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ザンビアで反中デモ。中国融資が経済を圧迫 / ザンビアに忍び寄る新たな債務危機 危機の背後に中国の影、他のアフリカ諸国への警鐘

2018-10-03 09:34:23 | 中共日本浸透工作・中共浸透工作・一帯一路・中国経済侵略

ザンビアで反中デモ 中国融資が経済を圧迫

ザンビアに忍び寄る新たな債務危機

危機の背後に中国の影、他のアフリカ諸国への警鐘

2018.9.21(金)  The Economist

熱帯農業科学技術協力了解覚書に署名した中国熱帯農業科学院とザンビア開発庁(撮影日不明)。(c)新華社


政治の腐敗と低利のローンは危険な組み合わせだ。

 ザンビアの首都ルサカでは、自動車が普段にも増してゆっくり走っている。あちこちに隠された

スピード違反取り締まりカメラにドライバーが怯えているためだ。


 ザンビア政府は資金難に陥っており、そのためスピード違反者が高額な罰金をふっかけられている。

 政府はこれ以外にも、井戸やインターネット電話、さらには天気予報にまで課税すると発表している。

 「一般庶民にしわ寄せが来ている」

 タクシー運転手のジョン・フィリさんはこうこぼす。「どれもこれも、政府がカネを借りすぎたせいだよ」

 

 街角の不安は市場にも反映されている。

 ブルームバーグ・バークレイズ新興国国債インデックスという指数を見ると、組み入れられている

75カ国の国債のうち、2018年に入ってからザンビアほど値下がりしている銘柄は存在しない(図参照)。


 アルゼンチンやトルコでの危機を考えれば、最下位獲得はちょっとした大業だ。

 

 投資銀行ルネサンス・キャピタルのグレゴリー・スミス氏は「市場はデフォルト(債務不履行)を

織り込んでいる」と言う。


 それゆえザンビアは、2005~06年にやはり債務減免措置を受けながら、今再び、危機の瀬戸際に

立たされている他のアフリカ諸国への警鐘となっている。


 ザンビア経済は21世紀を迎えて幸先のよいスタートを切った。2000年から2010年にかけては、平均で

年率7%を超える経済成長を成し遂げた。


 原動力は輸出の80%を占める銅の値上がりだった(最大の輸出先は、大手資源商社グレンコアの

本社があるスイスだ)。


 この好景気により、国民所得に占める外国からの援助の割合が1995年の57%から2010年の

わずか5%へと大幅に縮小した。


 好景気は2011年頃に終わった。銅が値下がりすると、経済成長が鈍化した。同じ年に、現在も与党の

座にある愛国戦線(PF)が政権を取った。


 PFはすぐに大盤振る舞いを始める。新しい道路、病院、空港を建設したうえに、公務員の賃金を

実質ベースでほぼ2倍に引き上げ、配分するポストを増やすために行政区画の数も72から115に増やした。


 歳出の増加は借り入れでカバーした。公的債務は急増し、国内総生産(GDP)比の債務残高は2011年の

21%から2017年末の59%に跳ね上がった。

 

 この借り入れのざっと3分の2は外貨建てで、貸し手は中国の金融機関や、ザンビアのユーロ債を買った

西側諸国の投資家だ。欧州では30億ドル相当の米ドル建て債券が発行された。

 

 これらの債務の返済がザンビア財政に大変な重圧をもたらしている。

 

 かつては教育が国家予算の最大項目だった。今では国債費がこれに取って代わり、歳出の4分の1近くが

債務返済に回されている。2018年の財政赤字は、GDP比9%を超える見込みだ。


 先月には、公務員給与が予定通りに支給されなかった。昨年、給与の支払いが遅れた際には、

政府の広報担当官がありがたいことに、官僚にニワトリを飼うよう勧めていた。


 政府から民間事業者への支払いも滞っており、企業経営に打撃をもたらしている。銀行の不良債権比率は

2年前の8%から13%に上昇している。


 国際通貨基金(IMF)によれば、アフリカには「債務ディストレス」に陥る危険性のある国が18カ国あり

(2013年はこの半分だった)、ザンビアはその一角を占めている。

 ほかにもすでに8カ国がディストレス(支払いができない、あるいは債務不履行を起こしているという意味)

 状態にある。

 しかしザンビアは、歳出抑制を求めるIMFに抵抗しており、両者の関係は壊れてしまったも同然だ。

 

  救済をめぐる話し合いは凍結されており、ザンビア側からの圧力でIMFの代表者が交代させられた。

 しかも資金が有意義に使われたようには見えない。大半は無計画に使われており、盗まれたケースもあった。

 

