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スパイ映画さながら、「自由朝鮮」の北朝鮮大使館襲撃事件

2019-03-28 13:07:26 | 事故・事件

スパイ映画さながら、「自由朝鮮」の北朝鮮大使館襲撃事件

 ハノイで第2回米朝首脳会談が開かれる5日前の2月22日午後4時34分(現地時間)。

スペイン・マドリードの北西部にある在スペイン北朝鮮大使館前に青年たちが集結した。

うち1人が呼び鈴を押した。リーダー格のアドリアン・ホン・チャン容疑者だった。


 大使館職員は疑うことなくドアを開けた。同容疑者は2週間前に大使館を訪れたことが

あったからだ。内部に入った同容疑者は大使館職員の目を盗んで、仲間9人を大使館構内に

招き入れた。大使館内に入ったグループは態度を一変させた。拳銃、木材伐採用のなた、鉄パイプ

などで大使館職員を制圧。さるぐつわをはめて、テープで後ろ手に縛り上げた。スペインの裁判所が

26日発表した事件の経緯だ。


 世界のスパイ史上まれに見る大使館襲撃事件は、緻密な事前準備に基づいて実行された。

アドリアン容疑者は2日前の2月20日から22日午前まで、マドリード市内各地で拳銃6丁、拳銃を

入れるホルスター5点、ゴーグル4点、手錠などをあらかじめ購入した。別のメンバーである

韓国系のサム・リュ容疑者(米国籍)、アウラン容疑者(韓国籍)などもマドリード市内で人を

縛り上げるための両面テープ33個、はしご、大型のはさみなどを買い集めた。


 大使館職員を制圧した時点で、予想外のことが起きた。大使館の女性職員1人が2階から飛び降り、

外に飛び出して悲鳴を上げ、助けを求めたのだ。それを聞いた周辺住民が警察に通報した。

ところが、アドリアン容疑者は臨機応変に対処した。自分は大使館幹部であるかのように

金正恩(キム・ジョンウン)の肖像が描かれたバッジを着用し、外に出て、現場に駆けつけた

警察官に「何も問題はないが、もし何か起きたならば通報する」と告げ、警察官を撤収させた。


 事件を起こしたグループは、2017年の北朝鮮の核実験に対する制裁措置でキム・ハクチョル

駐スペイン大使が追放された後、北朝鮮大使館に唯一外交官として勤務していたソ・ユンソク

書記官を地下室に連れて行った。そして、縛られた状態だったソ書記官の手をほどき、

「脱北してキリスト教に改宗しろ」と迫った。その過程で、グループは「自分たちは北朝鮮解放の

ために働く人権団体の所属」だと説明したという。ソ書記官が「裏切ることはできない」と

拒否すると、アドリアン容疑者らは再びソ容疑者の手を縛り上げ、頭部に黒いビニール袋を被せた。

そして、パソコン2台、ハードディスク2個、携帯電話1台、多数のUSBメモリーを奪い、

大使館の車両3台と自分たちが乗ってきた車に分乗し、大使館を離れた。午後9時40分のことだった。


 その後、グループは大使館から近い場所で車を乗り捨てて逃走した。アドリアン容疑者は

「オスワルド・トランプ」という偽名で予約したレンタカーでポルトガルのリスボンに移動。

2月23日に米ニュージャージー州ニューアーク行きの飛行機で米国に向かった。残るメンバーが

共に移動したかどうかは確実ではない。米国に到着したアドリアン容疑者は2月27日、

米連邦捜査局(FBI)と接触し、北朝鮮大使館から持ち出した物品と情報を手渡した。

ニューヨーク・タイムズによると、アドリアン容疑者が手渡した情報には大使館襲撃当時に

入手した映像資料が含まれているという。北朝鮮大使館のパソコンなどに保存されていた

動画資料を渡したと推定される。


 スペイン現地の消息筋によると、北朝鮮大使館が人影のまばらな郊外の住宅街にあり、普段から

警備が緩かったという。スペイン当局は、アドリアン容疑者が北朝鮮大使館から脱北を希望する

職員と事前に接触していた可能性があると指摘した。スペイン当局による事件発表直後、

大使館襲撃事件の背後に関与を表明した反体制組織「自由朝鮮」(旧千里馬民防衛)は、事件の

3日後の2月25日にウェブサイトに「我が組織はある西側国家にいる同志たちから支援要請を受けた。

危険度が高い状況だったが対応した」との声明を掲載した。声明やスペイン側の発表からみて、

自由朝鮮が脱北を希望した北朝鮮大使館関係者と事前に連絡を取り合い、当事者を連れて逃走した

可能性も否定できない。

 
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