Jcastニュース 2016/6/3
企業がメールやファクスの宛先を間違えて送ることはまれにあるが、一国の役所がそういったミスを犯すのはきわめて珍しい。
産経新聞モスクワ支局にロシア外務省が産経を批判する内容の公式文書を誤って送ってしまい、
産経のコラムで顛末をばらされるという珍事が起きた。
公式レターヘッド、公文書としての通し番号、報道官のサインもあった。
支局での「珍体験」が綴られているのは、産経の6月2日付朝刊(東京本社版)に「拝啓 外務省報道官様」と題して掲載された外信コラム。
ロシア外務省のザハロワ報道官に宛てた手紙の形式で、遠藤良介支局長が執筆した。
J- CASTニュースの取材に3日、国際電話で応じた遠藤支局長によると、
人工知能やロボットについて取材しようと、国営の研究機関に取材を 申し込んでいた(コラムでは「某国家機関」と表現)。
だが、2週間ほど前に、その「某国家機関」宛ての「公式文書」が、なぜかロシア外務省から産経新聞モスクワ支 局に送られてきたという。
メールでもファクスでもなく、れっきとした封書の「公式文書」だ。
外務省公式のレターヘッド、文書が発信された日付、公文書としての通し番号、報道官のサインもついていた。
コラムから引用すると、この「公式文書」には以下のようなことが書かれていたという。
・産 経新聞は日本の主要活字メディアの中で、ナショナリズムの方向性によって特別の地位を占めている。
・ロシアに関する多くの記事 は批判的、時に攻撃的であり、事実はしばしば歪曲(わいきょく)され、否定的な見地で伝えられる。
・最近の反露的な報道も踏まえ、同紙のインタビューには応 じるべきでないと考える。
産経新聞の取材申し込みを受けた「某国家機関」が外務省に問い合わせ、その返答が間違って送られてきたようだ。
モスクワ支局長「ロシアの役所の劣化が本当に心配」
この文書の内容に対して、コラムでは
「この種の文書を作成することも、貴国では外務省の重要な業務なのでしょう。
『事実を歪曲』などという完全な中傷には抗議しておきますが」
などと反論しているが、あくまで記事表現上の皮肉で、実際に抗議や「間違って文書が届いた」といった指摘はしていない。
コラムに
「露外務省には平素よりたいへんお世話になっており、事を荒立てるつもりは毛頭ありません」
とある部分が、実は本音なのだそうだ。逆にロシア外務省からも
「間違って送ったので破棄してほしい」
などの連絡はないという。
コラムでは
「何より心配なのは、大国ロシアの外交を担う外務省が、公式文書を誤って発送するという初歩的ミスを犯した事実です」
とも皮肉っている。遠藤支局長は「役所の劣化が本当に心配」と、改めて話していた。
産経新聞の海外の取材拠点をめぐっては、07年に中国総局の記者が記者証の更新を一時拒否されたり、
15年にはソウル支局長(当時)が朴槿恵(パク・クネ)大統領への名誉毀損(きそん)の罪で在宅起訴され=後に無罪判決=一時的に出国できなくなったり
した。
拝啓 ロシア外務省ザハロワ報道官様
貴職の発した公式文書がモスクワ支局に届いたのは2週間ほど前のことです。
「産経新聞は日本の主要活字メディアの中で、ナショナリ ズムの方向性によって特別の地位を占めている。
ロシアに関する多くの記事は批判的、時に攻撃的であり、事実はしばしば歪曲(わいきょく)され、否定的な見 地で伝えられる。
最近の反露的な報道も踏まえ、同紙のインタビューには応じるべきでないと考える」
書簡は私たちが取材を申し込んだ某国家機関に宛てたものですね。それがあろうことか、私たちのもとに届いたのです。
露外務省には平素よりたいへんお世話になっており、事を荒立てるつもりは毛頭ありません。
この種の文書を作成することも、貴国では外務省の重要な業務なのでしょう。「事実を歪曲」などという完全な中傷には抗議しておきますが。
何より心配なのは、大国ロシアの外交を担う外務省が、公式文書を誤って発送するという初歩的ミスを犯した事実です。
最近のロシアの官庁は大統領閣下の追従 に熱心なあまり、本質的なところで劣化しているような気がしてなりません。
