中国人民解放軍首脳がベトナムとの防衛対話をドタキャン 日米との接近にいらだちか
2017.6.22 19:22 産経新聞
【シンガポール】訪越した中国人民解放軍首脳が、予定していた二国間防衛対話を中止し、日程を切り上げ出国してい
たことが22日、分かった。
両国はともに「善隣関係」重視の共産主義国で、礼節無視の一方的な会談中止は異例。領有権をめぐり対立する
南シナ海問題での譲歩要求に応じず、日本や米国に接近するベトナムに、中国側がいらだち、
牽制措置に出た結果との見方もある。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は21日深夜、人民解放軍制服組トップの范長竜・中央軍事委
員会副主席が、訪越日程を短縮したと伝えた。「任務の都合」を理由に、20日から中国との国境付近で3日間の日程で
予定していた「国境防衛友好交流対話」も、中国側がキャンセルを決めたとした。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、予想外の会談中止は、南シナ海の領有権問題をめぐるベトナムとの協議で
中国側が「憤った」結果と指摘した。
関係者によると、18日朝にハノイ入りした范氏は、クアン国家主席やチョン共産党書記長らと相次いで会談した。
フック首相との会談で、ベトナムが行う南シナ海の海底資源探査の中止を要求したところ拒否され、激高して
同日夜にハノイを離れたという。
范氏は、18、19両日のハノイ公式訪問に続き、20日からは、2014年に始まり今回で4回目の防衛対話に、
中国側からは過去最高位として全日程へ参加を予定していた。
范氏がフック氏に中止を求めた探査は、ベトナム国営石油会社ペトロベトナムと米石油大手エクソンモービルが実施。
ベトナムが排他的経済水域(EEZ)内とする海域で、石油や天然ガスの埋蔵調査。ケリー米国務長官(当時)が
今年1月の訪越時、ベトナム側と合意した。この海域は、中国が南シナ海で独自の主権主張の根拠とする「九段線」と
重複している。
米トランプ政権では、ティラーソン現国務長官が、エクソン社の元会長。フック氏は、5月末に訪米しトランプ大統領と、
6月上旬には来日して安倍晋三首相とそれぞれ会談した。ある専門家は、安全保障でのベトナムの日米接近に、中国
が警戒を強めていると分析している。