EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

南米ガイアナ、大規模油田発見で大金持ちに? 人口1人当たり産出量は今後10年でサウジを超えるとの予想も

2018-06-25 06:45:06 | 資源・技術・知的財産・開発研究

南米ガイアナ、大規模油田発見で大金持ちに?

人口1人当たり産出量は今後10年でサウジを超えるとの予想も

2018 年 6 月 22 日 14:57 JST   THE WALL STREET JOURNAL

 【ジョージタウン(ガイアナ)】南米ガイアナの活気ない首都ジョージタウンの海辺には、壊れかけた

木造住宅群と、コーヒーのような色をした大西洋とを隔てる防波堤がある。その防波堤の周辺では、ヘルメットを

かぶった建設作業員たちが、港湾の拡張や高級マンションの建設、そして同国初の「ハードロックカフェ」

開店に向けて、仕事を急いでいる。


 ガイアナはジャングルに囲まれた英国の元植民地だ。こうした開発には、最近まで想像できなかった

「あるもの」から富を引き出そうとする狙いがある。それは石油だ。


  エクソン・モービル を中心とするコンソーシアムは先に、ガイアナの沖合で石油掘削に着手したことを明らかにした。

少なくとも32億バレルと見込まれる軽質原油を最近発見したことを受けた動きだ。

ガイアナは今後10年以内に、1人当たり日量1バレル近くの原油を産出するようになると予想されている。

これは、サウジアラビアも上回るほどだ。これにより、人口80万人の貧しい国は世界随一のエネルギーフロンティアに

なる。

 

 ラファエル・トロットマン天然資源相は同国が現在創設を目指している政府系投資ファンド(SWF)に言及し、

「ガイアナ人は数年後には誰もが百万長者、またはそれに相当する金持ちになるだろう」と述べた。


 ガイアナの首都ジョージタウンでは沖合油田への期待が高まる

 

 だが、誰もがこの「掘り出し物」を信じているわけではない。


 多くのガイアナ人は、エクソンとの石油掘削契約は、同社とそのパートナー企業(米国のヘスと

中国海洋石油集団=CNOOC)にもたらす利益が不釣り合いに大きいとみている。

また、汚職への懸念や、国内総生産(GDP)の50倍近くに相当する原油資源をガイアナが責任持って扱えるのか

危惧する声も聞かれる。


 エクソンはガイアナの沖合プロジェクトについて、同社が約20年前にモービルと合併して以降で最も重要かつ

潜在的に最も利益の上がる有望案件の1つだと述べている。欧米石油会社は近年、南米への注目を強めている。

ロシアやイランなど他の地域で、制裁あるいは資源ナショナリズムによって石油ビジネスの機会が縮小したからだ。

 

 エクソンによると、2020年に石油採掘が本格的に始まれば、ガイアナはその後5年間はロイヤルティー

(利権料)および収入として推定16億ドル(約1760億円)を手に入れる。最も有望な油田の1つからは、

枯渇するまでにざっと70億ドル得られるという。だが、エクソンは、発見した全ての油田の評価を終えておらず、

探査も続けている。これは、ガイアナにとって将来さらに多額の収入になり得ることを予兆するものだ。

エクソンの広報担当者は、「この(石油という)新興産業は、ガイアナ経済を一変させる潜在力があり、

今後何世代も人々の生活にプラスの影響をもたらす可能性がある」と述べている。


 石油業界では、最初に投資する人はより大きなリスクを負うため、最も条件の良い契約を手にするのが

慣例的となっている。エクソンは2015年までガイアナで石油を発見できなかった。探査契約を結んでから

実に16年後に発見したのた。

 

 しかし、ガイアナ政府が2016年にエクソンが契約を更新した時、もっと良い条件を求めるべきだったと批判する声もある。

 同国の元監査当局者アナンド・グールサラム氏は、「エクソンは、我々の弱い立場や経験のなさに乗じて、欲しいもの全てを引き出すことができた」と述べる。

 国際通貨基金(IMF)は最近、ガイアナへの勧告にあたり、同国がより良い契約条件を確保し、税制を刷新するまでは、新たなライセンス(石油掘削などの認可)を与えないよう助言した。


ガイアナの首都ジョージタウンの港湾で進む建設作業


 契約によると、エクソンはいったん商業的生産が始まれば、年間石油収入の最大75%を使って、探査・生産の

コストを回収することが認められている。ガイアナは、ロイヤルティーとして石油収入の2%と、残りの収入の

50%を受け取る。 IHSマークイット のアナリスト、カルロス・ベロリン氏によると、

これは「フロンティア石油探査」の世界的な平均と同等だという。


 しかし、石油会社各社に対して地元で課される税は、ガイアナの利益取り分から支払われることになっている。


 ガイアナの著名弁護士クリストファー・ラム氏は「我々は向こう75年間、この契約に苦しむだろう」と述べた。

同氏は週刊紙のコラムや講演を通じ、この石油契約を繰り返し批判している。同氏はエクソンとの契約書を

めくりながら、「しかし、私は何を知っているというのか? 私は第三世界の帳簿係にすぎないのだ」と語った。

 

 ガイアナの当局者らは、エクソンとの契約条件が理想的でないと認めるが、同国にとっては他の恩恵もあると

説明している。彼らは、隣国ベネズエラとの領土的な紛争のなかでエクソンの国際的なロビー活動の力が

必要だとしている。


 前出のトロットマン天然資源相は「我々は権力の回廊で国際的影響力を持つ企業が必要だ。したがってこうした

物事は、代価が必要で高くつくのだ」と語った。

 

 また、 仏トタル やスペインの レプソル などの石油会社を誘致しようとしているカール・グリーニッジ外相は、

エクソンとの契約をめぐる懸念は誇張されていると指摘。「人々がこれを世の終末だと呼ぶのにうんざりしている」

と不満げだ。「石油が単なるうわさ、あるいはエクソンによる詐欺に過ぎないと考える人々がここにはいる。

彼らは魔術と経済メカニズムを混同しているのだ」


 ガイアナ人で石油を実際に目にする人はごく少数だろう。石油は約240キロの沖合で採掘され、貯蔵船に

積み込まれた後、各市場に向けて直接出荷されるからだ。陸上では、石油が採れるという見通しを受けて、

建設活動が活発になっている。


 ガイアナ最大級のコンテナ造船所がある埠頭では、労働者たちが最近、エクソンの沖合プラットフォーム向けに

物資が船積みされる港湾部分の拡張を急いでいた。


 またジョージタウンの最も有名なホテルの一つ、ペガサス・ホテルは1億ドルの拡張工事を計画している。

新たに15階のコンベンションセンターを建設するのだ。


 しかし、懸念は残る。一部には、石油生産は伝統的なガイアナの農業、例えばコメやサトウキビ栽培に悪影響を

もたらすのではないかと心配する人もいる。


コーヒーのような色をした首都ジョージタウンの海辺