中国、世界初の量子通信衛星を軌道に
「盗聴不能な技術」へ大躍進
2016 年 8 月 16 日 14:12 JST THE WALL STREET JOURNAL
中国が打ち上げた世界初の量子通信衛星
【北京】ゴビ砂漠から16日未明に打ち上げられた量子通信衛星「墨子」搭載のロケット長征2号Dは、科学の最も挑戦的な一分野の最前線に中国を押し上げる見通しだ。
それによって中国は、喉から手が出るほどに欲しい通信技術を求めて競争しているサイバースパイの時代に世界のライバルを大きく引き離す態勢を確保できる。それは「ハッキング(盗聴)不能な通信」という資産だ。
国営メディアは、中国が16日午前1時40分(日本時間午前2時40分)ごろ、内モンゴルの人工衛星打ち上げ基地から世界で初めての量子通信衛星をロケッ トに搭載して軌道に乗せたと報じた。準備から5年経過しているこの量子通信衛星プロジェクトは、世界中の科学者や安全保障専門家らが注視している。
この量子通信衛星プログラムは、ハードサイエンス(自然科学)研究で西側に追い付き追い越すため、中国が過去20年間にわたって何十億ドルものカネを注ぎ込んできた戦略の一部だ。
ジュネーブ大学のニコラス・ギシン教授(量子物理学)は「中国は、量子衛星レースに勝利する公算が極めて大きい」と述べ、「それは、中国が大規模で野心的なプロジェクトを計画・実現する能力を持っていることを改めて示している」と語った。
米国、欧州、日本、その他諸国の科学者は、亜原子粒子(原子よりも小さい粒子)にある奇妙で潜在的に強力な特性を競って探究しているが、中国の科学者たち のように大規模な国家支援を受けている科学者は少数だ、と研究者らは言う。量子技術は、今年3月に公表された中国の5カ年経済発展計画における最優先の戦 略的研究課題だ。
中国政府は量子研究にどれだけの資金を配分したのか、あるいは重さ1400ポンド(約635キログラム)の量子通信衛星を製造するのにいくらか かったか公表していない。しかし量子物理学を含む基礎的研究予算は2015年に1010億ドルに達しており、05年時点の19億ドルを大幅に上回ってい る。
科学者や国防・情報などの当局者のグループが7月にまとめた議会報告によると、米国の量子研究に対する連邦予算は年間約2億ドル。 同報告は量子科学の発展は「米国の国家安全保障を強化するだろう」と述べているが、資金規模が変動するため進歩が遅れているとも指摘している。
中国政府は、中国生まれで外国で教育を受けた量子物理学専門家を中国に呼び寄せるよう努力した。その中には今回の量子通信プロジェクトを指揮している物理学者の潘建偉氏も含まれている。
潘氏は15日放映された中国国営テレビとのインタビューで、「われわれは世界中の研究室で良い技術をすべて吸収し、(中国に)持ち帰った」と述べた。
潘氏は、中国政府の国家支援を得て、自分の博士号取得の指導教官だったウィーン大学の物理学者アントン・ツァイリンガー教授を追い越すことができた。ツァ イリンガー教授は2001年以降、同様の衛星を打ち上げるよう欧州宇宙機関(ESA)を説得しようと努めてきたという。
ツァイリンガー教授は「これは困難なプロセスで、長い時間がかかる」と述べた。同教授は現在、自分の元学生である潘氏の衛星に協力している。
目指すはグローバルな量子通信網構築
量子暗号通信はその特性から、現在の暗号化技術よりもはるかに高いセキュリティ性を持つということで、米国や欧州、日本で研究、実証試験が行われ、 一部はすでに実用化されています。
中国でも2000年代から量子もつれの研究を進めていましたが、近年では特に実用化に向けた取り組みが進んでおり、 2012年から安徽省合肥市で量子通信網の試験運用、北京市で金融システム用の量子通信の実証試験を開始しています。
こうした実験を元に、北京市から山東省済南市、合肥市を経由して上海市へとつながる、全長2000キロメートルに及ぶ量子暗号通信バックボーン「京 滬幹線」の建設がスタート。京滬幹線は14年に着工し、今年中に開通予定で、北京・上海間の金融システム向けに量子暗号通信を提供する計画です。
なお、中国は2020年までにアジアと欧州のネットワーク間で量子鍵配送を実現、30年頃には20機の衛星を打ち上げ、宇宙と地上で全世界をつなぐグローバル量子通信ネットワークを構築するという計画を掲げています。
中国、 世界初のハッキング不能な「量子通信衛星」打ち上げに成功
まだ実験段階ですが、実用化されると、中国から他国へのハッキングは自由に出来、中国側へのハッキングは出来ないというもの。
中国は外国で技術を吸収しそれを自国で莫大な資金を投入し発展させる。中国以外の国は呑気過ぎませんかね。
日本がんばっていますが、なんてったって予算が少ない。予算が潤ってれば世界を追い抜く技術がある日本。
量子通信、量子暗号の研究動向と今後の戦略(量子科学技術委員会(第4回)於文科省)
<資料>量子通信
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