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自国中心の秩序構築を目指す中国

2018-07-25 12:06:58 | 習近平国家主席

 自国中心の秩序構築を目指す中国

2018年7月19日   WEDGEInfinity  岡崎研究所

 中国では6月22~23日に、外交政策に関する重要な会議である「中央外事工作会議」が開催された。

同会議は、これまで2006年と2014年の2回しか開催されたことがない。

今回は、習近平(共産党総書記、国家主席)以下、中国共産党政治局常務委員7人全員、王岐山国家副主席、

崔天凱駐米中国大使らが参加しており、会議の重要性が窺われる。

 

 会議で、習近平は、中国が今後のグローバル秩序の構築において主導的役割を果たすことを明確に打ち出す

演説をした。6月24日付け人民日報等が報じている。習近平の演説には、以下のような注目すべき内容が含まれている。


新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を指導方針とする


・グローバルな統治の刷新を主導、より完全なグローバルパートナー関係のネットワークを構築


・中華民族復興と人類の発展を軸に、人類運命共同体の構築を推進


・一帯一路構想、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の推進


・巧妙に策をめぐらし、安定した発展的な大国外交の新たな局面を開くよう努力


・周辺国への外交工作をうまく行い、周辺の環境を中国に友好的で有利なものにする


・国家の核心的利益と重大な利益を死守する


・多くの途上国は、中国外交にとり天然の同盟軍である


 これは、中国が既存の秩序に代わる国際秩序を構築するという宣言であると言える。

既存の秩序は、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守といった諸価値に基づくものである。

これに対し、習近平が演説で示す外交方針は、「社会主義外交思想」に基づくものであるということであるから、

既存の秩序とは大きく異なった、中国中心の秩序を目指すものと理解できる。

中国は、南シナ海問題への国際仲裁裁判所の判決を「紙くず」と評したような国である。また、「民族の復興」や

「核心的利益」は、台湾の武力併合を含んでいる。そうした中国が目指す国際秩序に懸念を抱かないわけにはいかない。


 「人類運命共同体」というのは、キーワードの一つである。これは、3月の憲法改正で、新憲法にも盛り込まれた

概念である。最近、中国は「人類運命共同体」という言葉を精力的に国際社会に売り込もうとしている。

昨年1月には、習近平はダボス会議と国連ジュネーブ本部で「人類運命共同体の構築」を謳った演説をした。

今年3月には、中国の主導により、人権状況の批判に際して、地域の特性、歴史、文化、宗教などの背景に

留意するよう求める「互恵協力決議」が、国連人権理事会で採択されたが、同決議にも「人類運命共同体」の

文言が含まれている。


 「途上国は中国外交にとり天然の同盟軍」
 

 「人類運命共同体」の内容は、まだ、あまり具体的に示されているわけではないが、

相互尊重・平等な協議、相互理解、公正・公平、互恵、文明の多様性尊重、環境保護などが含まれているようである。

「文明の多様性尊重」は、一見もっともであるが、「互恵協力決議」が示唆するように、自由、民主主義、人権尊重、

国際規範の遵守を普遍的価値とみなす現行の国際秩序に注文をつけているとも解釈できる。

習近平は、昨年の第19回党大会で「人類運命共同体」の説明として、冷戦思考の放棄、同盟の代わりにパートナーを組む、

などのことも言っている。これは、米国を中心とする同盟ネットワークへの対抗を意味するように思われる。

なお、昨年1月15日付けの人民日報は、人類運命共同体について「中華文明に根差した外交理念」と解説している。

華夷秩序を連想せざるを得ないような表現である。中国が目指す「人類運命共同体」の具体的内容が如何なるものに

なっていくのか、注視していく必要がある。

 


 今回の中央外事工作会議における習近平の演説では、一帯一路、AIIBの推進とともに、「途上国は中国外交にとり

天然の同盟軍」という表現も目を引く。理念として「人類運命共同体」を掲げつつ、一帯一路やAIIBにより途上国を

中国の影響下に置き、中国中心のグローバルガバナンスを目指すということであると推測できる。