 「国民は不思議に思っている。あのカネはどこに消えてしまったんだろう、とね」

 現地の慈善団体、イエズス会神学的考察センター(JCTR)のジェフリー・チョンゴ氏はそう語る。

 答えの一つは舗装道路にある。

 

 ザンビアは2011年以降、計9000キロにのぼる長さの道路建設を発表してきた。インフラ整備の

必要性に疑問を呈する人はほとんどいない。


 しかし、この国はお金を払いすぎている。世界銀行が2017年に行った調査によれば、ザンビアは

道路建設に1キロ当たり36万ドルもの代金を支払っていた。


 アフリカの平均の2倍を超える高額だ。また、道路の維持管理が行われておらず、新しい道路にすでに

穴があいている。

 

 ほかの取引も同様に無駄が多い。政府は1台当たり100万ドルで消防車を42台購入した。70%も

上乗せされた値段だ。


 また、中国国有企業によるインフラ整備事業でも、相場を上回る代金の支払いが常態化している。

首都ルサカの新しい空港ターミナルビルの建設工事契約の例を見るといい。

旅客数が10倍に増えるという、ちょっとあり得ない想定で設計されたビルだ

(地元では「ハンバーガー」と呼ばれているが、中華まんの生地で作るパオ・サンドイッチの方に似ている)。


 これらの契約は不透明だ。まず、ザンビア政府内の部署と中国輸出入銀行との間で建設資金の

融資契約が交わされ、同行が中国の建設会社に直接この資金を貸し出すというのが通常のパターンに

なっている。

 事業の本当のコストが明らかになるのはその後だ。


 いつまでも明らかにされない取引があること、そして債務減免の引き換えにエドガー・ルング大統領が

ザンビア電力供給会社(ZESCO)などの国有資産を中国に差し出すことを、多くの人が心配している。


中国・北京で2国間協議を行い、握手を交わすザンビアのエドガー・ルング大統領(左)と習近平国家主席(2018年9月1日撮影)


 9月上旬には、ザンビアの代表団が北京から戻ってきた。3年に1度開かれる、中国とアフリカ諸国の

政治指導者との会議に出席していたのだ。


  多くの国民は中国の影響力に憤慨している。

例えば、ビジネスマンは、政府が発注する最良の仕事から締め出されていると不満を募らせている。

ただエリート層は、陰では中国人よりも自国の政府を非難することの方が多い。


 PF(愛国戦線)政権下ではガバナンス(統治)がしっかりしておらず、腐敗が広がっている。


 ザンビア政府の会計検査官と、オンブズマン組織のフィナンシャル・インテリジェンス・センター(FIC)

がまとめた報告書では、ルング政権になってから汚職が目に見えて増加したことが示唆されている。


 道路建設の取引を調べたある経済学者の試算によれば、工事代金の5~10%はピンハネされているという。

 汚職とセットになっているのが圧政だ。

 ルング氏は、2016年の選挙で不正疑惑をささやかれながらも勝利した後、対立候補だった

野党のリーダー、ハカインデ・ヒチレマ氏を投獄した。大統領の車列に道を譲らなかった、というのが

その理由だ。

 政権に批判的な新聞社は閉鎖され、ジャーナリストは嫌がらせを受けている。

 

 また、ルング氏は自分の息のかかった判事を憲法裁判所に次々送り込み、2021年の大統領選挙への

自分の立候補を認めなければ(ルング氏は現在2期目で、憲法では3選が禁じられている)混乱が

生じるぞと脅しをかけている。


 「私はここに来て21年になるが、こんなに多くの人々が声を上げることを恐れている光景は見たことがない」

ルサカに住むある大学教員はこう話している。「ザンビアは独裁国家になってしまった」


 ルング氏を擁護する人々は、ザンビアは時間を味方につけていると考えている。

3本発行しているユーロ債の元本返済は、2022年にならないと始まらないし、中国も借金の返済期限を

延ばしてくれるかもしれない、というわけだ。


 しかし、債務の負担が増えていることを考えれば、これまでのやり方を続けるわけにはいかない。

今月内には、政府が2019年の国家予算の枠組みを発表する。投資家とIMFは、ルング氏やその取り巻きが

行いを改める兆しがあるかどうかを見い出そうと、この発表に注目するだろう。


 もし兆しが見られなければ、ザンビアは12年前の債務減免を経て、次の債務危機に向かって

転がり続けることになる。


英エコノミスト誌 2018年9月15日号