国の発言が小さくあってはならない」と語った。


いずもは21日から22日にかけ、シンガポールの北東約500キロの海域に到達した。そのまま進めば中国の人工島が

ある南沙諸島に近づくが、そこで折り返した。日本は九段線の存在を認めてはいないが、その線をかすめた形だ。ロシ

ア軍との共同訓練のため、バルト海へ向かう中国軍の艦艇とすれ違う可能性もあったものの、遭遇することはなかっ

た。


いずもとさざなみはこの後、インド洋へ向かう。チェンマイに寄港し、7月10日から17日まで、米国、インドとの共同訓練

「マラバール」に参加する。