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【WSJ社説】金正男氏の死が意味する真の危険 マレーシアの空港での「毒殺」の裏にある事実

2017-02-16 17:16:17 | 北朝鮮

【WSJ社説】金正男氏の死が意味する真の危険

マレーシアの空港での「毒殺」の裏にある事実

2017 年 2 月 15 日 12:17 JST  THE WALL STREET JOURNAL

緊急ニュースの第一報は誤報であることも少なくない。北朝鮮に関することならなおさらだ。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏(45)がマレーシアの空港で毒殺されたとのニュースは注目すべきだ。


 今回の件は、北朝鮮の金政権が海外で再び暗殺を実行したように見える。それと同時に、ミサイル発射や核実験を行いながらも、同国の体制が本質的に不安定でもろいことをあらためて示すものでもある。


 故金正日総書記の長男である正男氏は、2001年までは後継者候補として有力視されていた。しかし、同年にドミニカ共和国の偽造旅券で日本に入国し、ディズニーランドを訪れようとしていたところ、当局に身柄を拘束された。この失態で後継者としての道を外されたとみられ、その後はマカオに生活の拠点を移した。その代わりに弟の正恩氏が後継者として育てられるようになり、2011年に正日氏が死去すると権力の座についた。


 正男氏は数少ないながらも海外から発言し、北朝鮮の体制を批判していた。2011年には日本の新聞に対し、「北朝鮮は改革と開放に関心を持つべきだ。今の道を進めば経済大国にはなれない」と語り、貧困にあえぐ北朝鮮と成功を手にした中国を比較した。また世襲制についても批判し、「社会主義の理念とは合わないし、父も反対だった」と話していた。


 さらに、叔父にあたる張成沢氏とは連絡を取り続けているとも明かしていた。張氏は2013年に正恩氏によって処刑されたが、それまでは北朝鮮ナンバー2として中国とのパイプ役を担っていた。


 こうした発言や張氏との関係もあり、中国は金正恩体制が崩壊した際には「金正男体制」を作ろうとしていたとの観測もあった。このことを証明する十分な事実はない。しかし正男氏がマレーシアで暗殺されたとすれば、正恩氏が同氏を問題視していたことは十分に裏付けられよう。


 北朝鮮の陰謀に関する論評は扇情的であったり、同国の異質さに焦点を当てたりすることが多い。今回も女性工作員が針やスプレーを使って正男氏を毒殺したと報道されている。しかし、それより重要なのは、狂信的かつ不安定なうえに核兵器を保有している体制の危険性が高まっているという事実をきちんと認識することだ。


 ドナルド・トランプ米大統領は対北朝鮮政策の見直しに着手したとしているが、ぎりぎりのタイミングだと言えるだろう。正男氏がなぜ、どのようにして殺害されたのかは別にして、米国や同盟国は北朝鮮でのクーデター発生や核攻撃などのシナリオに備えた計画を持っておく必要がある。