日露間の最大懸案である北方領土問題には、ぜひ気を引き締めて臨んでいただきた いものです。
敬具(遠藤良介)
ロシア外務省、産経新聞のコラムに反応
タス通信 2016/06/05
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官が、産経新聞に対するロシア外務省の評価が記された書簡の引用を含む同紙のコラムにコメントした。
産経新聞は2日のコラムで、「ロシア外務省の書簡が誤って産経新聞のモスクワ支局に送付された」、と報じた。
ザハロワ報道官はこの説に異を唱え、同紙が「他人宛ての手紙」を公開したことに驚きを示した。
ザハロワ報道官が3日、「フェイスブック」に 記したところでは、書簡はもともと産経新聞宛てのものではなく、
「どうやって書簡がそこへ届いたのかについては、何とも言えない。配達人が間違えたのか、 それとも何者かが“友情で”手渡したのか」。
ロシア外務省としては同紙に対する自らの立場を公言するつもりはなかったが、
「同紙が他人の手紙を読んだだけではなく、更に、引 用することも可能であるなどと考えるならば、我々だって黙ってはいない」と報道官。
ザハロワ報道官によれば、ロシア外務省には、ロシアで認可されている外国メディアの活動に関する確認や専門家による鑑定を求め、
様々な団体から照会が寄せられる。
「先日、そうした照会の一つとして、日本の産経新聞の方向性に対する専門家レベルの評価と、同紙との共同作業の是非に関する勧告を求められた。
確 認したところ、認可は正常になされていた。ただ、二国間関係に関するその報道は、同紙をまじめな新聞として受け入れられるかという点に関して疑問
を抱かせ た。ナショナリスティックな方向性が明らかだったのだ。従って、その報道の批判的、時に攻撃的な性格に鑑み、同紙を推薦することは出来な
い、という返事が 書かれた」
ザハロワ報道官は「フェイスブック」で以上のように述べた。
「産経新聞宛てのものではなく」とありますが、文書には封筒の宛先を間違えたんですね。配達の違いなら、
開封したら信書開封罪(ロシアにも当然あると思います)になってしまいます。
あり得ないことが起こるんですね。ロシア側の完全なミスですので国家として公式に抗議もできない。
なのでフェイスブックに投稿し産経新聞の(ロシアからみれば)非常識な行為を拡散したのだと思います。
その後、ロシア外務省や政府から日本政府に公式な抗議がないようですので、治まったのでしょう。
ロシアも高飛車ですが、日本と繋がりを持ちたい(特に経済)のは確かですので、トラブルは起こしたくないと思います。
ロシアの高飛車ぶり
ラブロフ外相「日本に平和条約を哀願せず
プーチン大統領:「ロシアはクリル(北方領土)を売るつもりはない」
でも協力関係を作りたい
「日本の対露関係計画をプーチンが高評価」
追加記事 2016/06/16
ウラジオストク、6月16日-
16日に日本を訪問するセルゲイ・ナルイシキン下院(国家会議)議長は、安倍晋三首相と会談する。
「16日夜に日本の安倍晋三首相と会談が控えている」とナルイシキン議長は日本へ出発する前に、記者団に話した。
17日には日本の政界、経済界の関係者らとの会談も予定されているという。
ロシアの議会の代表団は、毎年恒例の「ロシア文化フェスティバル・イン・ジャパン」の開幕式にも出席する。
「これは日本そしてロシアの文化生活における大きなできごとであり、文化を通じた国民の対話を可能にし、またそれが必要であることを改めて示すも
の。概して、国際協力の優れたツール」とナルイシキン議長。
ロシアは、日本との関係における困難にもかかわらず、経済、政治、人文の分野で、良好な協力の展望を見いだしている。
「日本とロシアの関係発展のかなり重要な段階にいる。困難はあるが、経済、政治、人文の分野における良好な協力を信じ、また理解している。
これについて明日話し合いが行われる」とナルイシキン議長。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。