EMERALD WEB≪拝啓 福澤諭吉さま≫

政治・経済・生活・商品情報などさまざまな話題で情報を発信してます。

米国で報告された尖閣周辺の「危ない現状」

2018-11-21 18:50:01 | 領海・領土・領空・EEZ

米国で報告された尖閣周辺の「危ない現状」

中国の攻勢がエスカレート、高まってきた軍事衝突の危険性

2018.11.21(水)    JBPRESS    古森 義久

中国軍の海上演習で、同国の空母「遼寧」に着艦するJ15戦闘機(2018年4月24日撮影、資料写真)


 中国は尖閣諸島を奪取するために軍事力を土台とする攻勢を強め、日本領海に艦艇を侵入させるほか、

新たに人民解放軍直属の潜水艦や軍用機の投入による日本領土侵食を開始した──。


 11月中旬、米国議会の諮問機関がこんな報告を公表した。中国のこの動きは、尖閣諸島での日本の

施政権を否定し日中両国間の軍事衝突の危険を高めるとともに、米国の尖閣防衛誓約への

チャレンジだともいう。


 こうした中国の動向は、最近の日本への融和的な接近とは対照的である。中国当局は米国からの圧力を

弱めるために日本への微笑外交を始めている。だが、米国議会の諮問機関による報告は、実際の

対日政策の攻勢的な特徴は変えていないことを明示するといえそうである。


2016年11月に尖閣諸島沖の領海に侵入した中国公船の「海警2502」。中国側の尖閣への攻勢はこのときよりさらにエスカレートしている。海上保安庁提供

(2016年11月6日撮影)

日本に対する軍事力攻勢を拡大

 米国議会上下両院の超党派の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は11月14日、2018年度の

年次報告書を議会に提出した。米中経済安保調査委員会は、米中両国の経済関係が米国の国家安全保障に

及ぼす影響の調査と研究を主目的とする委員会である。

 

 同委員会の2018年度の年次報告書は、日本に関連して「中国は、米国と日本など同盟諸国との絆を弱め、

その離反を図る一方、尖閣諸島への軍事的攻勢を強め、米国の日本防衛、尖閣防衛の誓約にチャレンジ

している」と述べていた。


 また、米中安全保障関係に関するこの1年間の新たな主要な動きの1つとして中国側の尖閣攻勢の

拡大を挙げ、この動きが米中安保関係での米国への挑戦になると総括していた。


 さらに同報告書は、尖閣をめぐる新たな動向として中国人民解放軍の原子力潜水艦や軍用機が

出動してきたことを指摘し、日本に対する軍事力攻勢の増加を強調していた。中国軍は東シナ海での

軍事的存在を拡大し強化してきた、ともいう。


中国潜水艦が尖閣近海に初めて侵入

 尖閣諸島に関して同報告書の記述で最も注目されるのは、“中国と日本との軍事衝突の危険性”が

高まってきたとする警告だった。その点について同報告書は次のように述べていた。

・東シナ海での中国と日本との間の緊張が高まり、事故や読み違い、対立拡大の恐れが強まった。


 同報告書は、中国側の軍事的エスカレーションによって尖閣諸島をめぐる情勢が緊迫してきていると述べる。

その主な内容は以下のとおりである。

中国側の潜水艦など海軍艦艇が、尖閣諸島の日本側の領海や接続水域へ顕著に侵入するようになった。中国は、日本の尖閣諸島の施政権を否定する方法として軍事的な要素を強めてきた。


・2018年1月、中国海軍の原子力潜水艦とフリゲート艦が、尖閣諸島の日本側の接続水域に侵入した。日本側からの再三の抗議を受けて接続水域を出た後、潜水艦は中国国旗を掲げた。中国潜水艦の尖閣近海への侵入は初めてである。国旗の掲揚は日本の施政権への挑戦が目的だとみられる。

 

・2018年全体を通じて、中国軍は尖閣付近での軍用機の訓練飛行をそれまでになく頻繁に実施するようになった。中国軍機は日本の沖縄と宮古島の間の宮古海峡を通り抜け、対馬付近も飛行した。中国空軍のこの長距離飛行訓練は日本領空にきわめて近く、軍事衝突の危険が高い。


・2018年全体を通じて中国の公艇は平均して毎月9隻の割で尖閣諸島の日本領海に侵入してきた。この隻数は2017年よりわずかに少ないが、潜水艦やフリゲート艦など海軍艦艇の侵入は今年が初めてとなる。全体として中国側の日本側に対する攻勢は激しくなった。


・中国の尖閣諸島に対するこうした攻勢は、明らかに日本が持つ尖閣の主権と施政権への挑戦であり、とくに施政権を否定する意図が明白である。同時に日米安保条約によって尖閣の防衛を誓っている米国に対しても挑戦を強めてきたといえる。


 以上のような中国の具体的な動向は、習近平政権が最近、日本に対してみせている融和的な姿勢とは

明らかに異なっている。


 中国側の尖閣に対する動向をみるかぎり、日本領土を奪取し日米同盟を敵視するという年来の

対日政策はなにも変わっていないことになる。とすると、いまの習近平政権が安倍晋三首相らにみせる

友好的な態度はみせかけだけだという結論になりそうだ。