米朝首脳会談決裂で金聖恵氏、通訳のシン・ヘヨン氏も政治犯収容所送り
2019/05/31 11:31 朝鮮日報
米朝首脳会談決裂で金聖恵氏、通訳のシン・ヘヨン氏も政治犯収容所送り
金与正氏(左)金聖恵(キム・ソンへ中央)氏 通訳シン・ヘヨン氏(右)
金正恩(キム・ジョンウン)政権がハノイ会談の「ノーディール(成果なし)」後に取ったといわれる
問責粛清のレベルや範囲は、予想を上回るものとなっている。
当初、外交関係者の間では「北朝鮮は外部の視線などを意識して、会談関係者らに対する極端な
処罰は控えるだろう」という見方が多かった。それだけに、決裂に伴う金正恩委員長の怒りと喪失感が
相当なものだったことをうかがわせる。
■消息筋「金赫哲氏は生死不明、シン・ヘヨン氏も…」
ハノイ会談の実務交渉を担当していた金赫哲(キム・ヒョクチョル)元・国務委対米特別代表は、
現在のところ生死が明らかでない状態だ。会談決裂の直後、本来の所属部署だった外務省に復帰した
というニュースを最後に、消息が分からなくなった。今年4月に選出された最高人民会議第14期の
第1次代議員リストには含まれていなかった。
北朝鮮の事情に詳しい消息筋は「金赫哲氏は、米国側の考えをきちんと把握できないまま交渉の
状況報告をいい加減に行ったという理由で、米帝スパイとして追及された。
今年3月に外務省幹部らと共に調査を受け、平壌の美林飛行場で処刑されたという話がある」と語った。
この消息筋によると、駐ベトナム北朝鮮大使館の経済参事と2等書記官、外務省本省でベトナム業務を
担当していた書記官など4人も金赫哲氏と共に処刑されたという複数の情報がキャッチされた。
さらに、ハノイ会談で金正恩委員長の通訳をしていたシン・ヘヨン氏(女性)は、政治犯収容所に
送られたといわれている。シン・ヘヨン氏は、昨年のシンガポール米朝首脳会談でトランプ大統領が
女性(国務省通訳部門のチーフを務めるイ・ヨンヒャン氏)を帯同したことを意識して、
金正恩委員長が直接起用した人物といわれている。「実戦」経験が足りないシン・ヘヨン氏は、
通訳の過程で幾度かミスを犯したものとみられる。外交消息筋によると、シン・ヘヨン氏は、
「ノーディール」を宣言したトランプ大統領に金正恩委員長が切羽詰まって「一つ提案することがある」
と言ったのを通訳できなかった。
「金英哲氏も危険…金与正氏は謹慎」
対米交渉を総括していた金英哲(キム・ヨンチョル)氏は、党統一戦線部長のポストから外された後、
慈江道で「革命化教育」(強制労働および思想教育)を受けているといわれている。かつて
革命化措置を受けた崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長などは、一定期間後に
再起してもいる。だが30日に『労働新聞』が「革命の冷厳な審判」に言及したことにより、金英哲氏の
生死もはっきりと断言はできない、という声が上がった。
金英哲氏の参謀役を遂行した金聖恵(キム・ソンへ)統一戦線部統一戦略室長も、政治犯収容所
送りの処分を受けたといわれている。北朝鮮で「唯一の女性対南活動家」に挙げられる金聖恵氏は、
平昌オリンピックに出席するため昨年2月に韓国を訪れた金与正(キム・ヨジョン)氏を付きっ切りで
補佐した人物だ。今年1月の金英哲氏訪米に同行したのに続き、2月に平壌(6-8日)とハノイ
(21-25日)でスティーブン・ビーガン国務省北朝鮮政策特別代表などと対面し、首脳会談の
直前まで非核化に関する議題を調整した。
金正恩委員長の実妹、金与正・労働党宣伝扇動部第1副部長は、外部での活動を極力控えている。
ハノイ会談をはじめ金正恩委員長の外遊の大部分に同行していたが、先月の金正恩委員長訪ロでは
姿を見せなかった。外交消息筋は「金与正氏は昨年2月、妊娠中ながらも日程のきつい訪韓をこなし、
出産後も朝中、南北、米朝首脳会談に相次いで携わったことにより健康面で無理がきた。結核に
かかったという話もある」と語った。
金与正氏については、健康問題よりも「出過ぎた行動」が問題になって謹慎中、という見方もある。
北朝鮮の事情に詳しい消息筋は「ハノイ会談当時、灰皿を持って金正恩委員長の世話をする場面が
日本のメディアにキャッチされ、北朝鮮内部では『不適切な振る舞い』という声がかなりあった。
会談決裂でメンツがつぶれた金正恩委員長が、こうした雰囲気を意識して金与正氏に
『自重しろ』という指示を下した」と語った。
このように「ハノイ会談チーム」の相当数が各種の問責に遭ったといわれるのとは対照的に、
外務省の李容浩(リ・ヨンホ)外相と崔善姫(チェ・ソンヒ)第1次官は健在なところを誇示している。
二人は会談決裂前から、「金正恩委員長の気持ちと肉声」を外部に伝えるメッセンジャー役を
務めている。崔善姫氏の場合、4月に次官から第1次官へ昇進したのに続いて、次官クラスとしては
唯一人、国務委員会入りも果たした。ワシントンの外交消息筋は「昨年から急に対米交渉業務を
担当することになった『統一戦線部ライン』の楽観的・希望的な報告とは異なり、伝統的に
核問題・対米交渉を担っていた外務省ラインは、金正恩委員長に絶えず『慎重なアプローチ』を
求めていた。ハノイの『ノーディール』以降、金正恩委員長が再び外務省に力を与えている」と語った。