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ついに50%超え、80歳で20本の歯を保つ方法とは。 日本人の歯、歯周病関連は悪化の傾向も

2019-11-26 11:37:40 | 健康・糖質制限・ダイエット・衛生

ついに50%超え、80歳で20本の歯を保つ方法とは

日本人の歯、歯周病関連は悪化の傾向も

2019.11.22(Fri)    JBpres  漆原 次郎

大規模な調査により、「日本人の歯をめぐる状態」が詳らかになる。


 日本人の「歯」をめぐる状況はよくなっているのか、それとも――。

 厚生労働省が行っている「歯科疾患実態調査」では、直近の調査で、大きな目標とされる

「8020(はちまるにいまる)」、つまり80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が、初めて5割を

超えた。この成果のように、全体的にはよい傾向が見られる。


 だが、その反面、高齢になるにつれて、いくつかの「歯の問題」を抱える人の率が増えている

傾向も見られる。調査結果や立てられている目標などから、「自分の歯で8020を実現できそうか」

を考えてみたい。

 

約2人に1人が硬いものを生涯、食べられる時代

「8020」は、「80歳になっても自分の歯を20本以上保つ」ということ。およそ20本以上の歯が

残っていれば、硬い食べものでもほぼ満足に噛むことができることを示す科学研究や、愛知県の

住民を対象に行われた疫学的調査などから、「8020運動」が1989(平成元)年から、当時の厚生省

(現・厚生労働省)と日本歯科医師会により推進されてきた。


 厚生労働省は、日本の歯科保健の状況を把握するための「歯科疾患実態調査」を、

1957(昭和32)年から定期的に行っている。そして、直近の2016(平成28)年調査で、

「8020」達成者は51.2%となり、初めて5割を上回った。80歳になっても20本以上の歯が残って

いる人は、いまや2人に1人以上となっているのだ。

 20年前の1999(平成11)年の調査では、達成者の率はわずか15.25%だった。

「8020」をめぐっては、状況が大きく改善されてきたといってよさそうだ。

 
 20本以上の歯を持つ人の割合の年次推移。2016(平成18)年の被調査者数は、男2868人、女3410人、計6278人。
(出所:厚生労働省「歯科疾患実態調査」結果をもとに筆者がグラフ作成。以下のグラフも同様)

 なお、「8020」達成者の率の目標は、「2022年度に50%」だったが、すでに達成されたこと

などから、目標は上方修正され、現在は「2022年度に60%」とされることになっている。

 

 

歯磨き「1日3回」の率が向上

 歯の硬い組織が侵食されていく「虫歯」や、歯周組織の病変である「歯周病」などは、自分の歯を

失う要因となるから、これらを予防・治療することが「8020」達成には大切となろう。


 調査結果からは、他にも「8020」達成者率の増加と関連していそうな項目が見られる。

たとえば、「歯を磨く頻度」については、「毎日磨くが、1回」という人の率は年次ごとに減り、

逆に「3回以上」の人の率が増えていっている。

歯ブラシの使用状況の推移。対象は1歳以上。

 また、未処置の虫歯、虫歯が原因で抜去した歯、虫歯が原因で処置した歯の合計数を示す

「1人平均DMF歯数」についても、5歳以上15歳未満をはじめ、いずれの年齢層でも減少傾向が見られる。


 これらの結果を見る限りでは、つい「人びとは歯をよく磨くようになり、虫歯が減ったことで、

8020達成者の率が増えてきた」といった関係性を想像してしまうが、これらの傾向をどう捉えたら

よいか。


 厚労省の歯科口腔保健専門官は、「日本歯科医師会はじめ関係団体の取り組みや、国民の口腔の

健康への意識の高まり、自治体などによる取り組みなど、さまざまな関係者が協力・連携しながら、

歯科口腔保健の推進に取り組んできたことが要因のひとつとして考えられるのではないでしょうか」

(歯科口腔保健推進室の中園健一氏)と話す。

 

「歯周病」関連では悪化傾向のデータも

 こうした改善傾向の項目がある一方で、むしろ「8020」の増加とは逆行しそうな悪化傾向を示す

項目もある。


 まず、先に示した「1人平均DMF歯数」の減少とは裏腹に、「虫歯を持つ人の率」は45歳以降で

増加傾向にある。特に65歳以上の各年齢層では、増え方が顕著だった。


 厚労省「歯科口腔保健の推進に係るう蝕対策ワーキンググループ」が今年6月に出した報告書では、

高齢者での顕著な増加の要因のひとつとして「根面う蝕の罹患の影響が指摘されている」としている。

「根面う蝕」とは、歯周病などにより歯の根面が露出した部分に生じる虫歯のことだ。

従来の虫歯対策に加えて「根面う蝕対策が重要となる」(同報告書)と目されている。


虫歯を持つ人の割合の年次推移。永久歯。5歳以上。

 この根面う蝕にもつながる「歯周病」をめぐっては、年次ごとに悪化している傾向が否めない。


 たとえば、「4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合」が増えてきている。15歳以上のどの

年齢層をとってみても、前回2011年の調査時よりも率が高まった。

歯周ポケットとは、細菌などによる炎症が原因で歯と歯ぐきの間にできる溝のこと。健康な状態と、

歯周病初期の境目が「4mm」とされている。


 4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合の年次推移。
 

 さらに、「進行した歯周病のある人の率」も、ここ3回の調査では、ほぼすべての年齢層において

直近の2016年調査で最も高くなった。


 中園氏は、「このように、状況が改善した項目も悪くなった項目もあることから、たとえば、

ライフステージや歯科疾患など、特性を踏まえた上で、それぞれの地域特性に応じた、

効果的・効率的な歯科口腔保健に関する取り組みの推進が必要であると思います」と話す。

 データ分析などによる相関関係や因果関係の解明や公表も待たれる。

 

生活習慣の改善も「8020」につながる

「8020」は社会として率を高めていく目標であるとともに、一人ひとりが達成すべき目標ともいえる。

自身の「8020」に向けて、心がけるべきことはどんなことか。


「まずは、虫歯や歯周病にかからないよう、予防が大切です。これらの歯の病気は、食事や毎日の

歯磨き、喫煙などとも関連するので、生活習慣の見直しも重要です。そして、毎日の歯磨きに加えて、

定期的に歯科健診や歯科保健指導を受けることや、かかりつけの歯科医を持つことも大切であると

思います」(中園氏)


 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針である「健康日本21(第2次)

などには、「歯の喪失防止」の目標もある。2022年の時点で「40歳で喪失歯のない者の割合」を

75%とすることや、同じく「60歳で24歯以上の自分の歯を有する者の割合」を80%とすることだ。


 これらは社会として取り組む目標である。だが、これらを自分の「8020」への道のりの

中間目標にしてもよいかもしれない。

現時点では、日ごろの地道な取り組みの積み重ね以外の「近道」はなさそうだ。

 

漆原 次郎のプロフィール

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。



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