森友問題、佐川喚問は証言拒否で疑惑解明にほど遠く 今後は世論次第
ただ、マーケットには安倍晋三内閣は危機を切り抜けたとの見方が浮上。日経平均.N225が前日比500円超上昇し、経済界からも
国会での政策議論を求める意見が出ており、「森友疑惑」が落着するかどうかは、今後の世論次第になりそうだ。
この日の証人喚問を前に、政府・与党は守勢に立たされていた。26日付日本経済新聞朝刊に掲載された世論調査で、
財務省決裁文書の書き換え問題で、安倍首相に「責任がある」との回答が70%に達し、昭恵夫人の国会招致は「必要だ」が
62%となった。
その前に出ていた国内メディアの世論調査では、内閣支持率が急落。中には30%前半に低下する結果もあった。
こうした世論の動向も踏まえ、自民党が動く。複数の関係者によると、二階俊博幹事長が最終判断し、「ぎりぎりまで
くすぶっていた(喚問実施の)反対派を押し切った」とされる。
注目される証人喚問は、27日午前9時半から始まった。ただ、問題の核心の1つとされる決裁文書改ざんの目的や経緯、
佐川氏自身の関与の程度は「刑事訴追のおそれがある」との理由で証言を拒否。
対照的に安倍首相や昭恵夫人、麻生太郎財務相、財務省幹部の関与については、明確に否定した。
その結果、この日の喚問では、事実関係に関する新たな証言はなく、明確な違法行為である決裁文書の改ざんが、何を目的に、
いつ、だれが主唱したのかと言う疑問点は解明されなかった。
一方、佐川氏が安倍首相らの関与を明確に否定したため、金融・資本市場では、この問題の拡大はひとまず回避されたのでは
ないかとの受け止めが広がった。
大和証券・シニアストラテジストの石黒英之氏は「佐川氏の証人喚問での発言内容を(市場は)好感している。(財務省の
決裁文書改ざんについて)首相や首相夫人の関与を否定し、国内の政治不安がいったん後退した」と述べている。
また、経済同友会の小林喜光代表幹事は27日の会見で、森友問題だけでなく「国会は問題が山積している」と指摘。働き方改革や
財政再建問題などを森友問題と並行して議論すべきとの見解を示した。
他方、野党側は、佐川氏が核心部分で証言を拒否し、真実の追及ができなかったとし、昭恵氏に加え、迫田英典・元国税庁長官、
武内良樹・財務省国際局長、夫人付職員だった谷査恵子氏の証人喚問を要求した。
与党側は回答を留保したが、野党の要求を当面、拒否するとみられている。また、ある政府関係者は「4月以降は予算委がない
ことから、今のように連日追及する場がなくなり、いったん凪(なぎ)のような状態になるだろう」と、政府・与党への圧力が
いったん緩和するだろうと予測する。
ただ、与党関係者とその周辺では、大阪地検特捜部が財務省決裁文書の改ざん問題で強制捜査に乗り出したりすれば、「一件落着」
どころか、政府への逆風が一段と強まるとの懸念もくすぶる。
財務省内の調査は、大阪地検の捜査の状況をにらみつつ、捜査が終結した後に取りまとめる方向。一部の関係者の間では、
4月下旬から5月上旬にかけた大型連休前後がメドになるとの見方がある。
また、処分対象者が理財局内にとどまらなければ「麻生財務相の進退も問われる」(与党周辺)との指摘も少なくない。
「一件落着」か「逆風加速」──。その動向を大きく左右するのは、世論の動向だという見方が与党関係者の中に広がっている。
世論の風向き次第では、安倍首相が重要法案と位置づける働き方改革の関連法案の成立が危ぶまれる事態もあり得そうだ。
与党の国対関係者によると、例年、4月末の大型連休が始まる前に法案が衆院を通過していないと、通常国会での法案成立は
「赤信号」が点灯しかねない。
マーケットは楽観論が支配しているものの、対照的に永田町では緊張感が増す展開もありそうだ。
日経平均 Kabtan
市場関係者からは「前日の米株式市場に“米中が貿易摩擦の回避に向けて歩み寄りの動きがある”との報道が伝えられ、NYダウ平均株価が大幅高し、外国為替市場での円安・ドル高進行も加わって、日経平均は続伸のスタートとなった。その後、佐川宣寿・前国税庁長官の国会での証人喚問での発言が、安倍首相や昭恵首相夫人、麻生財務相、首相官邸幹部らの関与は否定するなど、投資家の想定内の内容に終始し、政局不安がやや薄らいだとの受け止めから買いが加速した」との見方が出ていた。
「政治家の関与につながる発言が出ず、安倍晋三政権へのさらなる打撃にはならないと判断した海外投資家などが買いを入れている」(東洋証券の大塚竜太ストラテジスト)との声があった。
・政治家からの不当な働きかけはない。書き換えは理財局の中で行われた。安倍晋三首相や昭恵夫人からの指示はなかった。
理財局以外や首相官邸に(改ざんを)報告することはない。首相官邸幹部からの指示もなかった。森友問題について、
(官邸の)今井秘書官と話したことはない。麻生財務相からの指示もなかった。
・国会対応について丁寧さを欠いていたのは間違いない。交渉記録に関して財務省の文書管理規則だけを述べた点が丁寧さを欠いた。
連日連夜の作業で休めず余裕なかったのが実態。
・今でも昨年の答弁としては正しかったと考えている。首相答弁の前後で私の答弁を変えたつもりはない。(森友学園への国有地
売却を巡って)首相や首相夫人の影響あったと思わない。(改ざん前文書に記載のあった)「特殊性」との文言は、官邸の関与を
示しているものではない。官邸からの指示も協議も相談もなかった。
・(官邸の関与がないと断言した根拠として)政治家・官邸から書き換え指示あれば局長の私に上がってくるが、そのようなことは
なかった。
・(森友学園との土地売買交渉時に財務省理財局長だった前任の迫田英典氏から森友学園問題について)一切、引き継ぎを受けて
いない。
・(財務省の太田充理財局長が改ざんについて、佐川氏の関与の度合いは大きいとした国会答弁について)財務省の調査の中身を
知らないので、コメントする立場にない。
・(改ざん前文書に記載された安倍首相夫人の昭恵氏の名前を見たのかとの質問にも)捜査の範囲に入っている(として証言を拒否)。
・(取引にあたり昭恵夫人を意識したかとの聞き取りを)職員にしたことはない。
・(昭恵夫人が森友名誉校長であることは)新聞報道で認識。そうか、と思っただけ。
・(近畿財務局職員の死亡について)経緯は一切承知していないが、大変残念で心より冥福祈りたい。
・(自分や妻が関与していれば総理・議員を辞職するとの) 首相発言をもとに、財務省内や官邸などと協議したということはない。
首相発言は理財局で作成した答弁ではない。
・(証人喚問にあたり政治家からの働きかけやポストの斡旋などがなかったかとの質問に)働きかけはない。
・3月9日の退職後、官邸の人と会ったことはない。
・(証人喚問が実態解明に寄与したかとの質問に対し)書き換えの経緯を答えていないので解明になっていない。